黒魔女さんが通るブログ

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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さん外伝】「暗黒の王子・大形京」感想

面白かったところ

大形の孤独感の描写や表現。特に1話の、ぬいぐるみと会話する箇所でそれが現れていたような気がします。たとえば、10ページに以下のような箇所があります。

「こんな大きなもの、忘れる?だねぇ。それに不思議な模様がついてるねぇ」

ぬいぐるみのいうとおり、木のふたには、線を組み合わせた記号とも模様ともつかないものが、いくつも彫ってある。

黒魔女さん本編の描写によれば、ぬいぐるみの声も大形が当てているのであり、二人一役を演じています。でも、スピンオフでは特にその辺の解説はなく、「ぬいぐるみの言うとおり〜」など、大形くんが本当にぬいぐるみと話しているように描かれていました。

これが、孤独で病んでいる感じというか、可哀想だけど周りから見たら不気味、みたいなところが出ていて、しょっぱなかわくわくしました。

大形がぬいぐるみと話しているように錯覚しているのは、寂しいとか、本当は友達が欲しいという本心の表れだと思います。でも、そこを直接的に「ぼくはさびしくてクマのぬいぐるみと喋った」とか書いてないところがいいなと感じました。その方が孤独の根が深い感じがするから。

また、大形がそんな状態なのはぬいぐるみつけられてるからなんだけど、彼の寂しさを唯一和らげているのも封印のぬいぐるみとのおしゃべりである、というのも皮肉で良かったです。

他のシーンでいうと、ミニョンヌを三月うさぎの時計店においていくシーン。大形くんが「ただし、大切にかわいがってくださる方にだけ。それだけはくれぐれもお願いします。」と書いた張り紙を用意します。「それだけはお願いします」という言葉が、単に優しいのではなく「自分も大事にされたかった」という気持ちの表れのような気がして、グッときました。

このように、「原因のわからない孤独感に苦しむ大形」が丁寧に描写されていたので、「友達になれるかもしれない」というところからチョコへ憧れを持ち始めるのも、切実で胸を打つ感じでした。友達になりたくて、ずれてるなりに、サイクリング事件や灯子ちゃんの事件でチョコを助けようとするのも健気で、等身大の小学生感がありました。

一方で、ろくに人間関係を築いてこれなかったため、距離感をつかむ力などが年の割に幼く、ところどころで言動にキモさがあるのもらしいなと思いました。ねこねこ騒動の時に、何も会話してないのに「まっすぐぼくを見てくれたから気持ちは伝わったと思うけど〜」と思い込んでいるところとか。ちょっとゆがんでいる感じが大形の魅力だと思うので、こういう部分は面白かったです。

個人的には、モアとの会話のシーンで大形がモアの唇に人差し指当てるのが萌えました! 「黒魔女さんのハロウィーン」で、チョコがギュービッドに同じ仕草をするシーンがあり、そのオマージュかなと思ったので。アクティルなど、20年近く登場していなかったキャラのまさかの活躍も、初期ファンとしては嬉しかったです。

微妙だったところ

ただ正直、初読時の感想は「思ったより内容薄いな……」というものでした。

このスピンオフでは、本編の内容をほぼ全部振り返っています。特に2話は「黒魔女さんのシンデレラ」〜「黒魔女さんと黒魔術の王」まで、数十巻分の内容が150ページにまとまっています。そのせいか、一つ一つの掘り下げはあまりされず、本編のダイジェスト版を見ている気持ちになりました。

本編で大形が活躍した話(シンデレラやホワイトデーなど)の裏側を、本編で語られなかった過去エピソードやチョコへの思いなどを挟みつつ、掘り下げていくようなストーリーかと思っていました。しかし、実際は、魔界復讐計画を説明する→失敗の事後報告の繰り返し。

「孤独な大形がチョコに影響を受けて変わっていく」的なのがこのスピンオフの大筋だと思いますが、各巻のあらすじ紹介+大形の一言感想ぐらいな感じに終始しているように見えて、大形がチョコに救われていく過程とか気持ちがいまいちわからなかったです。

例えば「黒魔女さんのホワイトデー」には、ぬいぐるみをつけられる直前に「黒鳥さん、優しいんだね」というシーンがあります。それまでは「魔界の王になるんだー」的なことを言っていた大形の本音がかいま見えるような、印象的なセリフでした。

しかし、スピンオフではこのシーンに一応触れられてはいるものの、「『黒鳥さん、優しいんだね』と言った。でもなんでそんなこと言ったのかはわからない」ぐらいで終わっていました。前後でどんなことがあったからこんな言葉が出てきたのか、などを詳しく知りたかったのですが……。

触れるだけというのはそれ以外でも同様。暗御留燃阿についても、本編でやや駆け足だった、和解の過程などが答え合わせされるかなと思っていました。直接的なシーンではなくても、「だから大形はモアを許したんだな」ということが想像できるような内面や過去エピソードなどがあるのかなと……。しかし、そういうものは特になく、2話の中盤になっていきなり「桃花より教え方は優しかったような……」「助けたいと言ったのは少しは本心だったような……」とかいってて面食らいました。

キャラの言動も無理があると思う箇所が多かったです。例えば、暗御留燃阿が大形をとめるため、自分の古い日記を送りつける、というシーンは、いくらなんでも不自然すぎると感じました。その後の会話シーンも、「魔女学校のギュービッド」であれほど立体感を持って書かれてたキャラとは思えず。

メリュジーヌ先生が大形の境遇を黙認していた件とかも、あえて触れるならもっとがっつり回収して欲しかったです。深い事情がありそうなエピソードを、簡単な説明で終わらせていると感じるものが多く、「ここもっと知りたいのになー」と何度も思いました。

あと、本編40巻分の大形くんの出番を全て振り返るのなら、もう少し魔力封印が解けて以降(「黒魔女さんのシンデレラ」以降)の配分を多くしてほしかったです。本作品の半分ぐらいを青龍編〜無印3巻の振り返りが占めているのは何でなんだろう? しかも、そのさらに半分ぐらいを青龍編と無印第一話という、大形くんが大して活躍しないエピソードに割いているのもなんだかな〜と思っちゃいました。

まとめ

石崎先生がすごい気合い入れて書いてるのは感じました。各話の冒頭に文学作品の引用入れるとか「世界の果ての魔女学校」っぽさを感じたし。お部屋でも、今作のイメージソングとしてボブディランの「Shelter from the Storm」を上げていました。

以前、石崎先生は「児童文芸」か何かの記事で、物語の雰囲気や世界観を作り上げることにこだわりがあるようなことを言っていました。だから、ちょいちょい差し込まれたおしゃれな要素を見て、きっと石崎先生の思い入れが強い作品なんだろうなと思いました。章タイトルもかっこよかったし。実際、1話冒頭の孤独の部分は引き込ました。

ただやっぱり、全体的な感想としてはあまり面白くなかったです。前2作のスピンオフ「魔ちがいだらけの恋バトル」「魔女学校のギュービッド」は、特定のキャラのファンではなくても、物語として楽しめる作品でしたが、これは大形のファン向けかなという感じがしました。

大形自体、暗い過去、京太郎の謎など、濃いエピソードがとても多いキャラだと思います。1巻で終わらせず、「黒魔女の騎士ギューバッド」や「魔女学校物語」のように、3巻ぐらいで読みたい内容でした。いろいろ事情もあるのでしょうが、ぜひ第二弾や第三弾が出てほしいです。人気もあるし、いろんな角度から掘り下げて欲しいキャラなのに、これで終わってしまうのはもったいないと思いました。

【黒魔女さん外伝】友情があるからこそ憎しみもある「魔女学校のギュービッド」【ギュービッド編】

あらすじ

大人気キャラのギュービッドが主人公!
「黒魔女さんが通る!!」のスペシャル版!

「黒魔女さんが通る!!」本編で、主人公チョコのインストラクター黒魔女として登場したギュービッド。
魔女学校時代は、天才だけど問題児だったってホント!?

優等生・暗御留燃阿との友情とすれ違い、私立ブラックウィッチ学園と合同運動会での熱い戦い、
ドキドキの初恋など、学校での日々と事件の数々を、
第一話はギュービッド目線、第二話は暗御留燃阿目線で描きます。

https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000389002より)

傑作。

初期の頃の「基本ポップで明るいけれどところどころ闇を感じる」みたいな雰囲気の作品でした。人の心が闇におちていく過程を、わざとらしくなく、でも胸をうつ感じで丁寧に描いてあって、ほんとうに素晴らしかったです。

 

第1話:ギュービッドのパート

少年漫画の「向こう見ずだけど愛嬌のある主人公」でした。大叔母さんのギューバッドともちょっとちがい……。カリスマ性があって知略+天才的魔力でトラブルを切り抜けていたギューバッドにくらべ、無邪気というか。魔力は高いのだが相手のウラをかけずに空回りしてる感もあるのがけっこう意外でした。

たとえば冒頭、魔女学校に入学したギュービッドが、うっかり校長室に迷い込んでしまい、瞬間移動魔法で逃げ出すシーン。同級生の誰も使えない黒魔法を使えるところ、とっさに呪文をとなえるところは魔力の高さとひらめきを感じさせます。しかしその後、濡烏先生が犯人をあぶり出すために「三級魔法使えるやつは授業を免除にしてやろう」と持ちかけるとまんまとひっかかります。

ブラックウィッチの子と揉めた時も、警察官に変身することで相手を出し抜きそうになりますが、逆にブラックウィッチ学園の教師に魔法を解除され、一緒にいた暗御留燃阿ともども退学になるところでした。エクソノーム先生に「黒魔女の世界は強気だけで渡っていけるほど甘くない。慎重に行動しなさい」と言われるシーンが2回もあるのですが、まさにそんな感じ。この言葉も、最後に暗御留燃阿に裏切られることの伏線になっている気がしました。

でも愛される魅力があるというか。本編では「乱暴だけど、情に厚い」とか言われてましたが、それよりもっとかわいらしい、愛すべき人的な印象がありました。

「でしょでしょ! あたし、ちびっこのときからこれ(黒魔法)が得意で……」などと、魔力の強さをアピールするシーンがわりとあるんですが、嫌な感じではなくて子供の自慢みたいな口調だったりとか。

自分が校則違反をくりかえしたせいで部屋の責任者である暗御留燃阿が外出禁止になった時は、反省のために一緒に部屋にいてくれたりとか。そもそもギュービッドのせいだし、その後も校則違反を繰り返すので反省の度合いも微妙なのですが、妙に義理堅いところもあり、憎めない。「気にせず出かけろ」といわれても「やだ! ぜーたい、やだ!」と駄々っ子のような拒否り方をしたりとか……。しかもそれが打算ではなく、本当に暗御留燃阿とか友達を大事に思ってるのも事実なんですよね。「心が熱い」とかいうのを超えて「人たらし」というか。

ギュービッドは本編で「努力の『ど』の字もないが不思議な力がある」的なことを言われてました。正直、ただの主人公補正的なやつだろと思ってたのですが、その評判に対する説得力がすごくありました。無邪気すぎて、恋心隠す気すらあんまなかったのはちょっと草。

あとパフェのシーンがかわいいです。ようやく外出できたサバトの日、暗御留燃阿がギュービッドをうっきうきで連れていったのはおしゃれなカフェ。そこでガラガラヘビの黒焼きパフェを食べます。無印3巻で言及されていた、「ヘビの頭としっぽをくわえてひっぱりあった」のシーンですね。暗御留燃阿のテンションに押され気味なギュービッドがかわいかったです。こういう二人組は、不良が優等生を学校の外の冒険に連れていくというのがわりとあるのかなと思いますが、逆なのが新鮮でした。豪華なパフェにびっくりするし、食レポ丁寧だし、連れて行きがいがありますね、ギュービッド。

 

第2話:暗御留燃阿パート

暗御留燃阿のキャラ、めちゃくちゃよかったですねぇ。

冒頭からイラつきながら登場。高等女司祭に任命されるために校長室に呼び出されるも、後輩のエレオノーラより遅れてしまったり、挨拶が小さい気がしたりして「本当なら、わたしが先に来て、模範を示すべきだったのに」と奥歯を噛みしめます。客観的に見て十分優秀なのに、完璧主義で自分の設定したハードルを越えられずにイライラしちゃう。最初から「らしさ」満点でいいジャブをくらいました。

優等生の書き方がリアルでした。暗御留燃阿は、向上心を持って努力することを心から素晴らしいと思うタイプ。たとえば3年生の夏休み。エクソノーム先生に恋をしはじめたギュービッドはいたずらをやめ、お料理の研究に邁進します。暗御留燃阿も最高の高等女司祭になるため、実家に帰らず勉強。このようにガリ勉することに対して「それぞれの目的に向かってがんばる日々は、最高の気分だった」という一文が入ります。

一般的に、優等生の闇おち的なストーリーは「本当はもっと自由に生きたいのだが、親や周りのプレッシャーで勉強せざるをえない」という背景が重めに書かれる場合が多い気がします。でも暗御留燃阿は向上心や努力など、「意識高い系」みたいに言われるようなものを心から良いと思い、ギュービッドもそうなってくれたことをいったんは歓迎しています。ありがちな設定ではないし、リアルだとも思いました。

ギュービッドへの思いの複雑さもぐっときました。幼少期から1日10時間近く勉強してきて(無印14巻あとがきより)、学生の時点で卒業後のプランもしっかりしている。本気で優等生でありたいと思っています。だからギュービッドみたいな人のことが理解できないし、迷惑もかけられている。なのに、時には校則違反に手を染めるなどして本来の自分に背いてまでもかばってしまうし、嫌いになれない。

そんなギュービッドが、なぜだか、かわいくて、いとおしかったから。

こんなひとにそばにいられては、ほんとうはとってもこまるのに。

「魔女学校のギュービッド」p151

暗御留燃阿は本編であまり気持ちがストレートにわかるような書かれ方をしてなかったので、こういうふうに直接心理描写をされるとけっこう衝撃的でした。

また、闇おち前からけっこう良くないところもあったりして、今まで語り手にならなかったタイプのキャラだとも思いました。

ギュービッドがエクソノーム先生に恋したことでいい子になり、ようやく名実ともに優等生らしく振る舞えるようになった暗御留燃阿。その反動のように、後輩に距離を置かれたり恐れられても「優等生ってこういうものだ。むしろ優等生としての証だ」のように思い、高圧的に接するようになります。後輩が自分を怖がっていればいるほど「気分が上がり」「背中がぞくぞくっとする」とか、なかなかサディスティックな言葉が踊ります。

これ、チョコなどの今までの語り手だったら絶対に書かれなかった一面だと思います。そもそも友情と自分の間で葛藤が生じることもなく、まよいなく「友情」をとるかも。でもここで自分も大事にしちゃうとこが人間味があるし、実際それに見合うだけの努力もしているので共感してしまうポイントでもあります。本編主人公たちのような、自分より他人を重んじることに何の躊躇もないキャラではないのが新鮮です。

その一方でギュービッドへの愛情もあります。何か一つきっかかけがあってすぐ闇落ちにむかうわけではなく、なんども友情と嫉妬の間を行ったり来たりしてるところにそれが表れています。

「こんなひとにそばにいられては〜」と複雑な思いを吐露したかと思えば、エクソノーム先生にお料理を作って失敗したギュービッドをしからず慰める。かと思えば難しい黒魔法を成功させるギュービッドを見て不安になる。でもすぐ「そんな心がせまいのはいけない」と自分を叱る。しかし、メリュジーヌ校長のなにげない言葉でズルしてでも勝つことを決意する。でもその後「何を聞かされてもお前の味方」と言われ、あんなプライド高いのに「心の堤防がくずれ」てしまう。その直後に高度な黒魔法をバンバン成功させているギュービッドを見て、怖くてたまらなくなる(このシーンの「怖すぎて逆に笑顔のような表情になってしまう」という表現、グッときました)。

暗御留燃阿の闇おちは「魔力への嫉妬」か「自由な性格が羨ましくて」的なことが原因かと思っていました。でもそれほど単純ではなく、「可愛さあまって憎さ100倍」みたいなことだったんだなと。エクソノーム先生とギュービッドが親密になり始めた当初は、ギュービッドの成績が上がることをむしろ期待していますし、才能への恐れはありつつも、それだけでは闇おちまでしたかどうかわからないです。複雑なところがいいと思いました。

 

最後に

本当にすばらしいスピンオフでした。構成もすばらしく、ギュービッドのオタク、暗御留燃阿のオタクじゃなくても、黒魔女さん自体知らなくても十分楽しめるような作品でした。

そしてやはり石崎先生は勉強できる子を書くのがうまいですねぇ。ギュービッドのスピンオフなので、一番目立つのはもちろんギュービッドです。でも私が暗御留燃阿のオタクだからというのを抜いても、この外伝は暗御留燃阿を好きになる本だと思います。本編であまりクローズアップされなかった分だけ衝撃があります。

挿絵も含め、二人が本編とは微妙に違う、スピンオフじゃないと見れないような表情をしていてスピンオフ甲斐がありました。

それから、ギューバッド編、世界の果ての魔女学校などの要素も回収していて、本編の種あかし的な部分もあり、ディープなファンもめちゃくちゃ楽しめる内容でした。サンドイッチお前だったんかワレ。寄宿舎の部屋の名前とか、雰囲気も抜群でした。

個人的には、ハロウィーンで描かれていた、暗御留燃阿がエクソノーム先生を脅した時のエピソードを、エクソノーム先生視点で読んでみたい。また、今巻は描かれなかった2年生の時のお話を、全て知ってる感のあったメリュジーヌ先生目線で読んでみたいなぁと思いました。

大形編へのつなげ方もばつぐんでした。

次のスピンオフも楽しみです。

【黒魔女さん外伝】こういうのを待っていた!「魔ちがいだらけの初恋バトル」【東海寺&麻倉】

あらすじ

無印1巻〜無印3巻の裏側を麻倉&東海寺の視点から描く。スピンオフ企画第一弾。

 

感想

一言で言うなら、「そうそう、こういうのを読みたかったんだよ!」という感じのスピンオフでした!

外伝企画が発表された時点で、「無印1〜3巻の裏側で麻倉&東海寺がどのように行動していたのか」という内容になることはわかっていました。なのでストーリー展開よりは麻倉・東海寺というキャラクターの掘り下げに期待していたのですが、想像以上にその”質”が良かったです。本編では描かれなかった意外な一面を見せつつも「え、そんな設定知らないんだけど」となってしまうような後づけ感のあるキャラの広げ方ではなく、立体感が増すというか。二人をさらに知れて、好きになれるお話だったと思います! 

 

麻倉くんパート

麻倉くんパートで思ったのは、「この子、かなりいい子だな……」ということです。

たとえば冒頭、チョコを意識し始める場面。

チョコと同じクラスになった麻倉は、さりげなく彼女を観察します。見れば見るほど「究極の陰キャ女子」で、親しい子もいなさそうな様子。

彼は講談組組長・麻倉豪太郎の孫であることに誇りを持っていて、「極道としてかたぎの友達は作るな」という祖父のいいつけにも従っています。なので学校でも人を寄せ付けないオーラを放っているのですが、チョコがあまりにも一人でいるのを見て密かに心配しているのです。

まさか、全員からハブられてる? 新学期が始まったばかりなのに?

みんなの気にさわるようなことでも口にしたのか、やらかしたのか……。

極道としてのプライドや「クラスのやつとなんてつるまない」という態度は麻倉のモットーというか、かなり大切にしている部分だと思います。そうでありつつ、ぽつんとしてる子を見て心配とかしちゃうところに、生まれ持った性質の良さみたいのを感じました。

また、相手の意思を尊重したい気持ちと恋心で揺れ動く様子も可愛かったです。

麻倉がチョコを好きになったのは、周りに流されず「一人でいることが好き」な自分を大切にできるところに惹かれたからでした。想いを伝えたい、気づいてほしい気持ちはありつつも、それが望まれていないことも分かっている。なので恋心をおしこめ、チョコの領域に土足で入ってくるやつと戦うことで相手を守ることにするのです。それは東海寺と喧嘩するときの言葉えらびにも表れています。

黒鳥が迷惑しているだろ、とはいわなかった。これからはそういわないようにしようと、心に決めたからだ。

名前を出せば、黒鳥が巻き込まれたことになる。これはあくまで東海寺とおれのあいだのもめごとで、黒鳥には関係ない。そうすることで、黒鳥の「ひとり」を守れる。それこそが、東海寺とおれのちがいだってこと!

小5にして、自分の気持ちを伝えることではなく相手の生き方を尊重することを選べるのが、まずいい子すぎるなと思いました。そして直接話したわけではないのに、チョコが何を大事にしているのかを分かっていて、さりげなく守る。察しがいいし、気遣いも上手すぎて……。

でもやっぱりそこまでわりきれない部分もあるのも人間らしくて、初恋を知ったばかりの小学生らしくもありよかったです。

黒鳥のために戦っているのに……。

そんな、恩着せがましいことを言うつもりはない。

ただ、ちょっとでもいい。おれの本心をわかってくれたらなぁ。

でも、そんなことを思うことがすでに、恩着せがましいのか。

毎日、黒鳥と机を並べられることを、すなおに感謝すればいいのか……

 

「くれたらな『ぁ』」が切ない。そう思った直後に「そんなことを思うことがすでに恩着せがましい」と考え直すのも真面目な麻倉らしいです。

無印2巻のサイクリングの話も載っていたのですが、そこでもサイクリング企画が発表された際の表情の変化から「黒鳥は運動神経悪いし本当は行きたくないのかな」と察してたりとか、らしいシーンがたくさんあってよかったです。

 

東海寺くんパート

「一見ぶっきらぼうだけど実はシャイで一途」という、本編でも書かれていた魅力をさらに深掘りした感のある麻倉と比べると、東海寺は意外な一面が新たに書かれたという第一印象でした。

驚いたのは、以外と冷静で策士っぽい部分があったこと。本編では「まっすぐ元気な小学生」という印象だったのですが。

一番印象に残ったのは幼馴染の海音寺美珠亜ちゃんとのシーン。麻倉と「当面の間チョコにアタックしない」と休戦協定を結んだ東海寺。そこに美珠亜ちゃんがあらわれ、麻倉の協定破りを伝えてくれるのですが、そのときの対応が、なんか冷たくない……? というか(笑)。

美珠亜ちゃんは「魔性の女や麻倉くんとの勝負なんかにこだわる必要ないのよ」と言いたくて伝えているのですが、本人は半分ぐらい聞いておらず、「じゃあ対抗するために自分はこうしなきゃ」とほぼ逆の考えに。なのに計画のために美珠亜ちゃんに色々用意させたり……(泣)。

でもそれが「彼らしいな」と腑に落ちた感じもあります。

なぜかというと、「まっすぐな小学生」という部分は実は本編と変わってないからだと思います。一見策士っぽいけど、実は一直線に目的にむかって進んでるだけなんですよね。

たとえば、実家の『東海寺』についてのシーン。すっかり衰退してしまった寺を見て、自分が再興させるんだと心に決めています。そんな時お父さんに美珠亜ちゃんとの仲をからかわれ、ふざけるなと思いつつも、「東海寺を立て直すには、ほんとに海音寺の力を借りた方がいいのかも……」とナチュラルに政略結婚ぽいことに触れてたりするんです。

それだけ抜き出すとぱっと見、計略家みたいかもしれないんですが、たぶん緻密な計算をしているわけではなくて、「東海寺の再建」という目標に向けてNGなしでまっすぐ考えたらこうなった、という感じだと思うんです。上記の美珠亜ちゃんとのシーンも、「謎の霊力の持ち主を倒す! 黒鳥をめぐる決勝戦にも勝つ!」ということだけにストレートに取り組むから、逆に策士っぽい印象になるのかなと思いました。

チョコ視点で見るより冷静ではあるけど、単純なところとかは意外とそのままなのかなと。

実家についても、「東海寺のお父さんは自分に霊力がないことが受け入れられず、何かに封印されているだけと思い込んでいる」とかけっこう重い設定が明かされましたが、一人称の語り口に湿っぽい雰囲気があまりないように思いました。

麻倉がけっこう繊細な感じだったので、対比が面白かったです!

あと、本編では「ちょっとだけ霊力がある」という描かれ方をしていましたが、ギュービッドやエクソノームなど魔界のものにも気づかれないで結界を張ることができるなど、かなり強くない? と思いました。少なくともこの時点ではチョコさんより実力がありそうです。

全体的に

本編はチョコさんの目線で進んでいきます。なので20年近く麻倉・東海寺を見ていても、実は彼女から見た二人でしかなく。生の二人って実は全然知らなかったんだなぁと改めて思いました。

それは新情報や本編では描かれなかったシーンが読めたからというだけではなく、二人の視点で書かれた地の文を通じて「麻倉くん・東海寺くんはまわりの子や状況をこういう風に見てたんだ」と、それぞれの「世界」に触れられたような気がしたからでもあります。

また、本編1〜3巻と比べて、同じ出来事でもどこが違って語られているかに注目して読むことで、チョコさんのことも別の角度からみれたと思います。

それから、あとがきで石崎先生が「サブキャラの『人生』に光をあてる」とおっしゃってたのが印象的でした。二人のかっこいいシーン、可愛いシーンが並んでいるだけではなく、それぞれ「このキャラはどういうひとなのか?」がじっくり書かれていたからこそ、特別二人のオタクでもない私にも届くぐらい面白く感じられたんだと思います。

残る2外伝でもぜひ、「このキャラはどんな信念や価値基準を持っているのか」「なぜそれを持っているのか」「その信念がどんな出来事を通じてどのように変化していくのか」などを掘り下げて、心に響く人間ドラマを見せていただきたいなと思っています!

そして「恋バト」もぜひ続編を! 既存の外伝と同様に3巻はやってほしいです!

 

続きも楽しみです!

 

 

 

 

チョコによるギュービッドの外見べた褒めシーンまとめ【本編+外伝】

チョコがギュービッドの外見をべた褒めしてるシーンをまとめました。

外見描写はありすぎるので明らかに褒めてるニュアンスのものをのせてます(ひとみを黄色くひからせて〜のような褒めニュアンスが微妙なものは省いてます)

 

 

無印

1巻

・視界いっぱいに暑苦しい黒革のフードがひろがる。長い前髪のおくは、ちょっとかわいい色白の顔。ひとみが黄色くかがやいている(p10)

・フードの下のかわいい顔(p84)

・しかもその男の人、前髪がすっと長くて、目がかくれてるけど、すっごく美形で。

このイケメンは、もしかして、タレント? それともロックの歌手?

なんか、視線に強烈な力を感じるし(p111)

・あっ、さっきのロリータのお店にいた、イケメン!(略)

長い前髪で顔の半分ぐらい見えないけれど、細いあごの形で笑っているのがわかるよ。

それもほほえみっていうんじゃなくて、ギヒヒヒってバカにしたような笑い……。(略)まっしろのジャケットにパンツ。えりが大きなネイビーブルーのシャツ。(略)あの、人を小バカにしたような笑顔は、まぎれもなくギュービッド……。(p122)

・もちろん、前髪の下の細い顔が、ギヒヒヒって、あざ笑ってて。(p124)

・手ぬぐいからとびだした前髪がおばあちゃんにしては異様に長い。その下の顔にはしわが一本もなくて、あごはすっと細い。(p132)

2巻

・フードの下の白くてかわいい顔(p24)

・ギュービッドの美しく白い顔が、なみだでぐしゃぐしゃになっている。(p30)

・ギュービッドの白い笑顔が、やみのなかで輝いている。(p49)

3巻

・白くて細い指の先には(p179)

4巻

・ギュービッドのかわいいお鼻がひくひくしてる(p27)

6巻

・ギュービッドの白くて美しい顔が、ぐいっとあたしの顔にせまる(p12)

・黒革のフードのなかには、銀髪とすきとおるように美しい白い小顔。そして、キラキラと輝く黄色い目。(p105)

・でも、あらためて見てみると、ギュービッドの顔って、ととのってるよねぇ。

銀の前髪も、黄色い瞳も、すっごいきれい。

ボーイッシュな美人っていうの? 女の子のあたしでもうっとりするよ。(p232)

7巻

・黒革のコートに、黒革のフード。そのなかには、銀色の前髪に、透き通るような白い肌、黄色い瞳の美少女顔。(p58)

・ギュービッドさまの声がふるえてる。大きな目にはなみだが。

レモンジュースみたいで、きれい……(p61)

・フードの下の白い顔を輝かせて(p131)

・暗がりのなかにうかぶ白い顔(p150)

・見上げるあたしの目の前に、どアップの鼻が。いくら美少女とはいっても、鼻の穴のクローズアップは、あまりいいものでは……(p176)

・ギュービッドの真っ白な肌に(p232)

9巻

・ギュービッドの白い顔が(p119)

・ギュービッドは、細い顔をこくりとふった(p138)

・黒いスーツに、まっしろなシャツ、そしてまっくろなネクタイ。だけど、なんか変。髪の毛は長くて、銀色。すっと細い顔は、輝くほど白くて、そして目が黄色……(p151)

10巻

・黒い革のロングコートに、厚底ブーツ。銀色の前髪のあいだからのぞく、色白の美少女顔。そして、黄色い瞳……(p72)

・黄色い目をぴかっと光らせた。白い顔が、ものすごく真剣。(p110)

・白い顔をほころばせてる(p118)

・美少女顔がだいなしですよ〜(p214)

・銀色に輝く髪を、くやしそうにかきむしってる(p240)

・ギュービッドの白い顔を映した(p242)

11巻

・銀色の髪も大きな黄色い目も、雪のように白い肌も、みえないよ(P12)

・黒革のフードのなかで輝く、色白の美人顔(P13)

・前髪の分けぐあいも、目の輝きも、うすいくちびるも、そして、すべてが整ったモデル顔なのに、下品さがむんむんあふれでているところも、すべてがそっくり!(P16)

・顔にはりついた銀色の髪がぱらりとわれた。下からあらわれたのは、黄色い瞳の、美肌美人顔!(P163)

・激おこってるギュービッド、美白顔が、まっかっか。(P216)

12巻

・ギュービッドのまっしろなほっぺたが(P8)

・黒革フードに包まれた色白の顔が、ひろがった(P104)

13巻

・ギュービッドの白いほっぺが、ぴくぴくっとふるえた(P104)

14巻

・雪のように白い顔も、青くすきとおっちゃって(p23)

15巻

・白くて、つるつるお肌の顔をつきだしてきた(P58)

16巻

・黒革フードが、がばっと上をむいて、そこからのぞいているのは、銀髪、黄色の瞳、そして、まっしろ美肌(p122)

・この黒魔女、見た目は美人ですが、中身はオヤジです……(p136)

・そこにあったのは、にっこり笑った、白いお顔(p139)

・ギュービッドの白いお顔が、真っ赤になって(p323)

17巻

・ギュービッドの、細くて白い指が(p22)

・ギュービッドの美しいお口から(p25)

18巻

・白いほっぺが(p248)

19巻

・鼻と鼻がくっつくぐらいの距離にある白いお顔には(p14)

・白いお顔が、ぐるんっと、ふりかえって(p18)

・黒革フードの中で、黄色い目がぴかぴか、白いほっぺがぴくぴく(p21)

・美人!(p53)

・ギュービッドさまが白いほっぺを、ぷうっとふくらませたとき、(p117)

・見た目は、かなりの美人なのにねぇ(p169)

20巻

・うすいくちびるを、きゅっとすぼめて、小さく笑う(p119)

・ギュービッドの美白顔が、みるみるまっ赤になって(p160)

・白いお顔をまっ赤にしておこってる(p225)

 

6-1編

6-1編 1巻

・黒革コートに身をつつみ、ほおづえをつきながら、スマホを操作するかわいい女の人がすわってる。黒革フードの下からのぞく髪は銀色、おはだは、ぬけるように白く、アーモンド型の目の中で、黄色いひとみをきらきらさせるそのお顔は、超美人さん(p9)

・ギュービッドの白いほっぺが、真っ赤にそまって(p13)

・ギュービッドの白い顔が、(p53)

・黒革マントに黒革ブーツ。黒革フードの下には、まっしろな美肌と銀髪がのぞいている(p153)

6-1編 2巻

・黒革フードのすきまからは、真っ白な顔がのぞいている。あんぐりとあけた口のはしっこから、よだれがだらり。うす目の間からは黄色いひとみ……(p9)

・かめがこうらから頭を出すみたいに、黒革コートの下から美人顔があらわれた(p179)

・いや、ギュービッドは、性格はともかく、すきとおるように美しいおはだの持ち主だから、お顔はいつもまっしろなんだけど、(p179)

6-1 編3巻

・黄色い目をきらんとさせて、白いお顔には、ほほえみがうかんでいる(p37)

・長い前髪で顔が半分ぐらいかくれているけど、色白の肌に、大きな目、細いあごの、かなりのイケメンだけど、いったいだれ?(p67)

・ギュービッドさまこそ、魔界一美しくて、心やさしい黒魔女さんです!(p88)

6-1 編5巻

・すらりと背が高くて、黒革コートすがた(p55)

・白い美人顔を、鼻がくっつきそうなほど近づけて、あたしをのぞきこむと(p147)

・そこに立っていたのは、黒革コートに身をつつんだ、美人さん(p161)

・それは、黒革コートにつつまれた、白い美人顔だった(p190)

・まっ白な美肌の上を、レモンみたいな黄色い涙が、つぎつぎとこぼれおちていく(p191)

6-1編8巻

・黒革コートに厚底ブーツ。黒革フードのなかでそよぐ銀髪。そしてかがやく黄色いひとみ(p217)

・ギュービッドったら、白い美肌のお顔に不敵な笑みを浮かべて(p219) 

6−1編9巻

・白いほっぺを赤くそめて(p138)

6−1編11巻

・黒革コートに、黒革フード、黒革ブーツの美黒魔女さん(p21)

・あらわれたのは、すらりとしたスタイルばつぐんの、背の高い女の人。

厚底の黒革ブーツに、黒革コート。ジッパーのついた黒革フードからのぞいているのは、すきとおるように白い美肌に銀髪、そして、黄色にかがやく大きなひとみ。(p110)

6−1編12巻

・見ためは美黒魔女でも、中身はオヤジだからね(p23)

・画面いっぱいに黒革フードにつつまれた色白の美人顔があらわれて。(p64)

6-1編13巻

・ギュービッド、色白のお顔をしかめてる(p145)

6−1編16巻

・下からあらわれたのは、きりっとしたくちびる、きらんとかがやく黄色いひとみ。そして、制帽をぬぎすてた頭をぶるんとふれば、さっとほどけたのは銀色の髪。(p52)

6-1編17巻

・黒革コートにつつまれた細い背中が見えた(p10)

6-1編18巻

・白いお顔をまっかにして(p46)

6-1編19巻

・すると、目に飛びこんできたのは、黒革コートに包まれた細い背中で。(P142)

・しかし、こうしてじっくり見ると、ギュービッドって、やっぱり美人さんだね(P147)

・ギュービッドはきれいな桃色のくちびるをきゅっとあげて(P155)

・あたしは魔界一クールな美黒魔女ギュービッドの弟子!(P158)

6-1編20巻

・いくら見まわしても、黒革コートも、片目をかくした銀髪も、ぬけるように白い美人顔も、どこにもなく(P7)

・黒革コートに、大きなジッパー、銀の留め金。黒革フードのなかには、右目をかくした銀髪と、色白の美人顔(P61)

・そして、目の前には美白肌の美人顔……(P91)

 

【6-1黒魔女さん】この上なく美しい最終回!!チョコさん18年間ありがとう【最終巻感想】

この続き

【6-1黒魔女さん】激エモ師弟愛と激強ライバル、ほろ苦いラストの神巻『黒魔女さんの卒業試験』【19巻感想】 -

あらすじ

6-1を救うため、そしてギュービッドとエクソノーム様の結婚を叶えるため、大形くんと恋に落ちて魔界を追放になったチョコ。しかし魔力を失ったはずなのに、なぜか黒魔法が使える。さらには、エクソノーム様とギュービッドの結婚を阻止しようとする勢力も現れて……

 

感想

束縛彼氏風?の大形くんと腐れ縁のメグ、死の国の陰謀

魔プリによって魔力を失い、大形くんと恋に落ちたチョコ。大形は黒魔法使いだった記憶を完全に失っているらしく、チョコを強引にデートに誘います。

麻倉&東海寺に高圧的だったり、デート中にスマホを見るのはマナー違反だと一方的に告げたり、「束縛系彼氏」っぽい言動をする大形くん。この部分は試し読みで公開されていたのですが、今までの”憧れのきみ”ムーブと違いすぎて、「大形くんって恋人相手だとこうなっちゃうの!?」とびっくりしました(伏線でした)。p47の、チョコのスマホを笑顔でとりあげるイラスト、真面目に怖いよ……笑。

そんなモラハラ風大形に「なにをいってるの、大形くん」と毅然と言い返すメグ。最終巻はメグの、「なんだかんだ腐れ縁でいちばんの友達」という部分がずっと強調されていて、けっこういい役回りをもらってた気がします。「おもしろい話が読みたい! 青龍編」に入っている第1話はいじめにあっているメグを助けるお話ですし、原点回帰感がありました。

大形から逃げるようにかけこんだトイレで、ギュービッドと再会するチョコ。なんとギュービッドはメグの姿になっていました! 聞けば、ギュービッドの想い人・エクソノームが皇太子になることに反対の兄・エマリノームが、因縁をつけて二人の結婚を阻もうとしているというのです。なので身を隠しているのだとか。

メグの姿のギュービッド、新鮮でした。見た目はハデハデ小学生のメグなのに、口調が乱暴だったり目を黄色く光らせたり。このシーン挿絵見たかったです〜。

そしてエマリノーム。無印1巻の第3話では「エクラノーム」という名前で登場しています。ギュービッドがエクソノームとよく似た父の写真をみてうっとりしているシーンに名前だけ出てきましたよね。この兄弟もけっこう複雑です。

 

クリスマスメンバーとの再会

最終巻は「黒魔女さんのクリスマス」で登場したキャラクターがたくさん出てくるのも印象的でした。

たとえば「あ、くま」。「黒魔女さんのクリスマス」では悪役のロベ・ル・プティに熊の姿に変えられ、魔界で寂しい生活を送っていた元人間でした。今はチョコたちの奮闘により元の姿「岩田特大五郎」に戻り、パンケーキ屋をしているようです。

さらっと語られましたが、「あ、くま」は横綱の親戚だったという事実にびっくりです。横綱自身も記念すべき無印第1話で生き霊になっていましたが、地味に何かと魔界に縁のある一族ですね。

また、人気が高そうと私が勝手に思ってる「日芳向日葵」さんも再登場しました。

彼女もロベ・ル・プティの被害者の一人。ロベの弟子として魔界に連れてこられたものの見捨てられ、復讐として魔界の大草原で旅人たちを苦しめてきました。

「クリスマス」でロベが倒されたあとも、人間界に戻らず魔界で暮らし続けている日芳向日葵。チョコと同じく友達づきあいや人間関係が苦手なので、魔界の草原でたまにやってくる旅人にお茶を出すぐらいが性にあってるよう。

「クリスマス」では「夜ごとに生まれ、夜明けとともに死ぬ、虹色に輝く幻は?」というなぞなぞにチョコが答えられたことで、心を開いてくれた向日葵さん。魔界長編でチョコに協力してくれた人たちって、王立魔女学校の関係者だったり、わりとギュービッドやティカの人脈がベースにあった人たちが多い気がします。でも彼女はギュービッドや桃花では絶対に仲良くなれなかった、完全にチョコの魅力だけで味方になってくれた人物ではないでしょうか。人嫌いで似た者同士のふたりの独特な絆も好きなので、再登場してくれてうれしかったです。

「見れば見るほど、見えないもの。なんでもよく見えるときには、ぜんぜん見えないものは、なぁに?」と、深遠ななぞなぞを出す向日葵。これ、かっこいいですよね〜。答えは「闇」で最終巻のテーマにもなっているのですが、それをこういうさりげないけど何か心に残る言葉でお出ししてくるところ……。

ちょっと気になったのが、「エクソノームは束縛系でなんでも自分の思い通りにしないと気がすまないという噂がある」という箇所です。いままで「優柔不断で情けない」というキャラではあっても「束縛系」ではなかったと思うのですが。神経質だとはわかりつつ、最終回でそんな設定追加する必要ある……? というのは引っかかってしまいました。

そしてロベ被害者の会の最後のひとり、ソンセミーシャさんも登場しましたね! 彼女はロベの口車にのせられて恋心を寄せていた相手に呪いをかけてしまい、それを悲嘆して死んでしまったという過去を持つ死霊。旅人に可愛い服をせがみ、気に入らないと殺していましたが、チョコによって自分らしさを思い出し、今はオーバーオール姿です。

彼女もチョコの力で仲間になってくれた人だと思います。昔のキャラクターが最終巻ででてくるのだけでも嬉しいけど、それが「あ、くま」、日芳向日葵、ソンセミーシャであること。ただ「懐かしいね」というだけでなく、チョコが一人一人と作ってきた関係を感じられてうれしかったです。

あと、ソンセミーシャの仲間の「微少女」が面白かったです。

 

チョコの心の闇

とうとうティカを発見するチョコ。祖母が「両思いも」を育てるため、単身魔界にのりこんだのだと思ったチョコは芋作りを引き継ごうとします。

しかしなんだかティカの様子がおかしい。そうこうしているうちに死の国の和菓子店「たちば魔」の鬼奈子&暗子もあらわれ、6-1を犠牲にしたくなかったら両思いもをよこせと言ってきます。

悪ギューレという魔物に連れられた6-1。悪ギューレの元ネタは戦場で生きる者と死ぬ者を決める「ワルキューレ」だそう。ギャグっぽい名前ですが、由来も見た目も話し方も底知れない感じがあってかっこいいです。

6-1を助けるためには両思いもを渡さないといけない。でもそうしたらギュービッドはエクソノームと結婚できなくなる。迷うチョコに、鬼奈子&暗子は「お前は心の奥底では最初からエクソノームとギュービッドの結婚を望んでないはずだ」と言います。「このまま全てがかわらなければいいと思っているのだろう」と。

二人の言葉にはっとするチョコ。ギュービッドの幸せを望むようなそぶりをしながらも、本心では結婚なんてせず、今までと変わらず自分といてほしいとおもっていた「心の闇」に気づくのです。そしてその闇がエマリノーム一味に力を与えていたことにも。ティカも、孫が自身の思いと行動の矛盾に気づいて苦しむ姿を見たくなかったからこそ、一人で魔界に向かったのでした。

たちば魔の二人、最終巻で出番があるとは思わなかったうえ、美味しい役回りをもらってて笑いました。主人公に自分の問題と向き合わせるという……。

チョコの目標は「一番の成績で修行を終え、普通の女の子にもどる」。修行を始めた当初こそ本心だったのでしょうが、「黒魔女さんの修学旅行」でギュービッドに魔界を捨てて一緒に暮らさないかと提案するシーンなどからは、今も同じことを望んでいるとは思えません。

故郷を捨てさせてでも一緒にいたかったのに、簡単に「あなたの幸せが自分の幸せ」とは割りきれませんよね。石崎先生の作品って、一対一の関係の中で相手を思う強い気持ちが描かれることが多い気がします。しかも綺麗なところだけでなくエゴとか相手を振り回したりしてしまう部分も描かれていて好きなのですが、チョコさんのその部分をテーマにしてくれて嬉しいです。

さらに大形も登場し、もっと衝撃的な事実を告げます。チョコが心の闇に苦しむのは、大形の卒業試験の再試験を認めさせるため、彼のインストラクターである暗御留燃阿がしくんだことだったのです。

「魔プリ」をつかって魔界を追放されたチョコに「またギュービッドと絆をとりもどせるかもしれない」という希望を与えます。本心ではギュービッドとの生活を望みながら、彼女とエクソノームの結婚のために「両思いも」を探すという矛盾した言動をとることになるチョコ。すると次第に心に闇が生まれていき、苦しむことになる。その様子をしつけ協会に見せれば、大形の黒魔法使いとしての実力が認められる……という作戦でした。

つまりこの巻で起きたことって、死の国のお家騒動をぬかせば、全て暗御留燃阿の計画のうちだったということですよね。しゅごい。チョコの気持ちをいくらなんでも読めすぎです(笑)。実は自身もギュービッドへの友情とエゴの板挟みになったことがあり*1、だからこそこの作戦を思いつけたのかもしれないですね。

しかしここまで主人公を追いつめる役割を与えたからこそ、暗御留燃阿の出番がほしかったです。チョコたちからしたら敵のような行為をしても弟子を合格させたかったということ。他人を苦しめてでも大形のために行動するのは、ギューチョコ桃花とはちがうかもしれないけど、これが自分の考え方なんだということ。大形が一応説明してくれましたが、暗御留燃阿自身の口からききたかった……(涙)。でもスピンオフがありますし、そこで「もういいよ」ってぐらい活躍してくれると、彼女のオタクとしては信じています!

「再試験をみとめてもらう」という目的を達成した大形は、葛藤するみんなを置いてその場から立ち去ろうとします。「6-1を助けてあげて」とせがむチョコに「ぼくと黒鳥さんは立場が逆。きみに協力はできないよ」と告げる大形。「好きなカノジョとは対等の関係でいたいほう」だそう。

大形くんの人間らしい(?)一面がみれてよかったです。チョコ目線で描かれるのもあり、とくに13巻で改心してからはずっと「あこがれのきみ」という感じで、王子様フィルターがかかってない素の彼ってどんな人なのかなという気持ちがありました。

卒業試験のためにチョコを苦しめるというのは暗御留燃阿が決めたことですが、大形自身も納得した上の行為だと思います。微笑みを絶やさず恋人に甘々の「理想の彼氏」では決してなく、利害がぶつかった時は自分を優先させることもあり、相手を尊重するからこそ突き放すこともあり……。そういう人間らしいキャラクターなんだなということが、最終巻を読んでわかりました。望んでなったわけではないけど、黒魔法使いをやめることを考えていないのも”らしい”。中学生編はありませんが、もし書かれるなら彼を主人公にしたシリーズを読んでみたかったです。

 

あまりにも美しすぎるエピローグ

真の敵が自分自身だと気付いたチョコは、ある決断をします。それは、自分の意思で黒魔法使いをやめ、ギュービッドや魔界のみんなとの思い出も忘れ去ること。

最終章。中学生になり、黒魔女だった頃の記憶の一切を失っているチョコ。花咲桜里さんのことをちょっと気持ち悪い変わったおばあちゃんとしか思えなくなっているのは、胸がきゅっとしますね。

花粉症に苦しむチョコのもとにあらわれたのは、中学で同じクラスになった、第一小、第二小、幸小出身の女子たち。気になる男子が彼女たちの誰が好きなのかを占ってほしいというのです。

ここで好きなのが、3人が「メグに『チョコに頼むといい』と教えられたので来た」と言っているところ。無印1巻と同じシチュエーションでエモいのはもちろん、少し変化している部分もあって……というのが作中で流れた2年という月日を感じさせますし、メグとも相変わらず仲良いんだというのもわかってじーんときます。

何かに憑かれたかのように「キューピットさん」を始めるチョコ。「ギュービッドざん、ギュービッドざん、南の窓がらおはいりぐだざい」。そしてふとベッドを見ると、そこに黒い人影がすわっているように見えたのでした。

あまりにも美しい〆すぎてびっくりしました。最終ページのギュービッドのイラスト、これは事実上の第1話「おもしろい話が読みたい! 青龍編」に描かれたものですよね。18年間続いたシリーズの最後の挿絵が、主人公のチョコでも全員集合絵でもなく、不敵に笑うギュービッドであること……。

この良さ、わかりますか? 初期の頃のギュービッドの、まだ得体の知れない恐ろしい雰囲気がある絵。コメディタッチだけどダークなところもある作風は、2000年代に小学校生活を送った多くの児童の心をつかみましたが、その時の感覚を甦らせてくれる一枚です。また、わたしたちは二人の物語をずっと読んできたので、この顔が半分以上隠れて表情がわからないギュービッドを見て、当時は感じられなかったような温かい気持ちにもなれるんですよね。

最後の挿絵や「つうしんぼ」の内容からすると、チョコとギュービッドはふたたび黒魔女修行をはじめるのかなという予感もします。でもそこまで書ききらず、想像の余地を残して終わるところに石崎先生らしいおしゃれさを感じます。

個人的には、本当にギュービッドが現れたわけではないのかな〜とも思ってるんですよね。あの挿絵は青龍編のもので、今のものではないです。だから、チョコの思いが何かに反応して、出会った日の記憶が一瞬だけ形になったのかなとも。

いずれにせよ、大形くんが言っていたように「生まれては死に、死んでは生まれる。おわりはおわりじゃない。おわるからはじまる。失うから出会うんだ」です。もう一度修行をしたとしても、いままでのギューチョコではない、別の関係として再スタートを切るんじゃないでしょうか。

そしてこの大形の言葉は、われわれ読者にむけた石崎先生の餞別でもある気がします。長年追ってきたものが終わるというのは寂しいですが、キャラクターたちといいお別れができて本当に良かったです。

 

最後に

黒魔女さんの第1巻がでたのが2005年。そこから18年も経ちました。現役読者はもちろん、「昔読んでた。なつかしい」と言っている人たちの中にも、刊行当初は生まれてもいなかった人がいっぱいいるんじゃないでしょうか。

時代も変わりましたね。後半になるにつれエロエースがスカートあおがなくなったり(笑)。また、「他人はどうでもいい」という初期チョコさんの性格も、SNSによる有名人への誹謗中傷が話題になる昨今、かえって長所かもしれないですよね。私含めみんな赤の他人の人生に興味持ちすぎなんですよ。

私がこの作品に出会ったのは2006年。まさかこれほど長く読み続けることになるとは全く思っていませんでした。他にも追っていた物語などはあったのですが、一度も途切れることなく大人になるまで読み続けたのは黒魔女さんだけです。

黒魔女さんの、ベースはコメディでポップな雰囲気ながら、ときどきダークさや生々しさが顔をのぞかせる……という作風が本当に好きです。そしてギュービッドのキャラ設定や「黒魔女の騎士ギューバッド」の登場人物などからかいま見える石崎先生の美学。好きなキャラがいるとかももちろんなのですが、数多くの物語のなかで私がここまで黒魔女さんに心を惹かれたのは、そうした作品の空気感によるものも大きいです。

この作品は私の子供時代そのものです。「これが好き」という感覚に形を与えてくれました。長い間、本当にありがとうございました。

 

 

 

*1:「黒魔女さんのハロウィーン」、無印14巻あとがき参照

【6-1黒魔女さん】激エモ師弟愛と激強ライバル、ほろ苦いラストの神巻『黒魔女さんの卒業試験』【19巻感想】

前巻はこちら

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

あらすじ

ついに迎えた黒魔女修行の卒業試験。その内容は「6-1の魂を抜き取り、エクソノーム様の立太子の礼に送り届ける」というもの。6-1を犠牲にしたくないが、不合格の場合はギュービッドとエクソノーム様の結婚が反故になってしまうかもしれない。その他の選択肢として白魔女になるというのと、誰かと恋に落ちて魔界追放になるというのがあるが、どちらも選びたくはない。板挟みになるチョコだったが、黒魔法で3日間の猶予を与えられる。果たして3日で解決策を見つける事ができるのか?

 

ギュービッドとチョコの師弟愛

久々の描写

ギュービッドの幸せをとるか、6年生みんなの命をとるかで板挟みになるチョコ。また、卒業式が近いことや黒魔女修行のおわりを匂わされることでセンチメンタルな気分が高まります。

全体的にギュービッドへのボディタッチやエモい文が多かったのが印象的でした。

 いままで二年間、ずっとふたりでがんばってきたんだもの。苦しいときは、ギュービッドさまにだけは、あまえたっていいはず……。

 気づいたときには、あたしは背中にしなだれかかっていた。

弟子を1日、ほったらかしたんです! その分、重みをたっぷり感じなさい!

最近は恋愛パートが多く、ギュービッドへの思いがじっくり描かれることは少なくなっていたので、「おっ」と思いました。初期のファン的に嬉しかったです。卒業試験が実際に始まり、ギュービッドと別れることが現実味を帯びてきて寂しい気持ちとか、不安で頼りたいけど口に出せない気持ちが伝わってきました。

 スマホの使い方練習シーンなどもありましたが、このシリーズで繰り返し描かれてきた二人の何気ない日常やバカバカしいやりとりも最後だと思うと切ない気持ちになりますね。

激エモ師弟愛

エクソノーム様についてうっとり語ったり、ラインのアイコンをエクソノーム様にしているギュービッドを見て、想いを遂げさせてあげたいと改めて思うチョコ。また、6年1組のメンバーと黒板アートをしたり、給食を食べたりして「ずっといっしょだったらいいのに。中学生になんか、ならなくてもいいのに」と心が揺れます。

そんななか卒業式前最後の黒魔女修行が行われます。チョコは謎にモテるので、卒業式で告白されるかもしれない。その時に男子が本心を言ってなかったら困る。なので本心を見抜くス魔ホアプリ「チート」を使う練習をすることになります。

練習台としてミニチュアサイズの大形人形(ギュービッド作)を使うことに。彼女の裁縫得意設定がでてくるのもひさしぶりですかね? 初期ファンへのサービスっぽいの多くてうれしいです。

笑い転げながら大形人形にスマホを向けるチョコとギュービッド。最後の修行が、修行というよりはじゃれあいみあいで楽しい、という描写が切な美しいです。見習い黒魔女のまま、いつまでも一緒にいたいという思いがますます強くなるチョコ。でもそれはエクソノームとの結婚を諦めさせるということだし、わがままだ……と落ち込みます。

そんな弟子にギュービッドは、卒業試験の心得を語ります。

「不合格になってもいいんだぜ 。(省略)合格できなかったら、あたしに悪い、って思ってるのかもしれない。けど、そんなこと、考える必要はないからな」

「だって、あたしが根っからの劣等生だから。あたしはそんなの(注:試験に落ちること)『フツー』だから。むかしからずっと。」

ここで、「黄色い瞳が、あたしをやさしく見下ろしていた」という一文が入るのが沁みました。いつもどおりふざけてばかりだけど、チョコがずっと抱えてた不安や、師匠に迷惑をかけたくない気持ちを、ギュービッドはわかってくれていたんだ、というのでじーんときました。「自分は劣等生だから、落ちるのが『フツー』だから」という、ちょっと自虐がはいった言葉で励ましてくれるのも不良っぽい哀愁があってギュービッドらしいです。

「ただし! 失敗するときは、かっこよく失敗しろ」

「グダグダしたり、メソメソしたりは禁止。それから、みんなから笑われたり、うらまれたり、だれかを悲しませたり、そんな失敗のしかたも許さないぜ。」

チョコの指を握りしめて語るギュービッド。最後まで読んでから振り返ると、この時点でチョコとの別れをある程度覚悟していたんでしょうね。計画のすべてをこの時点で伝えることはできないけど、気持ちだけは伝えたい、みたいのが、この指の描写から感じ取れる気がします。このシーン挿絵がついているのですが、まっすぐにチョコを見つめるギュービッドの横顔が美しいです。

眠りに落ちるまで横にいてほしいと頼むチョコ。それに「いい夢を見させてやるぜ。ただし、黒魔女のいい夢は悪夢だけどな」と笑い返すギュービッド。いっしょの布団に入り、黒革コートにほっぺをこすりつけます。魔界長編でもないのにこんなにわかりやすく甘えるのはまあまあめずらしい気がします。できるかぎり一緒にいたいというのと、今この瞬間一緒にいられて幸せというのをお互いに思ってる気がしてグッときました。

ギュービッドの寝顔にあらためて「なんて幸せそうな顔……」としみじみするチョコさん。それを見ながら「ギュービッドの言葉どおり明日は不合格になろう!」と決意します。

ギュービッドの顔見るだけで、ギュービッドの弟子だからというだけで勇気が湧いてくるの、この2年の積み重ねのおかげで説得力あってすごいエモいです……。師弟を越えて家族のような存在感というか。心の中にはいつもギュービッドがいて、そのこと自体がチョコの力になってるという感じがしました。

 

アツい頭脳バトル

3日間で色々怪しい事が起こります。例えば、卒業式の練習中にチョコのス魔ホの通知音が鳴り続けたり、謝恩会の記念品が次々に変わったり。

結論から言うとそれは暗御留燃阿とギュービッドの仕業。実は「6年生の魂を抜き取れ」はチョコではなく大形の卒業試験内容でした。正しくは「チョコを操って6年生の魂を抜き取らせろ」なのですが、ホワイト大形にはそんなひどいことできないだろうと判断した暗御留燃阿が問題を書き換え、弟子が自分の手を一切よござすに合格できるように細工したのです。

まず問題を書き換え、魔プリをつかって大形ごとあやつる。でも時間が巻き戻ったことによって計画が狂ったので、謝恩会の記念品として魔力が低下する「成績ダウン」のジャケットをチョコに送ったりして当初の計画がうまくいくようにはかりました。

それに気づいたギュービッドも反撃に出ます。相手の本音を知れる「チート」魔プリをつかわせることでチョコに策略の全貌を気づかせ、6年生の犠牲を阻止しようとしたのです。そのために必要な「チートテック」を大形に送ったりもしました。

チョコが卒業式や卒業試験でセンチメンタルになってる裏で、暗御留燃阿とギュービッドがいろんな思惑が絡んだ頭脳バトルをしていた、というのが”大人”という感じです。メリュジーヌ校長から届いたメッセージのなかにも「弟子の卒業をめぐってインストラクター黒魔女同士が戦う、そんなことは前代未聞の不祥事」という一文がありました。タイプは正反対だけど頭がいいのは共通してて、お互いの策略を見抜けるのはお互いだけ、という王道のライバル関係がアツいです。

「チート」魔プリで大形のス魔ホをのぞいたチョコさんは、その使用履歴から真相に気づきます。大形のス魔ホは師匠のお下がり。しかも魔プリによって操られている人の中に大形も入っていた。ということは、自分とギュービッドを騙したのは暗御留燃阿であると。

悪役の暗御留燃阿ではなく、しっかり更生した暗御留燃阿が昔のようにチョコやギュービッドを罠にかける、というのもよかったです。弟子のために6年生の魂を犠牲にする、その役目をチョコにすべて押しつけるというのは冷酷な選択です。だけどそれは「反省しきれていないから」「悪に支配されているから」の行動ではないと思います。善悪の話ではなく、もともと目的のために他を切り捨てる判断ができる人なんだと。すごく彼女らしくて、黒魔女の”性”というものも感じられて、オタクは嬉しかったです。

実際、暗御留燃阿は改心しましたし「いい人になった」ともいわれてきました。でも全貌を知ったチョコが「なんて頭が良くてひきょうなやり方なんだ」と反応していたように、それは必ずしも「チョコが考えるようないい人になった」ということではない、ということがわかる気がします。

改心しようとしまいと、暗御留燃阿にもチョコたちとは違う独自の思考回路や価値観があるはずです。特にギュービッドとは明らかに対照的なキャラですし、仲間になってもその「違う」部分は持ちつづけてほしかったので、今回の展開は嬉しいです。

卒業試験直前も、ギュービッドはチョコに「不合格になってもいいんだぜ」と言い、暗御留燃阿は大形に「絶対に合格するわ!」と言いました。どちらも弟子を思ってることは同じでも、言動が正反対になるのがこの二人らしくて萌えました。

前巻「インストラクターはなにをおいても弟子を助けるもの」というセリフがありました。ギュービッドにとって「なにをおいても」というのは「自分がどんなつらい目にあっても」みたいな自己犠牲系を指すのでしょうが、暗御留燃阿にとっては「どんな非情な手段をつかっても」という意味だ、というのも示されておもしろかったです。

 

ほろ苦いラストシーン

6年生の魂が抜かれるのを阻止したいチョコ。そのために選んだのは、自分と大形が恋に落ちることで魔界を追放され、卒業試験自体を止めることでした。それはつまり、ギュービッドたちともう会えなくなることを意味します。

ス魔ホに入っている「カップリング」魔プリ。これで好きな人の写真をとるとたちまち両思いになれる、というLOVEな代物です。6-1を救うため、魔プリを起動して大形に向けるチョコ。画面に映った大形の美しい顔を見て、泣きながらシャッターを切ります。

そのとき、ス魔ホにメッセージが。「5110(=ファイト)」。ギュービッドからでした。

京チョコが結ばれるという、ドラマチックでロマンチックなファン待望のシーンを、ギュービッドとの別れと引きかえにもってくる、という石崎先生のセンスに痺れました。ここで大形の美形描写が入ってくるのもキュッとなりますね。ほろ苦くて黒魔女さんらしくてすごい好きです。

また、ギュービッドとチョコの絆も感じて、それが逆に切なかったです。

最後の「5110」メッセージからすると、ギュービッドは弟子の行動が全て分かっていたんじゃないかと思います。直前に「試験に失敗してもいいが、誰かを悲しませるようなことはするな」と言ってました。魔界から追放されて別れることになってでも、チョコが6-1を救うのがギュービッドにとって本望だったんじゃないかと。

ギュービッドはチョコが「カッコ良く失敗しろ」という言葉を受け止めて行動してくれると信じてたし、チョコもその意図を全て理解して「カップリング」を使った。お互いに対する信頼を感じます。その結果別れることになる、というのが胸が締め付けられますね。

「5110」メッセージに対して「おまえのやってることは、全部お見通しだ!」と叫ぶチョコ。このセリフは巻の前半、ギュービッドがチョコに対していつものおふざけシーンのような軽いノリで言っていました。それをラストシーンでこんなに切ない形で回収するというのにも感動しました。

「5510」が別れの台詞っていうのも重々しくなくてギュービッドっぽいです。

巻全体を通して卒業試験に対する迷いを散々書いて、楽しい修行シーンを通してチョコのギュービッドへの思いも書いて、最後はチョコの決断でギュービッドと別れる。すごい美しい流れで、ぐさっときました……。

 

次巻のなぞ

気になるのは、暗御留燃阿の思惑とは別に、大形が何か考えているのではないか、ということです。いくつか意味深な描写がありました。

・桜里おばあさんの「大形の心に鬼が住み着いている」という発言

・6-1のスマホ講習のシーンで、チョコがスマホ持ってることを知ってたのはなぜか

・卒業式練習のシーンで意味ありげな表情で見てきたのはなぜか

・告板アートを提案したのは思い出作り以外の意図があるのか

・チョコと大形は告板アートに何をかいたのか

また、卒業式で慣用校長が大形に送った「死んじゃったものは、しかたないわ。このりすは、そのうち土になるでしょ。やがて、そこから木が生えて、あらたなりすたちがはねまわるのよ。それでもあんたは、かなしいことだと思う?」という言葉も意味深です。

私は、実は校長を暗御留燃阿が操っていて、「6-1は犠牲になるけどその分大形が黒魔法使いとして強くなれる」というメッセージを伝えている(死んじゃったもの=6年生の魂、そこから木が生えて〜=大形の未来、と読み替えて)のかと思ったんですが……

それから、左端さんはまた関わってくるのか? ギュービッドが春休みもチョコをしごかないと、のような発言をしていたのは何か意味あるのか? なども気になります。

次巻も楽しみです!