黒魔女さんが通るブログ

黒魔女さんが通る‼︎ブログ

青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さん】ここへきて恋バトルに新メンバー参戦?『黒魔女さんと恋の魔法』【17巻感想】

この続き

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

第1話

あらすじ

切られてしまった6-1メンバーの赤い糸。責任を感じたチョコは、大形くんやおばあちゃんに相談し、解決法をさぐることに。一方、卒業前のお別れ遠足として十三参りに行くことになった6-1。いよいよ迎えた遠足当日、目的地のお寺の様子が普通ではないようで……?

 

6-1カップルたち&チョコの赤い糸

前巻、魔物によって赤い糸を切られてしまった6-1。翌日の教室では、カップルたちがなんとなくギクシャクしていました。

チャイム着席を呼びかける舞ちゃん。前巻までいい感じだったはずのエロエースは、「チャイム着席なんてもういいじゃん」と不満を漏らします。それを聞いて顔をひきしめ、まだ席についていなかった横綱を叱る舞ちゃん。

歯向かってきたエロエースに直接反論できずに、横綱にぶつけることで苛立ちを表現するのが舞ちゃんらしいです。エロエースも喧嘩するのがめんどうなのか、だれかに話すというよりはボソッと「もういいじゃん」とつぶやいている感じで、リアルです。最近6-1キャラの恋愛っぽいシーンがたくさん書かれてますが、この二人は言動の”らしさ”が細かくて、推されてるんだなぁと思います。

ショウくんは「みんな、好きだよ」発言が復活。しかし前巻ではバレンタインのチョコレート持ち込みに対して意見を主張したりして、八方美人は卒業したはず。赤い糸切断で様子が変わったのはカップルだけなので、これもその効果? ということは糸は百合ちゃんとつながってるんでしょうか。

みんなの赤い糸を復活させるべく作戦を立てるチョコや大形。お別れ遠足の際に、復縁効果のある魔界グッズを使った弁当を食べさせることにします。

遠足先は蓮台寺。しかし、実際の建物の名前は「連亜衣寺」。さらに住職が「大人になるための知恵」として恋にまつわる名言を教えてくれるなど、怪しい要素が満点。とりあえず、一人一人お気に入りの言葉を選んでいくみんな。

「恋は目ではなく心で見るもの(byシェイクスピア)」に感激する舞ちゃん。「出っ歯でも心が素敵な男子はいる」とエロエースをチラ見。ちょろい。言葉を見て「なにこれ? 『にんげんだもの』、みたいなやつ?」と反応するチョコさん、草です。

「広く好かれれば好かれるほど、深くは好かれないものだ(byスタンダール)」という言葉にショックを受けるショウくん。「そ、そんな」と、「うめくような」声を出します。彼も人間らしくなりましたね。さりげなく「最近のファンは百合ちゃんぐらいなもの」とあるのが衝撃です。舞ちゃんやメグが昔ほどショウくん大好きではないのはなんとなくわかるんですが、他の子達もなんですね……。

「恋して恋を失ったのは、まったく愛さないよりもましだ(byテニスン)」に感銘を受ける日向太陽くん。日向くんは同じ体育会系のさやかちゃんと最近いい感じでしたが、前巻さやかちゃんが「他校の好きな男子に振られた」といったことで、遠回しに失恋してました。

結局住職は魔界の人間だったことが発覚。住職のもとでアルバイトをしていた地下女・マーネスと交渉し、6-1が利用されそうになったのをすんでのところで阻止するチョコさん。マーネスは情緒不安定で悲劇のヒロイン意識がつよい、いわゆる「地雷女」。メイクも最近はやりの地雷メイクです。こういうの、今っぽいって思いますね。

 

大形のチョコへの気持ち

大形とチョコについては興味深い箇所がありました。

最近、大形くんに思いを寄せている様子だったチョコ。赤い糸が切れて落ち込んでいます。

実は糸が本当に大形と繋がっていたかはわからないまま。ですが「ショックを受けすぎて、話もできなかった」など、その反応は大形と結ばれていること前提です。さらに、大形が学校を休んでいるのを見て、赤い糸が切れたのがショックだったのかも……と想像します。

 まさか、大形くん、赤い糸が切れたことにショックをうけて、学校もお休み?

 でも、それって、あたしたち、すでにおつきあいしているってこと……。

 いやいやいや! それはないです! 

 修行をしている者どうし、なかよくしてるだけです!

 でも、『なかよく』っていうのも、おつきあいに入るかも……。

『黒魔女さんと恋の魔法』p28

うーん、口では「恋なんてわからない〜」とか言いつつ、無意識では大形が好きなのが見え見え。

そんなチョコを慰める大形。「おたがい黒魔女にとりつかれて修行で苦労してきた」「ぼくたちのあいだにはなによりも強い絆がある」「それは、赤い糸のように、かんたんに切られたりしない」と熱弁します。

ここ、印象的でした。

チョコは明らかに大形が好きですが、大形が恋愛的な意味でチョコを好きなのかは、正直わからないです。黒大形時代に「お妃が〜」とか言っていたのも、具体的に恋人や夫婦のような関係を結びたいというよりは、そばにいてほしいという子どもらしい気持ちを大形流に表現しただけのように思えます。

改心してからは、一応、チョコの外見を「かわいい」とか言うシーンなどがあります。ですがチョコに向ける気持ちを恋愛とその他(感謝や尊敬など)に分けたとき、その割合は恋愛以外のほうが大きいような気もするのです。

結局今巻を読んでも大形がチョコに恋しているか否かはわからなかったのですが、恋愛がどうのこうのというのに関わらず、いっしょに苦労してきたもの同士のかけがえのない絆がある、というのはグッときました。最近は恋がメインの話が多いですが、恋愛至上主義というわけではないように思えて嬉しかったです。

実際にほかのカップルと違い、赤い糸が切られた後も不仲になったりはせず、糸を復活させるために協力することができていた大形くんとチョコ。そういうのも良かったですね。

 

 

第2話

あらすじ

中学校生活に向けて親睦を深めるため、他校の図書委員と遊園地に行くことになったチョコ。そこには麻倉くんのライバル、一ッ橋組の大田龍河も参加していました。チョコを未来の姐さんにすべく、猛烈なアプローチを開始する大田。さらに遊園地にはあのふたりも待ち構えていて……?

他校の生徒登場

図書館少女隊の計らいで、他校の図書委員と遊園地に行くことになったチョコ。なんでも、中学進学後も図書委員長になれるように、今のうちから他校の子にマウントをとっておくべきだというのです。

ご存知のように、図書館少女隊のモデルはPerfume。今回もチョコたちが乗ったバスは「カシユカ」という会社のロケバスでした。こういうところ、毎度ながら小ネタがきいてます。多摩遊園地のパクリと思われる、「たまたま空いた日に行くのに最適なたまたま遊園地」も草です

そしていよいよ他校の生徒登場。幸小の仕切泰子さんは仕切りたがりやで、第二小の論寄正子さんはつねにエビデンスをもとめてくる女の子。論寄さんのエビデンス推しは今の時代っぽいですね。二人ともジェネリック舞ちゃんという感じです。

幸小の瀬形海くんは背が高い上から目線の子で、第二小の君田蓮くんは「君だれ?」と名前をきかれても答えが「きみだれん」になるため、質問をそのまま返したように聞こえてしまう、という子。第一小の後写留くんは背後霊のように人の後ろに写り込んでいることが多い子。なんというか、みんなインパクト重視ですね。

さらに第二小の大田龍河登場。彼は麻倉くんのライバルで一ッ橋組の組長の息子。『恋に落ちた黒魔女さん⁈』で登場するも、魔物に利用されており、その後の安否は不明でしたが、無事だったようです。

バスの中、4人掛けのボックス席に二人きりで座り、距離を縮めようとする大田。実は彼は1年前からチョコの噂を聞いており、未来の姐さんにしようと思ってるのだとか。ここにきて恋のバトルに新たな人物が参戦しました。

この話を読んで思ったのが、もしかして石崎先生&編集部は、『黒魔女さん』の中学生編をやるつもりなのか? ということです。

チョコたちはもう6年生の3月。小学校卒業でシリーズが終わるなら、あと2〜3巻で完結のはず。それなのに、恋愛バトルにあらたな登場人物を出したりして、話を〆るのではなく広げにいってるように見えます。卒業間際のこの段階で他校の新キャラが中心になる話が作られたのは、もしかしたら新章突入の準備なのかな、と思いました。

優柔不断なチョコ

強引な大田くんに不審感を持っていたものの、本が好きだとわかった途端、「5年生の時からずっと思ってたなんていわれたらじゃけんにはできない」などと言い出すチョコ。

さらに遊園地では麻倉&東海寺が登場。雛人形になりきる展示スペースで、お殿様の配役をめぐり喧嘩が勃発。結局、誰がチョコの相手にふさわしいかで勝負することになります。1話ではあんなに大形との赤い糸について思い悩んでいたチョコも、「とほほ…」みたいなテンションで流されるまま、ゲームに参加することに。男子たちはコーヒーカップに誰が一番長くのってられるか、ローラーコースターに何周のれるかなどで対決します。

陰陽道の修行でコーヒーカップに乗ってるから大丈夫だとか、メインスポンサーの息子として毎日乗ってるから慣れてるとか張り合う麻倉&東海寺。このバカバカしいやりとり、二人らしくて笑いました。

久々に彼らが活躍する姿を見れたのは嬉しかったです。最近、チョコから大形への思いが深く描かれるにつれて2人の存在感がどんどん薄くなっていってる気がしていて、ちゃんと告白したりフられるシーンすらなく恋バトルからフェードアウトしてしまうのか、とちょっと悲しかったので……。

三回勝負のうち二回を終えたところで大田くんがリード中。最後の決戦場所は観覧車。乗車前におやつを買っておいて、だれが一番チョコの食べたいものを理解していたかで勝負するそうです。

自分のために頑張る姿にくらっとくるチョコさん。さらにゴンドラは狭く、乗り込んだ途端、3人との距離の近さにとまどってしまいます。男子たちも同じようで、さっきまでの騒ぎが嘘のように無言に。そんな4人をよそにゴンドラは上がっていき、窓の外の風景も変わっていきます。ここの描写、気まずい、どきどきする気持ちが伝わってきて甘酸っぱいです。

やがて買ってきたおやつを見せ合う3人。東海寺は”避ける”チーズ、大田はマ”ヒ”ン、麻倉は”正論”ティー。もちろん魔界グッズです。

どこからか謎の声を聞くチョコ。いわく「観覧車の中で飲み物はデリカシーなさすぎ。トイレに行きたくなったら、どうするの?」だとか。黒魔女さんってこういう感覚ほんと細かいですよね。なんか友達との会話に出てきそうな”生”感のある意見です。

結局、東海寺の避けるチーズを大田のマヒンにはさみ、麻倉の正論ティーで流し込むチョコ。「3ついっしょなら、3倍以上おいしくなっちゃうんです! だから、3人にも、おたがいに、(略)なかよくしてほしいです!」と同点に持ち込もうとします。

この喧嘩両成敗的なオチは、麻倉&東海寺初登場の無印2巻3話を思い出させました。東海寺の霊能力は本物か否かを、麻倉のお屋敷の庭で公開検証したお話。多分私が勝手に重ねているだけなのですが、シリーズも終盤に近づいているであろう今になって、初期のオマージュともとれるシーンがでてくるとぐっときますね。

一件落着かと思ったその時、なにものかの黒魔法で固まってしまうみんな。じつは、ある魔物がチョコの魔力を奪って売ろうとたくらんでおり、辺りに潜んでいたのでした。

魔物に「狙われてるのに気づかなかったのは、麻倉・東海寺・大田の言葉に浮ついていたからだ」と指摘されるチョコ。「あんた、自分ってものがないんだよ。恋なんてしらなーい、なんて言ったかと思えば、あの人の言葉にぐっ、この人の言葉にぐっ」と、なかなか鋭い言葉でつっこまれます。

確かにここ数巻のチョコはギュービッドやティカにもからかわれるぐらい大形に心惹かれていて、あとはその気持ちに気づくだけみたいになっていました。むしろ、恋していないという方が無理があります。

前巻ラスト、赤い糸が切られる事態が起きたので、とうとう今巻は恋を自覚する展開になるのかと思っていたのですが、第2話ではほぼ初対面の大田にまでときめいたりして、恋愛的な進捗はあまりありませんでしたね。ラストシーンで大田くんが大形に敵意を燃やしていることが明らかになりましたが、それをうけて、何かしらの変化が起こるのでしょうか。

私としては、「大形くんにどきどきする……。だけどこれは恋じゃないんだから!」というような状態をもう7巻ぐらい続けているので、そろそろ次の展開が見たい気もします!

ここまで数巻かけて大形に対する心の揺れ動きを読んできたので、どこまでカップルっぽくなるかは置いておいても、チョコが恋心を自覚するところは読みたいですね〜。

 

 

おわりに

チョコの優柔不断さが第三者の目から語られた点といい、第2話で麻倉や東海寺がメインになった点といい、次巻の大田vs大形といい、「恋バトル決着に向けて色々仕込んでいるのかな?」感のあるお話でした。また、チョコの鈍感っぷりをなにかと心配するメグや、最近弟子と遊ぶ時間が取れていないのを心配するギュービッドも可愛かったです。

つうしんぼの「修行をはじめて2年近く」もしみじみしました。私は暗御留燃阿のオタクなので、シリーズ完結までに一度、彼女が書いた大形のつうしんぼも見てみたいです!

次巻も楽しみです!

 

次巻の感想はこちら

 

krmjsnfan.hatenablog.jp