これの続き。
第1話
あらすじ
巡回魔法使いのアグリッパに弟子の育成方法について指導されるギュービッドと桃花。ギュービッドは言葉に気をつけるように言われ、パンフレットと魔界グッズを買わされます。
翌日、来週に予定されている授業参観のために、保護者用の入校証を配られる6-1。 ところが麻倉は親に来てほしくないらしく、入校証の受け取りを拒否します。彼のお母さんは超天然なので、それが恥ずかしいのではないかと噂するみんな。講談組の若い衆に頼み込まれたチョコは、なんとか麻倉を説得しますが……。
今風のインストラクターになるギュービッド
黒魔女しつけ協会からやってきた巡回魔法使いのアグリッパさん。彼によると、今はきびしく弟子を鍛え上げるのではなく、逆に修行してくれる事に感謝の気持ちをもつべきなのだとか。無印1巻ではギュービッドがチョコと出会って早々拘束魔法をかけたりしていましたが、魔界もコンプライアンスを重んじる風潮になってきているのでしょうか。
アグリッパの言葉を受けて指導法を改めるギュービッド。しかし慣れないためか、前後の文脈を無視して「ありがとう」というなど、かえって不自然な行動になってしまいます。それを変だと思いつつも、「指摘を生かそうと一生懸命頑張ってるんだから」と、いつものツッコミを抑えるチョコ。師匠のギュービッドが不器用に頑張っていて、弟子のチョコがそれをちょっと大人な目線で見てるところに、この師弟の関係の一端が表れているなあと思いました。あとギュービッド様の久々の男装めっちゃかっこよかったのでもっと見たいです。
ねちねちとうるさいアグリッパですが、指摘はなかなか鋭いですよね。特に「責任感が強すぎるとかえって弟子の心が見えなくなる」という桃花ちゃんへアドバイスは超的確で、伊達にグラシュティグに仕えてるわけじゃないなと感じます。とはいえ弟子の大形はうっかりすると魔界を支配しかねないので、心を見るどころじゃなくなってしまうのも仕方がない気はしますが。初めての弟子なのにヘビーすぎるよ……。
個性豊かな親たち
第1話は無印6巻以来の授業参観回でした。無印では教育実習生の清井ほたるに振り回される5−1の様子が中心に描かれていましたが、今回の最重要人物は麻倉くんのママ、くるみさんです。
くるみさんは超天然で、東京ディズニーシーの「シー」をABCの「C」だと思い込んでいるほど。そんなお母さんだから、クラスみんなの前でチョコを息子の彼女扱いするのではないかと心配する麻倉。チョコに恥をかかせるわけにはいかないと、母親が授業参観に来るのを阻止しようとします。その行動自体はともかく、好きな子に恥ずかしい思いをさせたくないという気持ちは”漢”です。
結局、チョコの説得でくるみさんは授業参観に来れることに。ですが当日、想像以上の天然ぶりを披露してしまいます。たとえば、「体の一部を使った慣用句」についての授業で、「うでが落ちる、腹を割る、肩を落とす……」などの例を聞くと、「まあ、たのしい! まるで、死体をバラバラにしていくみたいだわ!」とまるでサイコパスのようなご発言。ある意味この作品らしいママですが、思春期の息子にとってはなかなか頭が痛いかも。
第2話
あらすじ
悪い魔物がうろついていないかパトロールする事になったチョコ。見知らぬ金髪のお姉さんが近所の男子たちに”プ”ライドポテトの優待券を配っているのを目撃します。翌々日学校に行くと、そこには『少年マガジン』のグラビアに見向きもしない横綱の姿が! それだけでなく麻倉や東海寺も全くアピールしてこないなど、男子たちの様子がおかしい事に気づくチョコ。さらに鈴木重くんが奇妙なポーズで奇妙な呪文を唱えているのを発見したチョコは、ある事に思い至り……。
男のプライド問題
新キャラ・幽ねぇにもらったプライドポテトを食べてプライドが高くなる横綱。いつもは気弱でエロい彼なのに、「少年マガジン」のグラビアをみせられても「だから、見ないっていってるだろ」と毅然とした態度で断ります。そのあとの間髪入れない「は?」という地の文ツッコミに笑いました。「横綱、悪魔に魂でもぬかれたのぉ?」という大谷君の叫びもあながち間違っていなくておもしろかったです。いつも本能のままに(?)行動している男子たちですが、プライドを気にしてちょっと大人びた行動をしているのが可愛かったです。でも横綱でさえああなっちゃうんだから、速水君とか与那国君とかもともとプライド高そうなキャラはどうなってしまうんでしょうね。
麻倉&東海寺は「いちいちアピールするなんて、プライドのある男のすることじゃない」と、いつものチョコへの猛アタックがひかえめでした。クラス運営的にはポテトを食べてもらっていた方が楽そう。
鈴木姉弟が掘り下げられる
そして今回は鈴木姉弟の掘り下げ回でもありました。ウンチク女王・鈴木薫さんと、そのウンチクを「姉ちゃん! すごい! メモメモ!」といつもメモする双子の弟・重くん。とても仲の良い二人ですが、プライドポテトで重くんのプライドが高くなったことで、少し気まずい関係になってしまいます。ある日、薫さんのウンチクを聞いて、「そんなふうに、えらそうにいわなくても、いいじゃないか。おれたちは双子で、おなじ六年なんだ」と傷ついたような顔をする重くん。薫さんとしてはもちろん弟をバカにするつもりはなく、普段どおりの行動だったのですが……。
結局、チョコたちが幽ねぇを退治することで一件落着したのですが、幼少期は仲がよかったきょうだいが思春期に入ってすれ違いはじめるのが切なリアルでした。このくらいの時期って、上のきょうだいとしてはかわいい弟・妹のままでも、下のきょうだいとしては子ども扱いせず対等に接して欲しいみたいな気持ちがあったりしますよね。特に双子だと「そもそも俺、年下ですらないのになんで弟あつかいされてるんだろ?」と思ったり。わたしも双子なのでこの二人が掘り下げられたのは嬉しかったです。
第3話
あらすじ
宮瀬灯子ちゃんの弟と妹が通ういちご保育園。そこの先生が結婚するらしく、しかも式を保育園であげるらしい。その際にベールガールをやってくれないかと頼まれるチョコ。結婚式と同じ日に魔界喫茶ハンプティダンプティでロリポップココアの新作お菓子の発表会があるらしく、桃花ちゃんは一緒に行けないのを残念がります。
2日後、結婚式は無事に終わります。ところが数日後、灯子ちゃんから奇妙な話を聞くチョコ。なんでも、温厚な性格だった新郎が、結婚式以降怒りっぽくなり、不平不満ばかり言うようになったそうです。結婚式に原因があったのではないかと考えたチョコは、いそいで保育園に向かいますが……。
オカルト結婚式
今巻は6月という設定。そのせいか、第3話はジューンブライドというロマンチックなモチーフがでてくるお話でした。
灯子ちゃんの弟妹の先生の結婚式でベールガールを務めるチョコ。バラが並べられた窓、まっ白な布が敷かれたバージンロード、祭壇など、結婚式用に飾り立てられた園内の描写が非常にラブリーです。その様子にテンションが上がってウキウキで結婚式知識を披露する灯子ちゃんも乙女で可愛かったです。
新婦の先生曰く、バージンロードの白い布は教会の下に棲んでいる悪魔から花嫁を守る役割があるのだとか。こういうところにオカルトネタを仕込んでくるの、やっぱり黒魔女さんだなって感じですね。その話を聞いたあとにどこからともなく「呪ってやる」という声が聞こえてくるのも不気味で好きです。
マカズキン作家デビュー
桃花ちゃんの魔女学校時代のルームメイト、マカズキンが作家デビューしました!魔女学校を卒業して一年しか経っていないのにすごい。学生時代からプロの作家さんに小説を見てもらったり、努力していたのが報われましたね(『魔女学校物語』、みんな読んでね)! 外伝好きなので、そこで活躍していたキャラが本編に登場するのは嬉しいです。
デビュー作は『たなばったーんと呪運ブライド』。6月に結婚した「折り姫」と「疲子星」を主人公にした悲恋の物語です。幸せな生活を送っていた「折り姫」と「疲子星」夫妻。あるとき疲子星がつくった棚が「ばったーん」と倒れてきて、下敷きになった彼は大怪我をしてしまいます。それがベルゼブル様の怒りを買い、二人は引き離されてしまいました。それ以来、「折り姫」は幸せそうな花嫁を呪う「呪運ブライド」になったのでした……というお話。「呪運ブライド」自身は新婚の先生たちを呪ったりするシリアスなキャラですが、それともとのお話のギャグっぽさとの差がシュールで面白いです。そして6月と7月のイベントを一つのお話に詰め込もうとする姿勢はいかにも魔界の人っぽくていいですね。
全体を通して
麻倉や鈴木姉弟など、既存のキャラをさらに深く掘り下げるお話が多かったです。無印3学期編は新キャラも多く世界観をひろげる感じでしたが、六年生編になってからは深める方向に行ってるのかなと思います。
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