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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さん10巻】感想&大形京関連考察

 *この記事はこれ↓の続きではなく、最新刊『恋に落ちた黒魔女さん?』を読んで再び考察し直したものです。

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

あらすじ

第1話

魔界からいい人になって戻ってきた大形くんと一緒に登校し、なぜかドキドキするチョコ。水辺の公園に写生大会に出かけたとき、魔界グッズ「魔法鏡メガネ」をかけていたチョコは、人魚のような姿の女性を発見します。

翌日、合唱コンクールの指揮者に選ばれてしまったチョコ。最初はまとまりがなかった6−1ですが、次第に練習にも真面目に取り組むようになり、歌も見違えるほど上手くなります。ところが、合唱コンクール当日、思いもよらぬ出来事が……

 

第2話

一級黒魔女になるために「魔法石」について学ぶチョコ。魔法石とは、魔力が秘められた石のこと。太陽の石や月の石など7種類あり、黒魔女にはそれぞれ生まれた星座ごとに魔界誕生石があります。チョコの魔界誕生石は土星の石。人間界での名は「黒い黒曜石」で、まわりに不幸をもたらすという特徴があります。

魔法石に秘められた魔力は強大ですが、石単体では効果を発揮しません。その魔力をひきだすには、『魔王の王冠』という別の石が必要です。ところが、『魔王の王冠』は魔界に一つしかない上に、何百年もまえにぬすまれたきりです。

学校行事の美術館見学の最中、魔界の住人に『魔王の王冠』の持ち主だと思われて絡まれるチョコ。しかも大形に「黒鳥さん自身が黒曜石なんだ。生まれつき土星の魔法石の魔力を秘めているんだよ」と衝撃的なことを告げられます。さらに、なぜか大形が『魔王の王冠』を持っていて……。

 

 

大形京関連の考察

大形京太郎の正体&大形の行動の目的

考察1:大形たちの行動の目的は、魔界の弱体化である

考察2:京太郎は、誰かから反魔界の意思を引き継いだ人物である

前巻まで大形くんは亡き祖父・京太郎のもとにいました。なので今巻の彼の行動は、祖父の影響を受けたものだと考えられます。

なぜか『魔王の王冠』を持っていた大形くん。『魔王の王冠』があれば、魔法石の強力な魔力を意のままに扱うことができます。今巻ラスト、大形くんはチョコをつれてどこかに行こうとしていました。このことから、大形(たち)はチョコの力が何かしらの理由で必要なのではないかと考えました。

ではそのチョコの力とは何か。大形の「黒鳥さん自身が黒曜石なんだ。生まれつき土星の魔法石の魔力を秘めているんだよ」というセリフからすると、それは「まわりに不幸をもたらす」力です。

前述したように、魔法石の力はとても強力です。現にギュービッドはこのように言っています。

「魔法石に秘められた魔力は強大なんだ。正しい使いかたを知ってさえいれば、おまえみたいな低級黒魔女でも、7段黒魔女を呪えるほどさ。それどころか、魔法石の組み合わせ次第では、半径十キロメートル以内の黒魔女全員に呪いをかけることもできるんだぜ」『6年1組黒魔女さんが通る⑩』p103

ただでさえ不幸の発生源だと言われているチョコ。「魔王の王冠」で黒曜石の力を十分に引き出すことができたら、その呪いは”半径十キロメートル以内”にとどまらないでしょう。実際、この発言を受けてチョコは「『魔王の王冠』があれば、魔法石のすごい魔力を使い放題なんでしょ。それこそ、魔界を支配することだってできそうだし」と意味深な発言をしています。

彼らが欲しているのは、黒魔女を呪い、不幸にする力とも言えそうです。言い換えれば魔界に何らかの大ダメージを与えることができる力。

そしてそのような力を欲している京太郎は、おそらく反魔界的な意思を持っている人物だと思います。今巻のギュービッドの発言のとおり、黒魔女というのは基本的に人を苦しめ呪うことをよしとします。また、大形のように、無理やり黒魔女にされ、使い捨てられる人間の子供もいます。それに反発する勢力が魔界の内部に一定数いてもおかしくないと思います。

ただし、彼自身は魔界出身ではないと考えられます。なぜなら、『黒魔女さんの夏休み』にて「魔界とやら」と言っているからです。彼が魔界の人物なら、この表現は不自然です。だから、最初に反魔界活動をしていた人物の関係者ではあるものの、彼自身は魔界との関わりは薄いのではないかと推測しました。

最初の反魔界活動はもっとずっと前に始まったのかもしれません。数百年前『魔王の王冠』を盗んだのも彼らで、魔法石の力を使った作戦も当時からあったのだろうと思います。しかし、彼らは少数派でしょうから、次第に魔界では活動しづらくなり、人間界に拠点がうつった。そしてその意思を継ぐものの間で、黒魔女しつけ協会から持ち出された『魔王の王冠』が継承されてきたのではないかと考えました。*1

そして『黒魔女さんの夏休み』以降、復活した京太郎はそのことを孫に伝え、今巻の大形はその意思に基づいて行動しているのではないかと。彼にも魔界を弱体化させたくなるだけの動機は十分ありますから。

 

次巻起こりそうなこと 

次巻予想1:黒曜石そのものであるチョコと『魔王の王冠』を持つ大形くんが協力した結果、魔界にとんでもない災難が降りかかる。そのことによって、ギュービッドがピンチに陥る。

次巻予想2:チョコはギュービッドの側について魔界を救うか、大形たちとともに魔界と戦うかを迫られる。最終的にはギュービッドをとり、大形と別れる。 

 

「魔ぜるな危険」という言葉もあるように、黒曜石と『魔王の王冠』の出会いは魔界にとって絶対に避けたい事態であるのは間違いありません。

今巻、「人間を不幸に巻き込むのは黒魔女として大切な仕事だ」というギュービッドの発言を聞いたチョコが、「<黒魔女さんとは何か>を突きつけられるとけっこう落ち込む」と思うシーンがありました。黒魔女の精神に染まりきれない彼女が、反魔界の考えに親しみを持ち、同じ人間出身である大形と、魔界出身のギュービッドの間で揺れる展開は十分想像できます。

また、数ヶ月前に公式ホームページで石崎先生が「次の長編では『悲しい別れ』がある」というようなことをおしゃっていました。物語の都合上、最終巻前にギューチョコが別れるとは考えづらいので、ここは大形との別れなのではないかと思いました。

 

 

全体的な感想

神巻でした。

読み終わった時、比喩ではなく実際に手が震えました。黒魔女さんらしい繊細な心理描写と毒の効いた展開。主人公が生まれつき周りに不幸をもたらす力があるとか攻めまくり。でもこの攻めがまさに黒魔女さんですよね。

そして最後のページのこの一文。

鈍足だから、ひきずられているように見えたかもしれないけれど、でも、まちがいなく、あたしは自分の力で走っていた。『6年1組黒魔女さんが通る⑩』p181

 ここめっちゃ石崎イズム(←?)感じません? 石崎先生の書くこういう文章大好きです。

15年間続いてきた大形問題ですが、次巻で一つの区切りがつくのだと思います。10年以上ハラハラしながらこの一件を追ってきました。ラストスパートどうなるのか、本当に楽しみです!

 

 

 前巻の感想はこちら

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 次巻(最新刊)の感想はこちらの2つ

krmjsnfan.hatenablog.jp 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

 

*1:京太郎と東海寺迦楼羅が知り合いかのような描写があったことを考えると、その間、陰陽道などの他の魔術的なものとの交流があってもおかしくないと思います。