大学生編
面白かったです!
ストーリーについて
まず、物語としてとても面白かったです。伏線回収がきれいな感じのストーリーでした。どうでもいいと思ってた情報(とあるキャラの爪の描写、とあるキャラクターの何気ない動作)が最後に重要な要素として回収されるのは、読んでいて気持ちよかったです。
マニアックなオカルトネタも満載でした。石崎先生は、インタビュー等で「 児童書には『教育的観点』というものは必要」とおっしゃっていて、実際に黒魔女さんでも他の作品でも、意外と教養ネタが多いです。今回もそうでしたが、吸血鬼を扱った小説群から、ポーの一族まで出てきてるのは、教育的な知識というより石崎先生の偏愛を感じて、そこが読んでいて楽しかったです。
ちょっと不穏な展開が続き、ドタバタコメディもののノリもありつつ、ダークファンタジーのような雰囲気も感じました。こういうストーリーで出てきそうな大形がなかなか登場しないのに、さりげなく大形っぽい特徴(カールした前髪、輝く大きな目など)を持つキャラが出てきたりして、これは大形かな? みたいに読者の心理煽りつづけるのもうまかったです。彼が言及した「バロック=ゆがんだ真珠」は、はるか昔に、確か児童文芸の記事でも先生がおっしゃってたと思います。石崎先生の美学なんだろうな。
あと悪役が魅力的でした。正直、大学生編は一巻限りかなとも思っていたし、新キャラ出さずに既存キャラをほりさげてほしいとも思っていました。しかし、ちょっとお姉さんぽくて上品でありつつ、普通の大学生のようなカジュアルな雰囲気もある、それでありながらミステリアス……という本作の悪役キャラは非常にメロかったです。こんな人になぜか友達みたいに振る舞ってもらえたら、私なら本当に好きになっちゃうな……と思いました。
1組について
1組メンバーのその後が知れたのも嬉しかったです。本編後半は魔界舞台が多く、人間界だとしても恋愛回だったりして、特定のキャラ以外はそこまで活躍できてなかった印象です。だから、今回チョコの恋愛とか抜きで、出番もお決まりネタだけとかではなく、しっかり活躍する1組が見れて嬉しかったです。
進路もそれぞれ練られた感がありました。たとえば、家庭的な灯子ちゃんが、料理や保育などの家庭っぽいイメージのある進路じゃなく理系に進学していたりとか、横綱が東大とか。ちょっと意外性のある、でも言われてみればわかるなって人生を歩んでいるのが、本当の同窓会みたいで面白かったです。黒魔女さんはキャラクター小説ですが、キャラクターキャラクターしすぎない、リアルなところもあるのが魅力だと思ってたので、それを感じて嬉しかったです。
同窓会潜入レポートとか、電子書籍書き下ろしストーリーで与那国くん要素を入ってきたりとかも、最後まで1組たっぷりでした。メインで登場しなくても、1組のメンバーが石崎先生の中で生きているんだろうなぁと感じましたね。
麻倉、東海寺も長めの出番があってよかったです。黒魔女としての絆で結ばれているのは大形ですが、中高ずっと一緒にいて、普通の青春の思い出を共有してそうなのは麻倉東海寺というのも、バランスとしてはちょうどいいんじゃないかと思いました。
既存の魔界キャラの出番はほぼなかったかな。今巻は大学生編の一作目としてとても面白かったですが、もし続きがあるなら、がっつり魔界キャラ出てくる回も見たいですね。特に暗御留燃阿ね。大形が「高位ドルイド神官」なる仕事に就くために頑張っているみたいですが、火の国を何度も危機に陥れた彼がそのポジション得るには、師匠として彼女が尽力したのかなとかちょっと思いました。ただギュービッドの友達として森川たちと一緒に出てくるだけでは物足りないので、やっぱりライバルっぽく活躍してほしいっすね。
コミカライズ
絵がめっちゃかわいいです。キャラクターの子ども感が増してますね。特にメグかわいいです。
第1巻に収録されているのは青龍編と無印1巻の2話なんですが、やっぱこの頃面白いですね。今よりも生々しい小学生のダークさがあります。
舞ちゃん百合ちゃんが、オカルトの本をいっぱい持っているチョコのことを「他に得意なものがないからあんなの集めてる」と陰口を言ってたりとか……。「気味が悪い子だね」ぐらいの悪口なら割とありそうですが、「他に得意なことがないから」っていうのが、ガチで下に見てるんだなということが伝わっていいです。
チョコも性格がいいとは言えず。唯一の友達であるメグのことを「メグからものを教わるなんて」とか「ひらがな世界の住人(*原作)」とか言ってたりなかなか辛辣です。というか自分だって勉強は苦手な方なのに……笑。
それでもキャラを嫌いにならず、暗い雰囲気にならず、ポップでテンポ良いのがすごいですよねー。チョコさんが人間に興味ないからこそ、いじめとかも嫌いだったりとか、毒舌の割に、主人公として超えてはいけないラインは意外と超えてない気がしますね。コミカライズ版は絵も可愛くて、原作よりはきつい印象減っているのもあるかなとも思いました。
あとコミカライズになって思ったのが、モノローグめっちゃ多いなと。チョコさんが一人でぶつぶつ言うキャラだっていうことが視覚的にわかっていいなと思いました。
また、この時期は原作だと作者キャラしか出てきてないんだけど、青龍編ラストに結実ちゃんや杏ちゃん、雷香ちゃんがいたり、さりげなく1組メンバーが出ているところもファン的には嬉しかったです。現実世界でまだ投稿されていないキャラも、物語の世界の中では存在していたはずですからね。リアルタイムで小説を読んでいたのとはまた違った楽しみがあります。
あとギュービッドのゴスロリ。チョコが「ギュービッドならこういう服も似合いそう」と想像している背景に描かれたゴスロリ姿、お人形みたいでかわいいですー。文章だと頭の中で考えるしかないシーンも、コミカライズだと目に見える形で味わえていいですね。
おまけ小説
神やんけ
文章の雰囲気、テンポがめちゃくちゃ初期のノリで感動です。ストーリーも、チョコが地瑠土麗にスカウトされてる時、ギュービッドも魔界のスカウトマンに乗せられて男装読者モデルをやっていた、というので、対比になっていて面白かったです。本編で、チョコが撮影の様子をギュービッド様に見られて恥ずかしがるシーンがありますが、そこともうまいこと繋がってて、最初からこういう設定があったのかな? というぐらい読んでいて気持ちよかったです。
「ギュービッドの男装かっこいい」は、黒魔女さんファンなら一度は思ったことあると思います。また見たいなーと思ってたので、まさかの再登場で嬉しかったです。
初期黒魔女さんって、ドライブ感重視を謳ってるだけあって、めちゃくちゃその時代の空気感出てましたよね。この無印1巻第2話はその中でも、2000年代の感じがよく出てると思います。当時の街の雰囲気とか、当時の流行の服を着た若者の中を、ゴスロリ姿のチョコさんが歩いてる様子が、文章読んでても浮かんでくるようだったんですよね。
一方、ギュービッド編の方は現代に書かれているので、タピオカなど、2000年代には流行ってなかったアイテムが登場していました。竹下通りの描写も、きっと今の風景ですよね。二つの時代が一つの作品で交わってるようで面白かったです。
でもきっと今の子達は、本編のゴスロリ回を読んでも自然と今の原宿、今のファッションを想像するんでしょうね。そう考えると、私も歳とったなあと思います。
終わりに
本編がきれいに終わり、ギュービッドとチョコのその後のぼかしかたも好きだったので、大学生編は見たいような見たくないような気持ちでした。蓋を開けてみれば、ストーリーも面白く、魔界と人間界のバランスもちょうど良く、相変わらず続きが楽しみになっている自分がいます。
でも、大人になったチョコを見るのはなんか切なくもありました。現実世界ではシリーズ開始から20年も経ち、私もとっくに成人しているのですが、黒魔女さんの世界ではずっとチョコたちが小学生なのが当たり前だったので……。作中でも時間が流れると、もう本編の出来事はこの世界でも過去になってしまったんだなと、少ししんみりしました。
最近、コミカライズやコラボなど、黒魔女さん関連のイベント•企画がたくさん動いてる気がします。巷は平成ブーム、平成女児ブームですし、その波に乗って盛り上がっているのは嬉しいです。私が現役小学生だった頃、少なくとも同世代の女子の中では圧倒的に流行ってた小説だったのに、大人たちが児童書を語る時には黙殺されていて悔しかったんですよ……。
次巻も、あるなら楽しみです! コミカライズも楽しみです!