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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さん】大形くんから暗御留燃阿への思いの掘り下げ巻『黒魔女さんと魔法博士』【14巻感想】

この記事の続き。暗御留燃阿オタです。

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

大形と師匠・暗御留燃阿の今の関係について、まるまる1巻かけてほりさげられた巻でした 。

 

 あらすじ

亡き祖父・京太郎の呪文によって記憶を取り戻し、暗御留燃阿と再び師弟関係になった大形くん。

一級黒魔女同士になったチョコ・大形とそのインストラクターのギュービッド・暗御留燃阿は、魔法の三博士からもらえるというクリスマスプレゼントをめぐって対決することに。

仲良く修行したいのに、ライバル心むき出しの大形を見てショックを受けるチョコ。しかしギスギスした態度の裏にあったのは、ある人物への意外な思いだった。

 

大形くんと暗御留燃阿、意外な方向から掘り下げられる

前巻、京太郎の呪文で記憶を取り戻した大形くん。しかし、暗御留燃阿との和解の過程や、それによって綺麗な心を取り戻したという京太郎との修行の詳細、京太郎の正体については一切触れられず、どこか消化不良感が残っていました。

今巻はそれらが重点的に描かれるのかなと思っていたのですが、1話の冒頭で早々に京太郎が消滅してしまい、修行の詳細もノータッチのままでした。ですが、大形と暗御留燃阿の関係に関しては、和解の過程こそほぼ書かれなかったものの、和解後の大形→暗御留燃阿の気持ちについては説得力のある描かれ方をしていたのではないかなと思います。

クリスマスプレゼントバトルの最中、やたらとげとげしい態度だった大形くん。実は勝負に勝てば師匠の暗御留燃阿を2段に昇格させることができると聞き、そのために必死に努力していたのです。惜しくもチョコに敗れた彼は、ひざからくずれおちて悔しがります。

大形くんからの暗御留燃阿に対する気持ちが予想以上に大きく&重く、ビビりました(笑)。「ぼくはこの手で、暗御留燃阿に勝利を、黒魔女2段を、とどけたかったんだ……」、「ギュービッドもいいインストラクター黒魔女だろうけど、ぼくは暗御留燃阿のほうが上だと思う」など、おお……と思わせるセリフがたくさんありましたね。

チョコに手加減してもらうのではなく、あくまで正々堂々と戦った上で勝ちたい、価値のある勝利をとどけたい、というのはストイックな彼らしいし、プライドの高い師匠を本当に喜ばせるにはそうしないといけないんだ、という思いも読みとれる気がして、大形の暗御留燃阿への理解度の高さを感じました。この誰かを思う気持ちの重さ、非常に『黒魔女さん』ですね。

大形くんは記憶を取りもどす過程で暗御留燃阿が本当に反省していることを知ったそうです。実際、師弟関係を結びなおしてからの指導はやさしかったらしく、それゆえ上のような心境になったのだろうな、ということがさらっと描かれます。

ですがこの辺の詳細はこれで終わりにせず、今後、回想などで絶対に掘り下げてほしいです!! 大形問題にとって、とっても大事なシーンのはずなので……。今回は大形くんから暗御留燃阿への気持ちがメインでしたが、暗御留燃阿から大形くんへの気持ちも、おなじくらい掘り下げて書いて欲しいです。

……。

ただ、自分をひどい目にあわせた相手にたいしてもこういう気持ちをもつ、というのはある意味彼らしい気もしました。

これは暗御留燃阿オタにとって都合のいい解釈にすぎないかもしれないのですが、大形くんは暗御留燃阿に対して憎しみだけではなく、同じ秀才型としてのシンパシーのようなものもずっとあったように感じられるのですよ。

無印12巻で、さらしものの刑にされかかっている暗御留燃阿を助けたい、と大形くんが話すシーンがありました。そこで、「あの、美しく、誇り高い黒魔女が、(略)バカにされるなんて、たえられない。まるで、ぼくまでさらしものにされたような気分になる」というセリフがあります。

大形はここで、暗御留燃阿がギュービッドに対して劣等感を抱いていることに注目しています。さらにそれが、才能コンプレックスに基づいていることも理解しています。

この時の暗御留燃阿は出世命の悪役で、かつての弟子のことを気にかけている描写などは一切ないのですが、大形くんは彼女を憎みつつも、その根本にあるコンプレックスを理解していることがうかがえます。

それがなぜかというと、彼自身が「ぼくと黒鳥さんの関係も、暗御留燃阿とギュービッドの関係に似ているかも」と言っているように、自分たちの性質の一部が似ていると感じていたからだと思います。

元師匠を仇として憎みつつも、秀才型で自分と気質が似ていることをわかっており、それゆえひらめき型に対する恐れや焦りなどを理解できてしまうところもあったのではないかなと。だからこそ暗御留燃阿がさらし者の刑にされると「ぼくまでさらしものにされたような気分になる」のではないかと思いました。

結局、この時の彼はチョコを自分の計画にまきこむために演技をしていたことが後々明らかになるのですが、桃花ちゃんがつうしんぼに「暗御留燃阿を助けたいという言葉にうそはなかったと信じている」と書いていたように、このセリフのすべてがうそだったわけではないでしょう。

もともと感受性が強く、性質的にも暗御留燃阿と共鳴する部分もあったからこそ、記憶をとり戻してからたった数日で「ギュービッドとおなじ2段黒魔女にしてあげたかった!」とまで言うような気持ちになったのだと思います。

そしてクリスマスプレゼントバトルの決着がついた1月6日って暗御留燃阿の誕生日なんですよね。石崎先生が意識していたのかはわかりませんが、それをふまえると、ますます大形の「2段黒魔女にしてあげたい」というセリフの重みが増す気がします。

また、今巻のストーリーの運びかたも大形くんの暗御留燃阿への気持ちの重さを際立てていたように思いました。修行シーンなどはちょくちょく挟まれるものの、「大形と暗御留燃阿は今どういう関係なのか」「和解できているのか」という、読者にとって最も気になることに対する明確なアンサーがないまま物語が進み、ラスト付近で大形の今までの行動が全て暗御留燃阿のためだったと明かされる……というのは、かなりインパクトがありました。

改心後の大形くんの性格も、改心前と全く別人になってしまうのではなく、純粋でストイックゆえに独りよがりになりやすいところなど、以前との連続性も感じさせてよかったです。

ただやっぱり、和解過程が描かれていないこともあり、被害者のはずの大形くんが加害者の暗御留燃阿のために奔走する、という展開には素直に「感動した!」と言えないところはあります。今後、暗御留燃阿サイドの掘り下げなどで、その辺のもやもやが払拭されることを期待しています。

おわりに

今巻で大形問題はおおむね終了だと思います。長年この問題を追ってきた身からするとひとまずほっとするラストでした。暗御留燃阿と大形の和解過程など、まだまだ絶対にほりさげて欲しい箇所はありますが、しみじみとしたいい巻だったと思います。

また、感想にはあまり書けませんでしたが、ギュービッドと暗御留燃阿の描かれ方もよかったです! 二人の緊張感ある関係が好きなので、大形vsチョコが暗御留燃阿vsギュービッドの師匠対決でもあるのは大変萌えたし、「勉強できすぎの出木杉さん、意識高すぎの高杉くん」という暗御留燃阿評や、「つまり、あたしが暗御留燃阿に負けたってことさ」というギュービッドのセリフもぐっときました。

迦楼羅編の要素が入っていたのも、ファンとしてはうれしかったですね。

とはいえ大形問題全体を通してみると、やっぱり暗御留燃阿が改心してから問題に関わるまで長かったよなとか、桃花ちゃんがインストラクターとして活躍する話をもっと見たかったなぁとか、京太郎って結局何だったんだろうみたいな疑問は残っています。そのあたりは今後の巻や外伝で描かれたらうれしいな〜と思います。

次巻も楽しみです!

 

 

 

次巻の感想はこちら

 

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