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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さん】恋バトルに収束の兆し?ラストは衝撃展開!『黒魔女さんと受験の神様』【15巻感想】

この記事の続き 

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

あらすじ

呪リア学園を受験する大形くんと同じ中学校に行くべく、呪験勉強を開始したチョコ。ギュービッド様の勧めで、黒魔女のための進学塾「ノアルソルシエール学校」に通うことになります。

一方、6-1は3学期も大忙し。受験を間近に控えたみんなから委員会活動を押しつけられたチョコは、自分の勉強との両立に四苦八苦。

また、大形くんへのほのかな恋心(?)にも進展が……

 

チョコをめぐる恋のバトル、決着がつきそう

15年にわたり続いてきたチョコをめぐる恋のバトル。その主な登場人物は麻倉良太郎、東海寺阿修羅、大形京の3人。まず麻倉と東海寺がライバルになり、その後『黒魔女さんのシンデレラ』で、大形が一方的にチョコは自分のお妃だと宣言。その後もことあるごとにバトルが繰り返されてきました。

『恋に落ちた黒魔女さん⁈』からはチョコが大形を気にしているようなシーンも増え、彼が一歩リードしているような印象に。また、巻を追うごとに、大形を魔界への恨みから救おう! という描写が濃くなっていき、大形もそんなチョコに少しずつ心を開いてきました。

そして今巻は、チョコの大形への恋愛的な気持ちが、今までになくがっつりと書かれた巻でした。

大形くんと一緒の中学に進学したいチョコは呪験を決意。宿題のために部屋の窓越しに会話を楽しむなど、王道の甘酸っぱいシーンが続きます(ここ、挿絵もロマンチックでしたね)。

大形と同じ中学に通うのは運命かも、と思う箇所や、「(大形の笑顔が)手をのばせばとどきそうなところにあるかと思ったら、また胸がきゅっ」という地の文など、明らかに心惹かれていることがわかる描写も多かったです。前巻のきみえに続き、まわりからも「ほのかな恋心を抱いている」などと言われているので、もうチョコ→大形は確定なのでしょう。

なかでも、8章は繊細な気持ちが伝わる神章でした。

一緒に模擬試験を受けに行った二人。全く歯が立たなかったと落ち込むチョコのために、大形くんが復習につきあってくれることに。夕日がさしこむ教室で二人きり、オレンジ色に照らされた横顔に見とれるチョコ。

夕暮れのひんやりとした空気をふるわせる、おだやかな声。

それに、じっと耳をかたむけているうち、ふと思った。

ずっと、こうだったら、いいのに……。

あしたも、あさっても、しあさっても、こうだったら、いいのに……。

(中略)

毎日が、ずっと、ずっと、いまのくりかえしだったら、いいのに。

ゆっくりと、うすやみに沈んでいく六年一組の教室。

あたしは心のなかで、なんどもなんども、そうくりかえした。

『黒魔女さんと受験の神様』p141~p142

卒業を目前にした1月末、どんどん日が暮れていく教室。それをバックに、静かで幸せな、でもすぐに失われてしまうであろう情景を惜しむチョコ。

いや〜、映画のワンシーンのような美しさですね〜。石崎先生の気合が伝わってくる。わたしが麻倉や東海寺のファンだったらショックで寝込むかもしれないです。

彼らはコンビ感がありすぎて、どちらか一方だけが恋愛成就する光景は、初期から想像できなかったです。また、魔界や元師匠への恨みなど、大形の背負っているものが重すぎるので、麻倉or東海寺ルートはないだろうなと正直思っていました。でも大形も恋の相手というよりはライバルという印象が強かったし、無印はそこまで恋愛中心の作品ではなかったので、特定のだれかとつきあったりはしないのだろうと予想していました。

それがここまでがっつり「恋」を書いてくるんだから、オバちゃんはもうびっくりです。10巻くらいから、麻倉&東海寺の顔を合わせれば即ケンカ、みたいなノリがなりをひそめ、共闘シーンが作られたりしていたので、そういうことなのかなとは思っていましたが……。

あとはチョコが、大形を目の前にしたときの喜びや胸の高まりを「恋」だと自覚するだけで、二人の仲は一気に進展する気がします。多分、次巻はバレンタインのお話でしょうし、チョコが「この気持ちは『恋』というやつなんだ!」と気づくストーリーになりそう。

だけど『黒魔女さん』が当初かなりダークな雰囲気もあったこと、最近原点回帰していることなども踏まえると、石崎先生がそう簡単にくっつけてくれるかな? と感じたり。それに、まわりからもこれだけ恋だ恋だと言われてまだ自分の気持ちに気づかないチョコが、どうやったら動くんだろうとも思います。

大形くんが他の女子と親しげにしているのを見て嫉妬に苦しむとかですかね。同作者で、雰囲気的にも『黒魔女さん』に近い作品『世界の果ての魔女学校』には、恋人の昔の彼女が気になって仕方ない女の子が登場しました。あんなふうに、恋の苦しみみたいなものが書かかれるかもしれないなあと、ちょっと思っています。

それから、他の子に流されるようにして私立中学を受験するというのも、少し黒魔女さんらしくない気がするんですよねぇ。たしかにチョコさんは愛が重いところがありますが、やっぱり本来クールな一匹狼だと思うんですよ。どんな進路にせよ、自分の意思で決めたほうが「らしい」というか。

今巻ラスト、墓魔にされそうな灯子ちゃんたちを救うべく、呪験会場から抜け出していましたが、やっぱりそういうことを考えても、私立には行かないんじゃないかと思いますね。

 

大形問題はつづくよどこまでも

そしてそしてそして! 今巻最大のサプライズ展開、暗御留燃阿の失踪について。

大形を悪の道に落とした彼女が味方になったのが無印13巻、大形問題に本格的に関わりだしたのは6年生編12巻。6年生編13巻では記憶を失った大形を救うため、チョコたちと一緒に死者の世界に行ったりもしましたが、超重要キャラのわりにはほとんど掘り下げがないな、というのが前々巻までの印象でした。

前巻ではすでに大形とも和解済みで、彼が師匠のために奔走する様子が描かれました。わたしは暗御留燃阿オタなので、それを読んだときはとても嬉しかったのですが、やはりどこかすっきりしない感じが残っていました。

大形と暗御留燃阿の因縁の決着というのは、この問題の最もたいせつな要素と言っても過言ではないはずです。それが数行程度の事後報告で済んでしまうというのは、いくらその他が素晴らしくても受けいれづらかったです。また、和解の過程がないのもあり、被害者の大形が加害者の暗御留燃阿のために奔走する展開には素直に感動できないところもありました。

ただ、大形くんの心から彼女への恨みが消え、今はものすごく慕っているのもわかるのでなんとなく大団円な雰囲気もあり、てっきり前巻でこの問題は終わったものだと思っていました。

しかし今巻、思いもよらぬ出来事が。大形の呪験勉強を手伝っていたはずの暗御留燃阿が突然、手紙を残して失踪したのです。

どうやら、「罰を2回うけたお前がインストラクターをしているせいで、弟子は志望校に合格できないだろう」と言われた模様。ギュービッドたちも捜索しますが、結局いどころはつかめず、行方不明のまま受験当日をむかえます。

まさか暗御留燃阿を失踪させたまま今巻が終わるとは。この二人がここまで真正面から書かれるとは思っていなかったので、本当に嬉しいです。

それだけでも衝撃だったのに、彼女の内面にまで踏み込んでいる手紙を読んだときは、夢でも見ているのかと思いました。

それによれば暗御留燃阿は、大形がもう一度やりなおせるように助けるのがつぐないになる、と気付いたとのこと。しかし、綺麗な心を取りもどしてあげることはできない。なぜなら、そもそも自分は彼を闇に落とした張本人だし、チョコや桃花のような汚れのない心の持ち主ではないから。だからせめて魔力を健全な方向に伸ばそう、それなら能力的にもできるし、その資格ならあるだろうと思ったそうです。

けれど実際には、魔力を伸ばすどころか、自分がいることで大形が不合格になる可能性があるとわかった。だから身を引くことにする、という内容でした。

まず、「綺麗な心は与えられないが、強大な魔力を正しい方向に伸ばす自信ならあった」という箇所が、自責の念の陰にプライドを感じて、本当に暗御留燃阿らしいなぁと思いました。

またこの場面は、彼女にとって学力とはどんなものなのかを考えて読むと、一層味わい深いです。

無印14巻で、彼女には小学校受験失敗の過去があることがあきらかになっています。学生時代成績トップだったのは、それをバネに猛勉強し続けたからです。出世の鬼になったのも、王立魔女学校の卒業試験でギュービッドに負けることをおそれたのがきっかけでした。暗御留燃阿にとって、その高い学力というのは、生涯全てを注いで手にしてきた誇りそのものでもあり、つねに自分をおいこみ、破滅へとみちびいた業でもあるはずです。

そうして得てきた能力を使って、かつて自分が人生を狂わせた弟子に望みの進路を与えようとしたわけですが、現実は望みをかなえるどころか、ふたたび人生を狂わせてしまう可能性があることがわかった。それを突きつけられ、自ら姿を消そうというところまで追い詰められるのは、相当よいものがありました。

また、そこに至るまでの背景や理由は違うとはいえ、今回の暗御留燃阿の失踪は、かつて幼稚園児の大形を見捨てていなくなったできごとと少し重なる気がします。石崎先生が意識しているのかはわかりませんが、あえて当時と似た状況に置いているのかなぁとも思いました。

『黒魔女さん』自体がおそらくあと数巻で完結なのでしょうし、残り書かないといけないことが大形問題だけではないこともわかっているのですが、暗御留燃阿サイドはさらにほりさげてほしいですね。かつて弟子にしたひとつひとつの具体的な行為についてどう思っているのか、また当時はどういう気持ちだったのか、などを知りたいです。

石崎先生は『黒魔女さんの小説教室』で「物語というのは『変化』を語るものだ」とおっしゃっています。「どうして気持ちが変化したのか、それには、具体的なできごとがあったはず。それを語っていくのが『小説』だと、ぼくは思う」とも。

いままで、大形と暗御留燃阿に関してはずいぶん駆け足な印象でしたが、とうとうこの「変化にいたるまでの過程」が描かれる時が来たんだと思います。

暗御留燃阿は長らく大形問題に関わってなかったのもあり、12巻で大形問題に参戦したあとも期待が半分不安が半分みたいな状態でしたが、次巻は100%期待してまっていようと思います!

 

おわりに

全体的に、シリーズの完結が近いことが感じられる巻でした。

今巻の大きなエピソードは麻倉vs東海寺vs大形のチョコをめぐるバトルと、大形問題の掘り下げだったと思いますが、長年にわたって描かれてきたエピソードが収束に向かっているのをみると、読み始めたころをおもいだしてしみじみしますね。

また、チョコが将来、魔力を捨てるのか、それともギュービッドたちと一緒にいることを選ぶのか、という問題にも触れられました。これも無印1巻から出てきていましたね。おそらく次巻か次々巻くらいで恋バトル&大形問題が終わると思うので、ラスト2巻ぐらいはギュービッドとチョコが中心のお話になりそうです。

 

次巻も楽しみです!

 

次巻はこちら

 

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