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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る‼︎】『魔女学校物語』2巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

第1話 料理当番事件

あらすじ

王立魔女学校の一年生は入学後、2週間ずつ2部屋ごとに全校生徒の食事を作る当番が割り当てられます。桃花たちは、ライバルのビルトたちと一緒にご飯を作ることに。料理コンテストでの優勝経験もあるビルトに負けていられないと、鼻息を荒くするマカズキンたち。ティアーが自宅から持ち込んだ超高級調味料とレシピ本を使って、「おいしくて、先生や生徒から感謝される料理」を作りますが……。

 

ギュービッド世代が掘り下げられる

学生時代のギュービッド様たちの様子がかなり描かれた第1話。『黒魔女さんが通る』本編のファンとしても嬉しい限りでした。

お料理当番として、ガマンベールチーズ入り早死ライスを作る桃花たち。工夫を凝らした料理を暗御留燃阿先輩に褒めてもらって舞い上がります。

そんなあこがれの先輩にほめられるなんて……。

きっと、「地獄にも落ちる気持ち」っていうのは、こういうことなのね……。

石崎洋司『魔女学校物語 お料理当番事件』(2016)p54

超絶優等生のうえに、サバトの時の高等女司祭姿には「一年生全員、うっとりとしてしまった」ほどの美貌の持ち主の暗御留燃阿先輩。早死ライスは絶賛してくれますが、一緒に出したチキンスープの方は後味が若干苦かったとやや厳しい評価。このスープの苦味は後々の伏線になります。キャラブックでグルメという設定が加えられていましたが、実際味覚の鋭さは確かなようです。

ちなみに、一緒にいたギュービッド先輩はむしろその苦味が気に入った様子。この好みのちがいがそれぞれらしくて好きです。彼女たちは二人部屋なんですかね。

 

アクは「悪」?

チキンライスの苦味の正体は、ティアーがとり忘れた「アク」。魔界の人が「アク」入りの食べ物を口にすると、「アク」が「悪」になり、いろいろな悪さをするようになるのです。

そのせいで授業中にあくびをしたり、悪趣味なアクセサリーを見せびらかしあったりするようになってしまった生徒たち。なんと、高等女司祭の暗御留燃阿先輩ですら、初代校長像の腕でアクロバットをするギュービッドを見て大喜びしています。このシーンはイラストがついているのですが(p63)わたしは暗御留燃阿オタなので彼女の制服姿が見れたのがとっても嬉しかったです! 

大昔、公式ホームページにかつてあった『Q&Aの小部屋』にて、「(無印)3巻2話で学生時代のギュービッドと暗御留燃阿が着てる服はなんですか?」という質問に対して、石崎先生が「王立魔女学校指定のコートで、その下は(無印)8巻で描かれた制服です。ところで、暗御留燃阿があの制服を着ているところ、見てみたいと思いませんか?」と回答されていたのですが、約10年の時を超えてようやく見れました!

あまりの混乱ぶりに禁足令を発動させる教師たち。禁足令とは先生専門の黒魔法で、生徒たちを有無を言わさず部屋の中に閉じ込めておくことができるみたいです。一列に並んで呪文を唱える先生たち、強そうでかっこよかったです。

結局ブラヴァツキー先生のひらめきによって原因が発覚し、桃花たちはアク抜きの料理を作らされる羽目に。ところが生徒たちの「アク」はなかなか抜けませんでした、なぜなら、早死ライスに入れた「ガマンベール・チーズ」には、「食べると我慢強くなる」という効用があり、体内のアクまで我慢強くなってしまったから……という、おあとがよろしいお話でした。

 

 

第2話 そうじ洗濯当番事件

あらすじ

ソーウィン間近の王立魔女学校。桃花たちはそうじ洗濯当番として、井戸で毎朝洗濯物を洗っています。

そんななか、桃花はティアーから、ハロウィーン・ナイトクルーラーという、大昔、国王の離宮に現れた不思議な人物についてきかされます。さらに他の生徒から、「ソーウィンの日、生徒がサバトに出かけている間に、寄宿舎でぬきうちの持ち物検査が行われている」という話を聞く桃花たち。洗濯当番として井戸に行くついでに、校則違反のものを隠しておいてくれないかと頼まれます。先輩たちの目を盗みつつ井戸の中に隠そうとする桃花たちですが、そこにはすでにたくさんのものが隠されていて……。

 

ロマンチックで青春っぽいお話

校則違反の品々を井戸の中に隠す桃花たち。ヘアアイロン、お菓子、ス魔ホ、漫画……。校則が厳しい王立魔女学校ですが、みんな先生の目を盗んでいろいろなものを持ち込んでいるんですねぇ。なかでも、タニヤの「賞状の筒の中にヘアアイロンを隠す」という技は実際にやってる子がいそうで笑いました。

第2話は学校に代々伝わる真偽不明の噂話という、すごく青春感のあるテーマでした。井戸の内側の釘に無数の袋がかけられているのを目撃するシーンがよかったです。メリュジーヌは「いまではあの話を信じる子も減った」と言っていましたが、ふだんは信じていないふりをしていても、みんなどこか否定しきることはできないというのが、あの袋の山に現れている気がしました。

ソーウィンの後、桃花はメリュジーヌから噂の真相を聞きます。若い頃、大事な手紙を井戸の中に隠しているのを目撃された先生。とっさに、「ソーウィンの晩に、その人にとって一番大事なものを奪う悪霊が出る」と話し、それが形を変えて今でも残っているそうです。ちなみにそのとき隠そうとしたのは若かりし頃、悪霊の国で共に戦った騎士・ゴンサロからの手紙。『黒魔女の騎士ギューバッド』に出てくる人物です。「男のように美しく、女のように力強かった」「男のように荒々しく、女のようにうるわしかった」と評されていましたが、ゴンサロは女性として生まれながら男性として騎士団に仕えていた人なので、そのことかなと思います。

といっても、『黒魔女の騎士ギューバッド』でも手紙の詳細は明らかになっていないし、なによりこのゴンサロ評にはなみなみならぬこだわりを感じるので、どこかでまた掘り下げられるかもしれません。

 

ハロウィーン・ナイトクルーラーのなぞ

 ハロウィーン・ナイトクルーラーとは、大昔、ソーウィンの晩に国王の離宮に現れ、若い女性たちの恋文を盗んで去っていったという伝説上の人物です。その後、離宮は使われなくなり、火の国王立魔女学校に姿を変えたそうです。

 メリュジーヌによれば、ハロウィーン・ナイトクルーラーがソーウィンの日に恋愛の証拠をさがしまわっているのは作り話ではなく、本当のことだとか。ちょっと信じられない話ですが、このシーンの先生が「でもたしかにいるんだ」と妙に確信に満ちているのが気になります。しかもこの件は門外不出で、しつけ協会のなかでも限られた黒魔女たちと歴代の王立魔女学校校長にしか伝えられていないそうです。なにか秘密がありそうですね。今後の展開に期待です。

 

 

第3話 ホームシックはつらいよ

あらすじ

冬休み前の王立魔女学校。久々に故郷に帰れると浮かれている生徒たち。汽車賃がなく帰郷できない桃花は、母親からの手紙を読み返して寂しさを感じています。ひとり回廊を歩いていると、エレオノーラ先輩に呼び止められる桃花。話をしているうちに、先輩も一回も里帰りしていないことを知ります。そのときの様子から、彼女がホームシックになっているのではないかと思った桃花たちは、あの手この手で先輩の故郷についての情報を集めます。やがて、エレオノーラの同郷の人物から詳しい事情をきいた彼女たちは、ある考えを思いつき……。

 

エレオノーラ先輩掘り下げ回

エレオノーラ先輩の秘密

桃花たちの学年の生活監督官・エレオノーラ先輩。厳しく、感情をあまり表に出さない先輩ですが、第3話では彼女の知られざる一面が明らかになります。

母親からの手紙を読み返して恋しがる桃花。たまたまエレオノーラ先輩と出くわします。先輩は、桃花が実家から送ってもらったイヤーマフラーに触れ、「いいなぁ、うらやましいなぁ」と呟くのです。そして、自分も入学以来一度も帰郷していないし、これからもそうだろうと語ります。

このシーン、「うらやましい」と言ってしまうところはもちろんなんですが、言外にも先輩の望郷の思いや優しさがにじんでいていいです。桃花の手紙からシルバーパーチの葉が落ちたのを見て故郷について聞きたがったり、話を聞くと何度もうなずいていたり……。うっかり本音を漏らしてしまったのも、桃花が実家を恋しがっているのが自分と重なったからでしょう。詳細を尋ねられると言葉を濁し、あくまで生活監督官と後輩としての距離を保とうとするのもエレオノーラらしくていいです。

ちなみに、このとき彼女が濁した故郷に帰れない理由とは、祖母から「卒業するまで帰らず勉強に励め。生活監督官と高等女司祭になり、トップで卒業しろ」と指導されているから。おばあさんは王立魔女学校の出身で、教師をしていたこともあるそうです。そして、「校長になる」という自分が果たせなかった夢を孫に託しているのだとか。なんだか業を感じる話ですね。

 

先輩後輩の絆

エレオノーラ先輩のホームシックを解決するためにあれこれ考える桃花たち。最初の作戦は、学校のパソコンに魔カイプ(スカイプみたいなもの)をダウンロードし、先輩の実家を探り当ててそちらでも魔カイプをいれてもらう、というもの。ところがエレオノーラの実家を誰も知らないという事態が発生したうえに、校則違反として魔カイプを削除されてしまい、あえなく失敗。先輩はともかく、同級生ですら実家を知らないってすごいですね。

2番目の作戦は、魔女学校に出入りするワイン業者のシェリルの話を聞いて思いついたもの。彼はエレオノーラと同郷で旧知の仲なのです。シェリルから、故郷・ヘレスの風景の美しさや、先輩がなついていたというじいやとばあやの話を聞いた桃花たちは、図書館の部屋野先生の協力のもと、それをセット魔法で再現することにします。内容は、じいやとばあやのちょっとした痴話げんか。台本を手がけたのはマカズキンですが、ばあやに言い負かされそうになるじいやの様子が妙にリアルで、さすが作家志望だなと感じさせます。

じいやのデタラメ話を見抜くため、犬に真相を聞いてみようというばあや。そこでなんと先輩が劇に参加し、ワンニャンプリター魔法を発動! ちゃんとアドリブにも答えるファイヤーナイト号偉いです。さらにマカズキンもノリノリでアドリブセリフを言い、非常に楽しい雰囲気に。先輩も今まで見たことがないくらいうれしそうな表情をしています。

桃花たちが変身したじいや・ばあやに、「下級生に慕われていることが、なによりのよろこびです」と伝えるエレオノーラ先輩。桃花たちの思いをしっかり受け止めてくれたようです。厳しい学校生活の中でも、後輩の存在を支えにして頑張ってくれてたんですねぇ。普段クールで威厳がある先輩なだけに、この発言は感動的でした。

 

 

全体を通して

桃花やフォカロルの二人に焦点が当たっていた 前巻に比べると、先輩方の出番が多い巻だったと思います。とくにエレオノーラ先輩はがっつり掘り下げられましたし。第1話は好きなキャラ大活躍で個人的にも嬉しく、第2話はちょっと不思議な雰囲気が漂っていて面白かったです。

   

 

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