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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る‼︎】『魔女学校物語』1巻をふりかえる【桃花外伝感想】

『魔女学校物語』とは

チョコの妹弟子、桃花・ブロッサムを主人公にした『黒魔女さんが通る‼︎』シリーズの外伝。公式ホームページで行われた「あの人が主人公のお話を読みたい!」の読者アンケートにて見事1位(1076票)を獲得し、書かれたお話です。内容は桃花ちゃんの学生時代の出来事について。本編ではしっかりもので頼りになる彼女の、まだまだ未熟だった頃の姿が描かれます。個性豊かなルームメイトや、学生時代のギュービッド様たちの、今とは少し違うようすも楽しめます!

2018年12月に國學院大学で行われた講演会によると、『魔女学校物語』は石崎先生流少女小説らしいです。「王立魔女学校」という閉ざされた空間を舞台にしているからか、そこはかとなく夢のような雰囲気が漂っている気がします。

 

 

第1話

あらすじ

火の国王立魔女学校に入学した17歳の桃花・ブロッサム。田舎から上京してきた桃花にとって、お嬢様ぞろいの王立魔女学校は戸惑うことばかり。寄宿舎の同室の仲間も、小説家志望のマカズキン、グラシュティグ会長のご令嬢で世間知らずなティアーとなかなかクセが強い。それなのに部屋の責任者にまで任命され、いっぱいいっぱいの日々。ルームメイトの協力やメリュジーヌ校長の激励の言葉で元気を取り戻しますが、やっと迎えた外出日、私立ブラックウィッチ学園の生徒にカラまれてしまい……。

 

桃花の成長物語

桃花ちゃんの人知れぬ苦労

お嬢様学校の王立魔女学校。しかし桃花は特別推薦で入学した田舎出身の子。育ってきた環境も実力も何もかもちがう生徒の中に、一人放り込まれてしまった焦りや不安がとてもリアルで、心が痛いです……。特に、マカズキンに「桃花はどこかの地方の伯爵の子?」と訊かれて(彼女は当然桃花も自分と同じく貴族出身だと思っている)、平民なのに場違いなところに来てしまったと感じ、お母さんが貧しいなりに一生懸命作ってくれたワンピースを恥ずかしいと思ってしまうシーンはなかなかつらかったです。

さらに実力も全然足りない桃花。でもそれは生まれ育った環境のため。貴族のお嬢様たちは、幼い頃から執事や召使いたちが魔草を使うのを見ていたり、黒魔法を使ってゲームをしたり、育っていく過程で素養を身につけているのです。だけど桃花は平民出身なので、みんなが当たり前に知っていることが少しもわからず、焦っているうちに先生の話を聞き逃して怒られてしまうという負のスパイラル。本編ではなんでもそつなくこなせるように見える桃花ちゃんですが、学生時代はこんな苦労があったんですねぇ……。

 

 メリュジーヌ校長の励まし

キャラブックで「夢はメリュジーヌ先生のような校長になること」と語っていた桃花ちゃんですが、彼女がメリュジーヌを尊敬するようになったきっかけが描かれます。

魔力の少ない桃花を気遣って、ルームメイトのマカズキンとティアーはワイン蔵にしのび込み、魔力増強ワインを飲ませようとします。何杯か飲んでいるうちに、すっかり酔っぱらってしまう桃花。実力が足りない自分を入学させたメリュジーヌ先生にだんだん腹が立ってきて、校長室に押しかけます。

呪文で酔いを覚ましたあと、「補おうと努力するきっかけになるなら、欠点も長所に変わる」「大切なのは、自分に合った努力ができること」という言葉をかけるメリュジーヌ先生。そういえば彼女も魔妖精で、学生時代は肩身の狭い思いをしたこともあるのでした。低い身分ゆえになかなか自信を持てないでいる桃花に、かつての自分の姿を重ねているのかもしれません。

この事件をきっかけに前向きな心を取り戻した桃花。メリュジーヌ先生のアドバイスは欠点は欠点として受けいれることの大切さから始まっているのがいいです。単なる根性論とは違いますよね。でもこういうアドバイスはもっと早くにしてあげてもいいと思うよ校長。

 

個性豊かなルームメイト&先輩たち

三人一組で班になり、ともに寄宿舎生活を送る王立魔女学校。桃花ちゃんのルームメイトは小説家志望のマカズキンと、グラシュティグ会長の娘で生粋のお嬢様のティアー。本編で桃花がたびたび口にする「おっくれてるぅ!」は、もともとこの子の口癖です。

ティアーたちの学年の生活監督官(監視役みたいなもの)は本編20巻でも出てきた2年生のエレオノーラ先輩。背が高く、髪を刈り上げていて、一見男性のようにも見えます。この外見めっちゃ黒魔女さんっぽくて好きです。まだ生活監督官になったばかりなのに、入学式で容赦なく新入生に校訓1000回書きとりの罰を与えられるあたり、肝の座り方が半端じゃないです。あと、第2話で喧嘩中のマカズキンとビルトを鶴の一声で黙らせたのかっこいいです!

そのほか、悪霊降霊術のブラヴァツキー先生、魔界薬草学のヒルデガルト先生なども登場。彼女たちの名前はオカルトの歴史の重要人物からきているのでしょうね。魔界っぽくていいです。

 

学生時代のギュービッドたち

それから、忘れてはいけないのが学生時代のギュービッド様たちの様子が描かれることです!

本編で散々書かれている通り、学生時代は筋金入りの不良だったギュービッド様。生活態度も成績も最低なので下級生からの信頼は0。ある程度予想はしていましたが、王立魔女学校伝統の「卒業時に先輩から制服の一部をもらう」というイベントですら「ギュービッド先輩のだけはいらない」と言われているのはちょっとショックでした。本編よりも哀愁があります。

ですがやっぱり黒魔法の才能はピカイチだし、さりげない優しさが光ります。実は、桃花がいつも持っているダイナマイトはギュービッドにもらったもの。桃花がブラックウィッチ学園の生徒たちと黒死呪文勝負したことを聞きつけ、その短気さをコントロールできるようにと用意してくれたのです。

不良黒魔女として有名な先輩だけど、なんていい人なの……と心を動かされる桃花。もしかしたらギュービッドも、ほとんどの後輩が自分を怖がっている中で、(正体を知らなかったからとはいえ)マーボンのときに桃花があまり警戒しないで話してくれたのが嬉しかったのかもしれないです。

それと印象的なのが、暗御留燃阿が後輩たちからモテモテだったことです。生活監督官&高等女司祭をつとめた超絶優等生かつ絶世の美女なので憧れの的になるのも当たり前ですが、制服が取り合いになっていたり、後輩から「きれいで優等生」と明言されているのを読むと暗御留燃阿オタとしてはニヤニヤしちゃいます。この後輩たちとはうまい酒が飲めそう。

また、この外伝ではほのぼのした雰囲気で書かれていたギュービッド世代の卒業式ですが、この前後に彼女たちの学年で何が起こっていたのかを考えるとなかなかズシンとくるものがありますねー。

 

 

第2話 

あらすじ

王立魔女学校の二年生になった桃花たち。パジョー先生の授業では、一年間かけて「つながりの手鏡」にルームメイトの様子をうつせるようになるという課題が与えられます。一方、生活面でも大きな変化が。なんと桃花が生活監督官に指名されたのです! ルームメイトたちにお祝いされたのもつかの間、問題児の新入生・ミルフィーユに手を焼く日々。外出日、ミルフィーユがブラックウィッチ学園の生徒たちと口論になっているのを目撃した桃花は、うっかり黒死呪文をとなえてしまい……。

 

生活監督官桃花

二年生になった桃花ちゃん。なんと生活監督官に選ばれます。学年トップではないし、貴族でもないのに自分でいいのかと悩む桃花に、「一年間で最も成績が伸びたのはお前だから」と話すメリュジーヌ。退職したエクソノーム先生も桃花の頑張りを認めていたそうです。彼は三年生の卒業実習の担当なので、直接の関わりはないはずですが、それでも見てくれていたなんていい先生ですね。(ちなみにエクソノームが退職した経緯については本編無印7巻で明かされています。生徒に手を出すのダメ絶対)

生活監督官として入学式で話をする桃花。ど緊張のなか、さっそくミルフィーユに突っかかられるシーンは読んでてハラハラしました。

というか、ミルフィーユはなかなか策士。校長の孫なのに特別扱いされなかったのが気に入らなかったのか、なにかと桃花のアラさがしをしてきます。ティアーがつながりの手鏡を飾りたてているのを見て、自分もわざと派手なブローチを付けておき、指摘された時に「ティアー先輩には注意しないんですか?」と反論するところとか、リアルな性格の悪さを感じさせて良いです。

半年間桃花を困らせてばかりだった彼女ですが、ブラックウィッチ学園の生徒と喧嘩になったところを助けられてから若干丸くなり、仮面舞踏会でマカズキンがピンチになった時は協力してくれました。これは桃花ちゃんが苦労しながらも後輩と向き合ってきたからこそですね。

 

ルームメイトとの絆

新しく着任したパジョー先生から、「つながりの手鏡」を育てるという課題を与えられる桃花たち。一見ただの手鏡ですが、ルームメイトとの信頼関係を築いていくうちに相手の様子が映るようになり、ピンチの時には何も映らなくなるそうです。むしろピンチの時こそ映して欲しいですけどね。

パジョー先生は元凄腕インストラクター黒魔女。キャラクターデザインめっちゃ好きです。お顔はがっちりしていて黒いマントもつけており、あんまり女女していない雰囲気。ですが男っぽいとかガサツというわけではなく、手の爪にはまあまあ濃いめのマニキュアを塗っているし、口紅もつけているようで、おしゃれなデザインだと思いました。初登場はこの回ですが、なぜか第一話でもイラストだけ登場しています。

ティアーの招待で仮面舞踏会にむかう桃花たち。会場のプラチナ城に童話「青ひげ」へのオマージュが仕込まれていたり、どんな衣装を着たのかがやたら詳細に書かれていたり(アンヌ・ヴァレリー・アッシュの白レースのビスチエドレス、クリスチャン・ルブタンのハイヒール、純白のベネチアンマスク)するところ、こだわりを感じて好きです。

桃花がはじめてのダンスに戸惑っている間に、私立ブラックウィッチ学園の生徒たちに誘拐されてしまうマカズキン。実は彼女たちは数ヶ月前、ミルフィーユと喧嘩をしていた子たち。桃花と黒死呪文勝負をしたせいで落第になってしまい、復讐の機会をうかがっていたのです。

マカズキンを助けて学校に帰った後、舞踏会の主催者がレオナール伯爵だということが明らかになります。ブラックウィッチ学園理事長の彼が事件に関わっていたとなると面倒なことになるから、警察には通報しないというメリュジーヌ。詳細を聞いてもはぐらかされてしまいます。レオナールといえば、本編無印7巻の悪役で、王立魔女学校を潰そうとした人物ですが、それ以前から王立魔女学校つぶしの兆候はあったということでしょうかね。

 

 

全体を通して

桃花ちゃんファンはもちろん、魔界サイドのファンは読んで損はない『魔女学校物語』。一巻は魔力が少なくて自信もなかった桃花の成長物語的な側面が強いお話でした。ハンデを抱えた主人公がさまざまな苦労を乗り越えて成長していく姿にはストレートに励まされます。魔女学校物語は本編への理解もより深まるし、何より超面白いのでぜひ読んでほしいです。

 

 

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