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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る‼︎】6巻を振り返る【感想】

五巻の感想はこちら

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

第一話

あらすじ

遠足で山登りに行く5−1。心おだやかに過ごしたいチョコは、比較的静かそうな霧月姫香さん、与那国治樹くん、要陸くん、向井里鳴ちゃんたちと一緒に行動することにします。

無事山頂にたどり着く5−1。しかし、姫香さんと「ヘンデルとグレーテル」の話をしていたはずの里鳴ちゃんの姿が見えなくなっていることに気づきます。姫香さんが道端に落としていたお菓子を、里鳴ちゃんが拾い食いしていたという証言を得て、捜索を開始するチョコたちですが……。

 

5-1は遠足も大騒ぎ

霧月姫香さん、与那国治樹くん、要陸くん、向井里鳴ちゃんの初登場回です。

比久井山へ遠足に行く 5-1。もちろん電車に乗っている時から学級崩壊レベルの大騒ぎです。巻き込まれたくないチョコは、きちんと公共ルールを守って座っていた上記の四人についていくことにします。

結局彼らも個性が豊かすぎる面々でしたが、チョコの目には「おとなしそうな人たち」と映っていたのが今となっては意外で面白いです。5-1は外見からして派手な人や騒ぐタイプの人が多いので、いつもドレスを着ている姫香さんはともかく、他の三人はふつうそうに見えるかもしれません。

与那国くんの口からあふれ出すITの知識に、「こういう子、あたし、めっちゃ苦手。ていうか、こわい……。」とあとずさるチョコさん。この反応、なぜかとても彼女らしいなと思いました。いかにも頭が良さそうな人がクールな表情でマニアックな話をしてるのって、目からの情報と耳からの情報にギャップがあってちょっとびっくりしますよね。話の内容も高度でビビっちゃうのもわかります。

姫香さんはメルヘン女王。p49のイラストからすると、山登りだというのにかなり本格的なドレスを着ていたようです。チョコには「白い幽体が浮遊しているようにしかみえない」と言われていましたが、そのプロ根性(?)はあっぱれです。あと小説教室でも言及がありましたが、「ぐりんぐりんの」縦ロールという表現、やっぱりいいですね。気合い入れてヘアセットしてる感じが出てます。長身設定も謎の納得感があります。

要陸くんはかわいい外見をしていますが、与那国くんに「迷探偵」と言われて本気めに怒ってたり、姫香さんのポップコーンの話を鼻で笑ったり、見かけによらずプライドが高そうです。妙に奥行きがあるキャラです。

山の頂上へ辿り着くも、お菓子大好き少女・向井里鳴ちゃんがいないことに気づくみなさん。小柄な彼女をナチュラルに妖精扱いする松岡先生と舞ちゃんが面白いです。それにしても松岡先生、生徒の点呼をとりわすれるって、ノリが軽いにもほどがありますね(笑)。

 

バーバ・ヤーガとの勝負

姫香さんが山道に落としていたポップコーンをたどって、ボロボロの小屋にたどり着くチョコたち。純和風でお寺のお堂のような外見でしたが、メルヘン女王・姫香さんは「ヘンデルとグレーテル」の魔女の家だと言い張ります。中に入ると黒い麻なわと鬼のお面、「9の1」と書かれた紙が置いてあり、それをヒントになぞなぞを解くことになるみんな。答えがわかってにんまりと顔を見合わせる与那国くんと要陸くん、頭がきれるもの同士の共闘感があります。

結局、里鳴ちゃんは人食い魔女・「バーバ・ヤーガ」にとらわれていることが明らかに。チョコはギュービッドの協力のもと、彼女と対決することになります。p67のお堂の屋根の上であぐらをかいているギュービッド様、怪しげな笑みがめちゃくちゃかっこいいです。『黒魔女さん』全体の中でもかなり好きな挿絵です。

バーバ・ヤーガとサイコロ振りで戦うチョコさん。サイコロを2つ振って、でた目の合計が大きい方が勝ちというルールです。運気上昇魔法で6の目を出し続けるつもりのバーバ・ヤーガに対し、魔力が少ないチョコさんは、運気上昇魔法と真っ二つ魔法の合わせ技で挑みます。実はこの作戦はギュービッドが提案したもの。相手の考えの裏をかくの、ギュービッドの切れ者なところが出ています。

 

 

第二話

あらすじ

飛行機公園に行くチョコと桃花。5−1の女子が如月星羅ちゃんの占いに行列を作っている様子を目撃します。来週のクラスの様子について、「女子大生 土星のみこみ めちゃくちゃに」と意味深な予言をする星羅ちゃん。

翌週、教育実習生の清井ほたるがやってきて、男子たちはその可愛らしさに骨抜きにされます。しかし彼女はとても勉強が苦手で授業はめちゃくちゃ。その様子が保護者にも伝わり、授業参観のあとの「親子で給食会」にて、清井先生を懲らしめる計画が進行してしまい……。

 

教育実習生・清井ほたる

5-1にやってきた教育実習生の清井ほたる先生。「ものすごーくかわいい」先生に、男子たち&松岡先生はメロメロになります。

彼女はこのお話でしか登場していませんが、初期キャラらしくちょっとリアルなところがあって、外見描写も大変丁寧。メグと女子トークをしている時に素のギャルっぽい喋り方になるところとか、モテテクニックの細かさとか、女子の間で嫌われていることを敏感に感じ取って星羅ちゃんたちに話しかけにくるところとか、一つ一つの言動から彼女が小学生時代どんな子だったのかとかまでありありと想像できる。先生と距離を置いていた女子たちが、彼女の等身大の人柄に触れて親しみを覚え、すっかり友達っぽくなっているところもやたらリアルで『黒魔女さん』だなあという感じです。星座が蟹座なのすらしっくりきているのがすごいです。

ところがその授業はかなーりおバカ。九九すら怪しかったり、簡単な漢字が読めなかったり、実習を無事に終えられても教員免許試験には絶対に受からなそうな感じです。でも実はそれはケーキの中に入っていた悪魔情を食べてしまったから。まあ普通に考えて、九九もできないのに大学生になれるわけがないしましてや理系の専攻に進めるわけがないですね。

 

大騒ぎの授業参観

ある日チョコが帰宅すると、メグのママが家に上がりこんでチョコママと大形ママに翌日の授業参観について話していました。聞けば子供たちにめちゃくちゃなことを教える先生を懲らしめる方法を考えているのだとか。話の出所は舞ちゃんか百合ちゃんのママだろうということですが、この二人とメグはそこまで一蓮托生感はないのに親同士は仲がいいの、面白いですね。

そしてメグママはめっちゃ派手。メグがギャルっぽい派手さなのに対して、親の方は全身キンキラキンのスパンコールで固めたセレブっぽい派手さです。ちょっと気取っていて色気がある感じで、彼女の外見は結構好みです。舞ちゃん・百合ちゃんのママも、娘たちと似た雰囲気があって面白いです。

いよいよむかえた「親子で給食会」で行われたのは、メグママによる清井先生のファッション知識チェック。「①DCはなんの略? ②渋カジの必須アイテムを三つ挙げなさい ③オンリーショップの反対語は?」の全3問です。このお話に限ったことではないですが、石崎先生のファッション知識すごいですよねぇ。そういえば2018年に國學院で行われた講演会で、「ファッションデザイナーに興味がある」ということをおっしゃってたんですが、それを聞いた時ものすごく腑に落ちたのを思い出します。

結局、チョコとギュービッドの活躍で清井先生の体内の悪魔情が引っ張り出され、事態は一件落着しました。悪魔情が人間界に来ていたのは、「あるお方」に手紙を届けるため。これは第三話と次巻の伏線になります。

 

 

第三話

あらすじ

運動会を間近に控えた第一小。クラス対抗リレーで二組に勝てそうもないという課題を抱えていた5−1のもとに、俊足の転校生・涼風さやかがあらわれます。異常な運動能力を持つ彼女はリレーの選手に抜擢され、さらにはチョコの運気上昇魔法をものともせず、組体操の頂点決めのじゃんけんでも勝ち抜きました。

その様子を疑問に思った桃花たちが身辺調査をすると、さやかちゃんが病気の兄のために黒魔女と契約を結んでいることがあきらかに。それを知ってなぜか猛烈に怒り出すギュービッド。

そして運動会当日、チョコの前に現れたのは思いもかけない人物で……。

 

さやかちゃん登場

運動会を控え、クラス対抗リレーに苦戦している5-1。そんな彼らのもとに、運動神経抜群の転校生・涼風さやかがやってきます。彼女は5-1の救世主と称されるのですが、白い歯と爽やかな笑顔もその二つ名を裏切らない感じです。最初に教室に現れた時、扉の向こうが白い光に包まれていたのが面白かったです。

圧倒的陽の力を持ち、いつもおおらかにガハガハ笑っているさやかちゃん。ですが、不謹慎ジョークで騒ぐチョコやメグを怖い顔で睨んでいたり、組体操のピラミッドの頂点を決める時は氷のように鋭い目つきになっていたり、ちょいちょい明るいだけではないところを感じさせる場面がありました。それもそのはず、彼女は病気のお兄さんのために黒魔女と契約していたのです。

黒魔女は、人間の望みを幾つか叶え、代償としてその人間の魂を抜き取ることができます。さやかちゃんも、お兄さんの手術を成功させ、病床の兄を喜ばせるために、魂をさしだす儀式をしようと決意したのです。

しかし実はさやかちゃんは罠に嵌められていました。なんと彼女と契約している黒魔女・ラミのインストラクターは、ギュービッドのライバル・暗御留燃阿。彼女は弟子のラミにさやかちゃんの魂を抜き取らせることで、その父親のレオナール伯爵に引き立てられ、「黒魔女総監督官」に出世しようと考えていたのです。無印3巻でチョコを弟子にしそこねた後も、着実にキャリアアップを狙っていたんですね。さすが燃阿たん、決して上昇をあきらめない、できる黒魔女です。

そうとも知らず、「こんな感動的な話が、(略)病院の霊安室で語られるのというのも、『コワ泣け』って感じだし。『エロカワ』や『モテカワ』のつぎの流行語になりそう。」と能天気に感激しているチョコさん。この緩急のつけ方がテンポよくて好きだったんですよね〜。

 

すごくドラマチックだった運動会のシーン

それから一週間、妙に優しかったギュービッド。運動会当日も、「元気になる魔法」と称して「ルキウゲ・ルキウゲ・レボカーレ」と呪文をかけてくれます。

このシーン非常にいいですよねぇ。実はこの呪文は、使うと魔力剥奪の罰が与えられる禁断の契約妨害呪文。霊安室の一件でことの真相を見破ったギュービッドは、さやかちゃんを助けるために自分が犠牲になろうと決意したのです。

もちろんチョコさんはそんな思いを知りません。ですが、「運動オンチのチョコが恥をかかないために元気になる魔法をかけてやる」と言う言葉を聞いて、「ギュービッドさまって、口では意地悪なことばかりいってるけど、ほんとはやさしい黒魔女だと信じてたんだ。それが、やっとはっきりして、うれしいよ」と感激します。心から弟子が大切だからこそ本当のことを伝えられないギュービッド様。ギュービッドの嘘にころっとだまされながらも、そこに込められた優しさだけは正しく受け取っているチョコさん。切ないけど美しいシーンです。

そしてクライマックスの運動会のシーンでは、暗御留燃阿の悪役っぶりが非常に素晴らしかったです! 彼女は7巻ではセリフなし、次にしゃべる13巻は仲間になったあとなので、悪役燃阿たんは実質これで最後です。

ようやく事態の深刻さに気づき、あわててピラミッドを崩そうとするチョコさん。そんな彼女を、暗御留燃阿は来賓者用テントの中から全力で煽ります。

いよいよ魂を抜き出す儀式が始まってしまった時の、「あらあ、残念ね。儀式がはじまっちゃったわ。もう手おくれよ」という煽り、本当にムカついて素晴らしいです。このあたりまでの彼女は悪役としての”格”や”説得力”が他のどのキャラとも段違いです。ラミにとっても絶対いいインストラクターじゃなかったですよね。自分の出世のことしか頭にないので、弟子は放置プレイしてそう。

霊安室のシーンで練りに練った計画をギュービッドに一瞬で見破られているの、「暗御留燃阿はギュービッドのこういうところを恐れていたんだなぁ」と改めて感じられていいです。でもそれを止めるために、ギュービッドは危うく魔力を失うところだったんだと思うと燃阿様もなかなかやるなという気持ちです。この二人はやっぱり緊張感が漂う関係が似合いますね。

あと作戦が失敗した時に、人間界では「会長」と呼ばれてるレオナールをうっかり「伯爵」と呼んでしまったの、こんな時になんですが萌えました。「こんなこと、掟破りの『契約妨害呪文』を唱えなければできないはず! し、しかし、牢獄行きまちがいなしの禁断の黒魔法を、だれが、そして、なぜ?」というセリフも、次回予告感があって好きです(笑)。

でもこれ、暗御留燃阿の計画とレオナールの計画もズレがありますよね。本当に暗御留燃阿がチョコが考えたように動いていたとすると、彼女も結局レオナールの手の中で踊らされていたことになります。6巻から7巻の流れは裏読みがめっちゃできそうで面白いですよね。

 

 

全体を通して

第3話がかなり衝撃的ですが、第1話と2話も超面白いです。第1話は新キャラがたくさん出てきますが、みんなキャラが立ってるのがすごいと思います。あと楽焼きネタが初めて登場した回としても重要です。第2話の授業参観ネタは、6年生編に入ってからも使われているので比べてみるのも面白いかもしれません。第3話は言うまでもなく神回。この回と7巻は、『黒魔女さん』全エピソードの中でも屈指の名作っぷりを誇っています。