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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さん】大形問題解決巻かと思ったらチョコの自分探し巻だった『黒魔女さんと死霊の宮殿』【13巻感想】

これの続き。書いている人は暗御留燃阿オタ。

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

あらすじ

第1話

卒業までに進化した小学生になるべく、世界遺産をまなぶ遠足に行くことになった6-1。ところが実際に目にしたのは、「白”紙”山地」や「”バンビ”の長城」など、どこかおかしいものばかり。さらにはチョコの「明るく、フレンドリー」なそっくりさんまで現れて……。

第2話

大形くんの記憶を取り戻すべく、死者の世界に向かったチョコ・ギュービッド・桃花・大形・暗御留燃阿。道中で出会った予言者の言葉に従い、記憶を拾っては売っているという「記憶屋」のもとを訪れる。大形の記憶を返してもらおうとするチョコだったが、そうすんなりといくわけはなく……。

 

感想

前巻、大形自身が幼少期の出来事を思い出すのを拒否しているために記憶が戻らないということ、しかしチョコとの新しい思い出を作ることでその気持ちが変わるかもしれない、ということが判明しました。

ここから私は、今巻では

①大形と、彼の不幸の元凶である暗御留燃阿が過去に向き合い、因縁を解消するまでの過程

②大形自身が辛い記憶を含めて「思い出す」という決断をするまでの心の動き

が描かれると思っていました。そういう人の感想なんだと思って読んでください。

 

大形問題解決巻かと思ったらチョコの自分探し巻だった

今巻ラスト、チョコの活躍によって大形の祖父・京太郎が姿を現しました。そして暗御留燃阿を孫のインストラクターに再任してほしい旨を告げ、大形の記憶を取り戻すための呪文とおもわれるものを唱えました。そこに至るまでの過程は以下のとおりです。

死者の世界で、記憶をあつめて売っているという「記憶屋」のジョニーの元をおとずれたチョコたち。彼の罠にかかったチョコと大形は、「五重塔」ならぬ「魔獣の塔」に閉じ込められ、魔獣「魔ねきねこ」におそわれます。

絶体絶命のそのとき、道中で会った予言者に、「まんじゅうの塔に住む魔ねきねこが、ダサい石器を手にするとき、そこに、万妖集があるだろう」と言われたことを思い出すチョコ。さらに、自分の魔界誕生石・黒曜石が縄文時代は打製石器の材料として使われていたこと、世界遺産を学ぶ遠足で、エロエースが打製石器を「ダセー石器」と言っていたことも思い出します。

これらのことから、予言の「ダサい石器」とは黒曜石の黒魔女である自分のことだとひらめくチョコ。魔ねきねこに突進するとみごと「万妖集」があらわれ、そこに書いてあった呪文を唱えると、京太郎を復活させることができたのでした。

「恋に落ちた黒魔女さん⁉︎」から伏線が張られてきた「チョコが黒曜石の黒魔女である」というなぞの一部が回収されたのはとてもどきどきしました。また、魔ねきねこに突進するときの「あたしはオブシディアン。あたしはダサい石器。」という一文もアツかったです。この記事にも書きましたが、私は『黒魔女さんが通る!!』という作品の1番の魅力はチョコに主人公属性がないことだと思っているので、あらためて彼女が自身を「ダサい石器」と言ってくれたのが嬉しかったです!

だけど正直今巻に期待していたのはこういう展開じゃなかったんだよなぁ……

前述したように、大形の記憶が戻らないのは幼少期の暗御留燃阿との出来事を思い出したくないせい。死者の世界への旅も、チョコとの思い出作りを通じて記憶を取り戻すことに前向きになってもらうためです。

だから、今巻は大形が過去を思い出そうという気持ちになるまでの葛藤や、その過程でおこるであろう暗御留燃阿との対話、チョコへの思いの深化等に期待していました。大形自身の心情の変化が結構詳しく書かれるのかなぁなんて思ってたのです。

ですが、実際は大形が記憶を取り戻すことについてどう思っているのかもはっきり書かれないうちに、チョコが黒曜石の黒魔女としての能力に目覚め、京太郎を呼び戻してしまいました。暗御留燃阿の件に関しては二人の会話シーンすらナシ。

もともと、大形に思い出を取り返したいと思わせることが旅の目的だったはずなのに、京太郎の復活・暗御留燃阿のインストラクター再任と彼自身の気持ちに何の関係もなく、チョコが黒曜石の黒魔女として活躍したから記憶を取り戻す流れになっているように思えて、すこし違和感を感じました。

第1話では明るくフレンドリーなそっくりさんに対し、本当の自分はネクラなオカルト大好き少女なのに……と思うチョコの様子が描かれていました。また、最終的に黒曜石=ダサい石器であったことや、「へちゃむくれで、(略)鈍足で、黒曜石の黒魔女、黒鳥千代子。大形くんのために、はしります!」などという地の文があったことも考えると、今巻は大形の気持ち云々というより、チョコがネクラでオカルトオタクな「本当の自分」的ななにかをみつける巻だったのかな、と思います。

それはそれで面白かったのですが、個人的には大形問題は大形を中心に据えてやってほしかったなぁ……。なんだかチョコの自分探しのついでに大形問題が解決してしまいつつあるような印象を受けて少し不安です。まあ本当の解決は次巻以降になるみたいなので、そこに期待ですね。

 

とはいえ、このまま終わるとも思えない

と、初読時はけっこう肩透かし感をくらってしまったのですが、あらためて読み返すと、回収されていない謎や今後の伏線なのでは? と思うような点が結構ありました。たとえば……

①記憶を失っているはずの大形が、なぜか火の国をのっとったときのことを覚えている

→『黒魔女さんと黒魔術の王』で未完呪ースを飲み、記憶を失っているはずの大形くん。しかし、まんじゅうの塔に閉じ込められた時に、『黒魔女さんのシンデレラ』で火の国の王子になりすましていた頃の出来事について語り出します。五重塔などにくわしかったのは病院で桃花の話を聞いていたからにしても、『シンデレラ』で桃花は未登場なので、大形が言及していた場面のことを彼女が知っているわけがなく、つじつまがあいません。

②記憶屋のジョニーに対して、暗御留燃阿が「自分たちは黒魔女しつけ協会から送られてきた短期留学生だ」と嘘をついた理由

→大形問題解決パートであること、暗御留燃阿が大形の不幸の元凶であることを考えると、次巻彼女の活躍シーンはきっとつくられるはず(そうであってくれ!)。さらにこの台詞の後にわざわざ地の文で「なんで、そんなうそをつくんだろ?」とだめおししていることを考えると、ほぼ確実に伏線でしょう。

③グラシュティグの「ギュービッドが犠牲や屈辱を味わうかもしれない」という言葉の意味

→前巻、5人を死者の世界に送り出そうとした際、グラシュティグ会長がギュービッドに対し、「弟子を助けるといっても、ときには犠牲を、そして、屈辱的な思いをともなうことさえあるかもしれない」と言いました。印象的なセリフでしたが、今巻それらしいシーンがなかったので今後の展開が気になりますね。

③大形の修行内容と京太郎の正体
→『黒魔女さんと黒魔術の王』にて、きれいな心を取り戻したいと思った大形が、自ら京太郎の元で修行していたことが明らかになりました。しかしその修行内容と京太郎の正体は未だにほとんどあきらかになっていません。これが描かれないと、読者の知らないところで、読者がほぼ知らない新キャラによって大形が改心したことになってしまうので、たぶん掘り下げがあるでしょう。

 

次巻も楽しみです!

 

 

 

 次巻の感想はこちら

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