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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る】『魔女学校物語』3巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

第1話 

あらすじ

濡烏先生の尽力により49年ぶりに遠足に行けることになった王立魔女学校の生徒たち。桃花たちフォカロルの三人は、目的地の「魔の山」についてまとめた遠足のしおりを作ります。

遠足当日、行きの馬車の中で濡烏先生に手作りのお菓子をご馳走になる三人。いつもとちがってやさしい先生ですが、馬車を出ると鬼教師にはや戻り。桃花たちは、「いったいどちらが本当の姿なのだろう」と不思議に思います。

黒魔法の使用が禁じられている「魔の山」ですが、ハイキング中にうっかり生徒の一人が呪文を唱えてしまいます。それをきっかけに、眠っていた山の魔力が目を覚ましてしまい……。

 

濡烏先生掘り下げ回

濡烏先生かわいい

生徒指導担当の濡烏先生。とても厳しく、生徒たちから恐れられている先生ですが、第1話ではかわいい一面が明らかになります。

「魔の山」に向かう馬車の中で、桃花たちが作ったしおりを熱心に読む先生。同乗していたジェニファー先生にまでオススメし、伝説の「アマ・ルーラの像」を見つけたら世紀の大発見になりますよ、などどはしゃぎます。普段鬼教師として怒鳴り散らす先生をみなれているので、同僚と楽しそうに話す姿はそれだけで新鮮です。

さらに、授業中の私語の罰としておやつ禁止令が出されていた桃花たちに、手作りのお菓子を披露してくれる濡烏先生。ジェニファー先生に「ムーミン」に出てくるレシピだとバラされてはずかしそうにしているのが可愛かったです。ティアーの「ますます、先生には似合わなくってよ!」という天然失礼発言にも言い返せず、うつむいて赤面してるのギャップ萌えです。

濡烏先生のお菓子を食べて「お口がこんなに幸福でいっぱいになったのは生まれてはじめて」と喜ぶ褒め上手なティアー。「そうか。幸福な気分になれるか。そうだろうな」という返答が心底嬉しそうでいいです。言葉遣いなどは普段と同じなのも先生らしくて好き。

さらに濡烏先生の中学時代の担任、コウナルト・ザ・ピンチ先生も登場。ザ・ピンチ先生の発言からすると、濡烏の年齢は30代後半ぐらいみたいですね。

 

濡烏先生かっこいい

しかし、明らかになったのは可愛い面だけではありません。生徒想いでかっこいい面もフィーチャーされます。

黒魔法の使用が禁止されている魔の山。呪文を唱えると、「アマ・ルーラの洞窟」の魔力が復活し、洞窟に迷い込んだ人を閉じ込めて死なせてしまうという言い伝えがあります。事前に注意を受けていた桃花たちですが、テスがうっかり乾燥魔法を使ってしまい、フランカが洞窟に吸い込まれてしまいます。

あえて先生に知らせず、自分だけでフランカを助けたいと言う桃花。わざとアマ・ルーラの洞窟に閉じ込められます。ところがそこに濡烏先生も出現! 事態を報告せず、生徒だけで解決しようとしたことをしかられます。洞窟内にこだまする怒鳴り声。さすが濡烏先生、どんなときでも威厳にあふれています。

しかし、生徒が違反を隠し、重大問題につながってしまったのは、自身の怖さにも原因があると語る先生。生徒が素直に謝れるようにするのも教師の仕事だ、自分もまだ修行が足りないと反省の弁を述べます。目下の人の前で自分の非を認めるのは簡単なことではないはず。ですが、下手なプライドにこだわるよりむしろかっこいいです。

濡烏先生が唱えた「山の魔女の飛行呪文」によって無事洞窟から脱出する桃花たち。「サシ・グスティエン・ガイネティク・エタオデイ・グスティエン・アズピティク」という古代語で、「野いちごと雲のあいだだけは、なにがあろうと、われを自由に飛ばせたまえ」という意味です。厨二心をくすぐられますね。

 

 

第2話

あらすじ

2学期が始まったばかりの魔女学校。夏休みボケがぬけない生徒たちのために、メリュジーヌ先生は「部屋対抗・創作黒魔法大会」を開催します。オリジナル黒魔法の製作に熱を入れる桃花たち。なかでもマカズキンはのめりこみすぎて、他の授業がおろそかになってしまいます。

それだけではなく、桃花やティアーの大会に対する姿勢にも文句をつけ始めるマカズキン。ついには「魔女学校をやめる」とまで言い出します。仲の良い三人組に戻るため、けんめいに創作黒魔法を考える桃花たちですが……。

 

桃花&ティアー、マカズキンと喧嘩する

小説家志望で、常にネタ集めや取材(ゲテモノ料理作りなど)を怠らないマカズキン。研究熱心でのめり込むタイプですが、今回はその熱心さが事件を引き起こしてしまいます。

カイムに「未来の手紙」を出して創作黒魔法のヒントにしようとする桃花とティアー。その態度が悠長すぎるように見えたマカズキンは激怒。ついには学校を辞めるとまで言い出します。

普段は発想力があって面白いマカズキンですが、今回は桃花たちを悪い意味で振り回します。他の部屋の子たちが埋めた「けんかの種」を勝手に掘り起こしてみたり、自分が原因で「最低の部屋」になったのにルームメイトに逆ギレしてみたり……。かなりめんどくさいですが、そうなってしまった背景には、「小説家になる」という夢の存在がありました。

ひそかに魔界の作家に自作を送り、アドバイスをもらっていたマカズキン。本人曰く”偶然”アドバイスを見てしまったティアーによると、「もっとオリジナルな作品を書くべきだ」「いまのままでは、ただのダジャレといわれても、しかたない」と書いてあったそうです。普通に読んでもグサグサきますが、石崎先生からの言葉だと思って読むとさらに重いですね。手紙の覗き見に驚異的な能力を発揮するティアーに癒されました。

創作黒魔法にもオリジナリティを求めるあまり、周りが見えなくなってしまったのではないかと推測する桃花たち。マカズキンの夢に対する本気度はすごいです。その甲斐あって本編6年生編ではみごとデビューしてました。 

 

創作黒魔法大会

大会本番、さまざまな創作黒魔法を披露する生徒たち。「ハアゲンティ」のメンバーがつくった「死異流」は、憎い人のおでこに貼って「このうらみ、地獄へ流します。いっぺん、死んでみる?」と唱えると相手が消えるシール。無印から恒例の地獄少女ネタです。世代なので嬉しいです。

桃花とティアーは二人で参加。彼女たちが作ったのは「意図電話」。一見ただの糸電話ですが、紙コップに向かってマカズキンへの思いを述べると、その「意図」が伝わりマカズキンが登場! 駆け寄る二人。p143の抱き合う三人のイラストが良いです。

しかし優勝は「ベリアル」の「けんかの種」と「魔種」でした。実は、マカズキンがやたら攻撃的だったのは「けんかの種」を掘り返したため。この種はもっているとイライラするという効果があるのです。黒魔女をもコントロールするとは、ベリアルの三人は将来有望です。

 

 

第3話

あらすじ

ユールサバト間近の魔女学校。桃花たち二年生は、「出前授業」に誰が来るのかで大騒ぎ。「出前授業」とは、魔界の社会人を招いて行われる特別講義のこと。ティアーは「魔ティシエ」のロリポップ・ココアに来て欲しいと思っています。

出前授業当日、あらわれたのは「魔ティシエ」のフィリピーネ。超一流店「メーデル」を開く彼女の登場にみんな大興奮ですが、なぜかティアーだけは浮かない顔をしています。理由を尋ねると、とんでもないことが明らかになって……。

 

ティアーの知られざる過去

第3話では超絶お嬢様のルームメイト・ティアーの過去が明らかになります!

出前授業に現れた美人魔ティシエ・フィリピーネ。実は彼女はティアーの兄・カールの妻。ですが王族ではありません。フィリピーネは平民なので、結婚にあたり、カールが爵位を捨てたのです。

5年前、自作のケーキを持ってカールの元にやってきたフィリピーネ。やがて二人は恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚しました。ティアーは兄がフィリピーネの店の広告塔として利用されたと思い込んでいるため、彼女のことが好きではありません。さらに授業の合間に、カールが見習い魔ティシエとしてバラの花びらをちぎっているのを見て激昂し、部屋に帰ってしまいます。

結婚当時中学生の彼女にとって、12歳も年上でかっこいいカールは憧れの存在。フィリピーネが兄を騙したとか、貴族の身分を捨てるなんてとか色々言ってますが、大好きな人が自分の元を去っていくのが寂しかったというのが本音だろうと思います。そのうえ久しぶりに会った兄が、自分からしたら下働きがやるような仕事をさせられているのを見て軽んじられていると感じ、それをおとなしく受け入れている兄自身にも裏切られたと思ったのかもしれません。

 

カールの言葉がグッとくる

兄妹を和解させるため、カールに話しかけに行く桃花。あいにく次の授業の準備中でしたが、笑顔で丁寧に対応してくれるあたりさすが元貴族だと感じます。

魔ティシエの仕事で最も大事なのは「同じケーキを作り続けること」だと言うカール。自分にとってはたくさん作るケーキのうちの一つでも、お客さんにとってはただ一つのケーキだから決して気を抜けないのだと語ります。「一見、つまらなそうな、同じことのくりかえしでも、こつこつとつづけていれば、わたしも、わたしの仕事も、だれかにとってのオンリー・ワン、そしてスペシャル・ワンになれるかもしれない」という言葉が沁みました。いずれ国王になったかもしれないカール。「オンリー・ワン」なんて目指す必要すらなさそうですが、自分の努力の成果が、誰かの「オンリー・ワン」になれることを実感したかったのかもしれません。

ティアーの怒りを解いたのは桃花たちが作ったカラメルソース付き焼きプリン、そしてカールが花びらをちぎって作った「バラ水」でした。「バラ水作りは下働きではない」と妹に伝言して欲しいと頼んでいましたが、結果的に自身の仕事でそれを示したのがかっこいいです!

 

 

全体を通して 

サブタイが「友だちのひみつ」というだけあって、マカズキンやティアーについて深く知れる巻でした。第1話では濡烏先生が掘り下げられましたが、「おなじみのあのキャラの 意外な一面が明らかに!」ということが全話共通していたと思います。

この巻が発売されたのが2016年。もう4年近く続きが出ていないですが、あとがきによるとこれで完結ではなく、今後私立ブラックウィッチ学園のことなども書かれる予定みたいです。現在(2020年3月)本編で大形問題が絶賛進行中なので、続編が出るのははやくてもそれがひと段落してからだと思います。気長に待ちましょう。