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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さんが通る】『黒魔女さんの修学旅行』を振り返る【感想】

この続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

あらすじ

今巻は「白雪姫」をベースに物語が進んでいきます!

修学旅行に向かうバスの中でうっかり呪文を唱え、魔界へ来てしまったチョコ。しかもたどり着いたのは黒魔女さん2級認定テストの会場、セゴビア城! 自分が進級できなければギュービッドがインストラクターをクビになってしまうことを知ったチョコは、ロリポップココアの魔力増強お菓子を食べてテストに備える。ところがそれが城の主、理夫人の怒りを買ってしまい、殺されそうになるチョコ。しかしお城の番人が矢を放とうとしたまさにその瞬間、大形くんが現れ、チョコを助けてくれる。森に逃げ込んだチョコを待ち受けていたものとは……

 

ギュービッドとチョコ

今巻はギュービッドとチョコの師弟愛が『黒魔女さんのハロウィーン』並に丁寧に描かれたと思います。ある意味初期っぽいような。

一番衝撃だったのは、チョコがギュービッドに「あたしが修行をやめると同時にギュービッド様が魔界を追放されれば、二人はずっと一緒にいられる」と言ったことですね。自分が二級試験に合格できるか、ギュービッドがインストラクター免許試験を突破できるか不安なチョコ。もしどちらかが失敗した場合は、師弟関係が解消になってしまいます。そんなとき思い出したのは祖母・ティカの過去。ティカは魔界を追放されることで、人間の恋人・伊蔵と人生を共にすることができました。ギュービッドが魔界追放になれば、たとえ試験が不合格でも、祖母たちのようにいっしょにいつづけることができると考えたわけです。

わりと冷静な状態でこの発言をするから一層、チョコさんにとってのギュービッドの存在の重さというのがずしりと感じられました。物語冒頭で大形に試験に落ちたら師弟関係解消だと伝えられた時も、「そりゃあね、あたしの目標は、一日も早く黒魔女修行をおえて、ふつうの女の子にもどるだったよ。(略)でも、いいの! それより、ギュービッドといっしょにいることのほうが、ずっと、ずっと、ずっと、だいじなことなんだよ!」と言ってます。無印1巻では「この黒魔女、早く魔界に帰ってくれないかな」みたいな発言がなんどもありましたけど、いまはそれよりも、黒魔女として魔力を高めることよりも、「ギュービッドといっしょにいる」ことがチョコさんの最大の望みなんだなぁ……。

それを聞いたギュービッドは、「あたしはお前をそんな意気地なしに育てた覚えはない」とさとし、必ず二級にうかれと激励します。今まで幾度もいっしょにピンチを乗り越え、チョコの言葉が心からのものであることはわかっているはずのギュービッド。その思いを受け止めた上で、師匠として弟子を導こうとする姿、最強にかっこよかったです。もしかしたら師弟関係が終わってしまうかもしれない状況で美しい師弟愛を見せられるとグッときますね。

やっぱり、『黒魔女さんが通る‼︎』の根幹にあるのは、黒鳥千代子とギュービッドの絆なんですよねぇ。この二人の関係なくして『黒魔女さん』はありえないんですわ。

 

 

 

大形くんついに本気出す

5巻3話以降、長らく停滞気味だった印象のある大形問題。一応、12巻や16巻でぬいぐるみを外したりしてるんですが、毎回チョコたちがぬいぐるみをかぶせて一件落着☆みたいなオチで、あんまり大きな進展はなかったのかな〜と感じます。

ですが今巻はまさかのぬいぐるみ再装着なし。燃やしちゃったし。初めてこのラストシーン読んだ時は相当テンション上がりました。

今回の大形の何が素晴らしいって、読者をも裏切ってきたことですね。彼は最初、殺されそうになったチョコを助けにきます。そこで、ギュービッドがインストラクター免許取得の試験を受けること、それに落ちたらインストラクター黒魔女を失格になること、チョコはしばらく身を隠していたほうがいいことを伝えます。

このシーンで大形くんは理夫人の部下の攻撃から身を挺してチョコを守り(イラストも最高)、なぜそこまでしてくれるのか尋ねられると「仲間だねぇ。放っておけないねぇ」「守ってあげたいねぇ」と答えます。大形の口から出た「仲間」「守ってあげたい」という言葉や、チョコを守る姿に心を動かされた読者は私だけではなかったはずです。この二人は作中でカップリング的な描かれ方をすることも多いのでなおさらです。

その後も王子様姿でエレガントにチョコをエスコートしたり、励ましたりしてかっこよさを全開にする大形くん。しかし、その裏には別の計画がありました。実は、セゴビア城を受験会場に指定したのも、理夫人がチョコを殺すように仕向けたのも、「いくじ梨」を食べたチョコを試験中のギュービッドが助けたのも、すべて大形くんが仕組んだ計画。そのようにして、ピンチに陥ったチョコを白雪姫の王子様よろしく助け、試験時間が足りなくなったギュービッドが免許取得に失敗してインストラクターを外されることこそが、彼の望みだったのです。

大形くんはこれまでなんどもぬいぐるみを外しては魔界征服をたくらんできましたが、今回の計画は今までのなかでもピカイチに面白かったです。なぜなら、今まで読んできた物語全体が大形の計画通りに進んでいたことになるからです。チョコを助けたりする姿を見て「大形くん王子様みたいでかっこいい♡」と思う読者も、彼の掌の上で転がされていただけにすぎなかったとも言えます。本当に天才だと思う。今巻の大形くんは今までで一番悪役っぽかったです。ちゃんと悪役してくれる悪役、本当に素晴らしい。

それにしても、毎回思うんですけど、魔界全体を巻き込むレベルの魔法を使える大形くんを、人間界の一角に住まわせておいて大丈夫なんでしょうか。あの近辺に住む全黒魔女の魔力を合わせても多分彼にはかなわないでしょ。

 

 

全体を通して

初期厨のやったぜですが、『黒魔女さんの修学旅行』は本編と外伝合わせてもかなり好きな部類に入る巻です! 無印三学期編以降は物語上の大きな目標のようなもの(無印7巻までのギューチョコ掘り下げ、8〜10巻のティカ問題など)がなく、作品の雰囲気ものほほんとしていた印象があったのですが、この巻で大形問題の解決を目標に据えたことで、文章やチョコたちのキャラもキレを取り戻していっている気がします。

 

 

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