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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る‼︎】14巻を振り返る【無印感想】

この記事の続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

第1話について

あらすじ

チョコが塾に行って死霊退治する話。

「魔界合格判定テスト」で散々な成績を取ってしまったチョコ。そんな時にメグに誘われ、セレブな子ども達が通う、「世麗舞学習会」という塾に行くことになる。初日の授業で質問に答えられなかったメグとチョコは、塾の先生から「右左規」という奇妙な定規を渡される。

翌日、5-1で抜き打ちテストが行われる。すると、勉強が苦手のはずのメグが100点を連発。さらに、麻倉&東海寺も一緒に勉強したり、かまめしの容器を欲しがるなど、妙な行動をする。その様子を見たチョコは、あることに思い至り……。

 

とにかくセレブな「世麗舞学習会」&勉強ができるようになったメグ

メグによって強引に(?)「世麗舞学習会」に連れて行かれるチョコ。塾名には、「世のなかを麗しく舞うように生きる人材を育てる塾」という意味が込められているらしいです。この強引な当て字は「暗御留燃阿」と同じセンスを感じる。「暗御留燃阿」の方が由緒正しいですけど。

チョコとメグは「一番セレブなクラス」に案内されます。進学塾のクラス分けは普通成績順になっているものですが、ここではそれが財力順になってるのが面白いです。このクラスには「綾小路」という名字の子や、「四井郵船の会長の孫」がいるみたいですが、「綾小路」は昔の公家だし、「四井郵船」は三井郵船のパロディ。小ネタが効いてます。

それにしても、そのレベルのお嬢様と同じクラスに入れるメグってとんでもないお金もちなのでは? メグママが昔テレビのレポーターだったということ以外、ご両親が何やってる方なのかとかわかってないと思うのですが(若おかとのコラボでおばあさん? は出てきたような気がしますが)、社長令嬢とかでもおかしくない感じですよね。

それで、怪しげなグッズをもらったメグが100点を連発するようになります。得意げにチョコを励ます姿かわいい。メグは無印1巻の第1話で 松岡先生に成績を馬鹿にされてキレちゃったり、今巻でもチョコが塾で答えを間違えた時に落ち込んでいたり、結構繊細なところがありますよね。立ち直りは驚異的に早いですけど。

 

チョコのピンチに駆けつける同級生組

塾の先生たちは実は死霊でした。黒死呪文を唱えてやっつけようとするも、ゴスロリを着ていなかったため、逆にピンチおちいるチョコ。そこに、ギュービッド+「モリカワ」に住むギュービッドの同級生4人が駆けつけます。上の世代ならではの頼りになる感が出てていいですね。こういうのもっと見たい。p95で、満面の笑みで峠先生の首根っこを押さえつける森川こわカワイイです。

先生たちがいなくなったことで世麗舞学習会も解散かと思われましたが、暗御留燃阿がそれに反対し、経営森川、先生役暗御留燃阿ということで継続することになります。チョコも通い続けることになり、新たな物語の舞台になるのかな? と思ったのですが、この巻の第3話ではあっさり塾をやめてます。

 

 

第2話について

あらすじ

隣のクラスの人が出てくる&委員会話。

チョコの家に、図書委員長の藤原遊馬先輩が訪ねてきて、ぜひとも新図書委員長になってくれないかと頼まれます。葉月星夜くんの悪魔払い(無印9巻参照)以来、チョコの正体に気づきかけている藤原先輩。チョコは疑惑を晴らすため&世麗舞学習会でもらった魔界グッズの効果を消すために奮闘しますが、うっかり黒魔法をかけている姿を先輩に見られてしまい……。

 

5-1以外の生徒も登場するように

これまで、人間界での事件はだいたい5−1のメンバーを中心に起こってきましたが、このお話ではとうとう他のクラス&学年の生徒が登場します。また、図書委員会の他、生徒会長選に向けた舞ちゃんと泡多田志井子のバトルなど、学校運営にかかわるところでのお話が増えてきます。ギュービッドが「学校でも、六年生にまかせてた仕事が、どーんとくるの」と言ってましたが、5年生3学期の、一気に最高学年っぽくなっていく感じがとてもリアルです。あと、このお話ではクモザル先輩が大活躍でしたが、第一小の先輩キャラの出番が多いのは、3学期編の大きな特徴ですね。

5-2生徒の第一弾としては、舞ちゃんのライバル、泡多田志井子(あわただしいこ)さんとその取り巻きの丹羽鈴(たんばりん)さんが登場しました。泡多田さんは慌ただしい性格で、丹羽さんはその日の出来事をタンバリンを鳴らしながら歌う子だそうです。こういう名は体を表す的な名前ふえたね〜。

それから、細かいところでいうと、この話ではじめて「忘却魔法」の詠唱シーンがあります。ちなみに初段魔法です。

 

仕事に勤しむ大人たち

印象的だったのは、森川や悪魔情の仕事人としての一面が描かれたことですね。特に森川は通常モードと仕事モードのギャップが激しめで意外でした。常に穏やかで心が広い森川ですが、商品の配達が遅れた悪魔情にはきびしく注意します。彼女は魔界時代に商売を学ぶため、屍のお店でアルバイトしたりしてましたが、仕事となると自分にも相手にも厳しくなるタイプみたいです。ちょっと桃花ちゃんに似てる感じ。チョコの「みんな、がんばってるんだよね。森川さんも、悪魔情さんも 、『仕事』のことでは、こわい顔になったり、半泣きになったりしてさ……」という心の声がいいですね。

 

 

第3話について

あらすじ

卒業式の「呼びかけ」の練習をする5-1。もちろんうまくいかず、生徒会長選挙を控え、有能リーダーっぷりをアピールしたい舞ちゃんはピリピリしています。2組との合同練習でも失敗してしまい、クラスには不穏な空気が漂います。そんな時、第1小のウサギ小屋に「魔唯ちゃん」という幽霊が出るという噂を耳にするチョコ。さらに、ギュービッドから「水仙の花が色褪せるまで」という魔界昔話を聞きます。そこに登場する死んだ娘を黒魔法で実体化し、「魔唯ちゃん」だということにして、なにかとしつこいオカルトクラブの二人を怖がらせてオカルト嫌いにさせようとするチョコたち。ところが、いざウサギ小屋にあらわれたのは、意外な人物で……。

 

めちゃくちゃな「呼びかけ」がおもしろい

このお話の一番好きなところは、何と言っても「呼びかけ」の練習シーンです! みんなセリフを間違えていくのですが、間違え方にそれぞれの個性が出ていて面白いです。特に、「ぼくたち」「わたしたちは」「みなさんが目標でした」というべきところを、東海寺、チョコ、里鳴ちゃんが「ドウマンドノ モ セイメイドノ モ」「わ、わたしたちも……」「お菓子、大好きぃ!」と間違えてしまったところで爆笑しました。東海寺のドウマンドノ云々・里鳴ちゃんのお菓子発言などは二人の鉄板ネタで、本来関連はないのですが、組み合わせるとちゃんと意味は通っているところが面白かったです。あと、地味にチョコもセリフを言い間違えているのがチョコらしくて好きです。このシーンは文章が面白すぎるので、リズムを壊さないためにあえて挿絵を入れなかったらしいです。*1

 

実は初期っぽい話だったかもしれない

このお話では、何としてでも生徒会長になりたい舞ちゃんと、それに振り回されて辟易している5−1の様子が描かれます。舞ちゃんの熱量とは裏腹にクラスの雰囲気がどんどん冷めていく様子がとってもリアルです。3学期編に入ってから黒魔女さんが本来持っていた「毒」みたいなのがすっかり姿を消したな〜と思っていたのですが、実はこういった形で現れていたのですね。

そして、そんなクラスの様子に心を痛めるこころちゃん。「うぬぼれ」「自己愛」という花言葉を持つ白い水仙の代わりに、「尊敬」という花言葉の黄色い水仙を飾ってクラスの雰囲気を良くしようとします。なんかこの、「祈り」みたいな行動、ものすごく石崎イズムを感じるんですけど。実はかなり初期(+他の石崎作品?)っぽいお話だったのかもしれません。

 

 

 

あとがきについて

暗御留燃阿へのインタビュー。やったね!

ブラックウィッチ学園の小学校受験に落ちてガリ勉になった話とか、ギュービッドへの思いとか結構盛りだくさんです。暗御留燃阿ヲタは必見。

平日に10時間勉強するという超ストイックな日々を送っていた学生時代の暗御留燃阿さん。生活監督官や高等女司祭、ギュービッドのいたずらの後処理などをやりながら受験生並みの勉強をこなすのはかなりきつそうです。暗御留燃阿のことだから、きっとプライドにものを言わせてやり遂げたんだと思います。どれかひとつでもおろそかにして「今年の生活監督官はダメだね」とか言われるのは耐えられなさそうですし、「頭が良くて超美人でみんなの憧れの暗御留燃阿先輩」という評判に傷がつくのを防ぐために、あらゆる意味で死に物狂いの努力をしていたんだと思います。表面にはその必死さは絶対に出さないでしょうけど。

だからギュービッドみたいな、勉強してないのに実力は高いわ、生活態度も悪いのに人望はあるわ……って子の存在は本当に不思議だったでしょうね〜。暗ギューは暗御留燃阿の憧れと嫉妬がぐちゃぐちゃに混ざった感情と、ギュービッドのまあまあ健全なライバル意識・友情とのギャップが肝なんですよ。石崎先生の書く本気の暗ギューが見たい。「世界の果ての魔女学校」なみのやつを切に希望しております。

 

暗ギューについて語った記事はこちら

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:『児童文芸』2014年4・5月号 座談会「三位一体のなせる業!」