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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る】事実上の第1話⁉︎面白い話が読みたい!青龍編を振り返る

面白い話が読みたい!青龍編とは

「黒魔女さんが通る‼︎」というタイトルの作品がはじめて載った短編集。「黒魔女さん」だけではなく、5人の作家さんたちの作品からなる。

青龍編の「黒魔女さんが通る‼︎」では、ギュービッドがチョコのもとに来るきっかけとなった、「こっくりさんでショウくんの好きな人を当てようとする事件」が描かれる。これをスルーしていたとはやったぜ一生の不覚。なので今その感想を書こうと思います。

 

「黒魔女さん」以外の石崎洋司作品と共通する雰囲気がある

石崎先生の作品って、結構シリアスなのが多いですよね。すごい暴力的なシーンがあるわけではないし、主人公も中流家庭の普通の子が多いんだけど、そういう一見普通の子が抱えがちな「心の闇」がよく描かれるイメージ。

あと、大人から見たら「普通の子」でも同年齢の子供たちからすると「ちょっと浮いてる子」っているじゃないですか。まさにチョコさんもそうだけど。周りとの微妙な差異に苦しむ登場人物が多い。そしてそんな「孤独なものどうしの絆」がテーマになってる気がする。

石崎先生はかつて「世界のどこかで戦いが起きていて、世界のどこかで飢えている者がある。だからといって『いまここにいる自分の本音』を聞いてほしい、『あなたもそうなの、わたしもなの』という『連帯』を欲するのもまた『世界』だと思う。もしかしたら、それは『価値の低い』ものかもしれないけれど、さりとて、切り捨てていいものでもない」*1と書いたことがある。石崎作品のキャラの「絆」も往々にしてこの「連帯」と似た質のものだと思う。例えば『黒魔女さん』でも、10巻で出てきた日芳向日葵やソンセミーシャは一人でいるのが好きだったりファッションに興味がないキャラで、同じ性質を持つチョコだからこそ彼女らと心を通わせることができたのだし。

「青龍編」は、「いじめ(しかもメグへの!)」という内容なのもあって、「孤独」と「(チョコとメグの)連帯、共感」がかなり色濃く描かれてるなと思いました。 そもそも最初に出てきた魔法が「孤立魔法」だもんね。そして「『急に』という漢字も書けず、『舞』を『無』と書いてしまうメグが、とってもいとおしい」(p165)というチョコ……。こういう共感こそが、『黒魔女さん』キャラの関係性の根底にあるものだと私は思います!

 

藤田先生のイラストがめちゃくちゃかっこいい

p131の表紙、かっこよすぎるだろ……。

オーバーオールに手を突っ込んで不敵な笑みを浮かべるチョコ、腰に手を当てて目線をやや外しているメグ。斜め上からのカメラワーク(?)もスタイリッシュだし。背景の黒皮コートも映画の広告みたいにかっこいい。

そう、『黒魔女さん』って可愛いというよりかっこいい作品なんだよなあ。

そしてp163にはすでに灯子ちゃんの姿が!隣の席の男子は獅子村くんにも似てるけどどっちかというと与那国くんっぽいな。横綱は本編より強そうです。あとp182にショウくんのビビり顔が載ってますが、これはレアですね。ショウくんは本編よりややチャラ男。

 

全体を通して

『黒魔女さん』の始まりのお話。青龍編が出たのが2005年なんですが、それから約15年も愛され続けているのだからすごいですよね。つい先日も6-1編の08巻が出ましたが、「青龍編」からは今の展開を予想することはできない。

 

 

 

*1:石崎洋司(2010) 『シスターフッドの物語』日本文芸家協会編『児童文芸』56(2)2010.4・5 p43