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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【黒魔女さんが通る‼︎】PART0を振り返る【無印感想】

この記事の続き。

krmjsnfan.hatenablog.jp

『黒魔女さんが通る‼︎』本編のプロローグ的な巻です。

 

あらすじ

王立魔女学校を卒業して1年後のギュービッドが主人公。森川の家で居候しつつ、無為に日々を送って いた彼女の元に、ある日メリュジーヌ校長から手紙が届く。聞けば、ギュービッドに、黒鳥千代子という少女のインストラクター黒魔女になってほしいのだという。立派なインストラクターになるため、千代子に変身した桃花と訓練をしようとするギュービッドだったが、そこにやり手の商人・屍が現れて……

 

見所

初めてチョコ以外のキャラクターが主人公になった巻です。チョコとギュービッドが出会う以前のあれこれも楽しいのですが、何かと意味深なキャラクターが出てきたりもして、本編が佳境に入った今読み返すとなかなか興味深いです。ちなみに、裏表紙には「ギュービッド様の機関銃攻撃の秘密(略)などが次々にあきらかに!」とありますが、そっちのほうは正直微妙だった。

 

ギュービッドパートについて

Part0はギュービッド目線で進んでいくブロックと、人間界のチョコの目線で進んでいくブロックが交互に並んでいます。ギュービッドパートのメインストーリーは伝説の「魔宝」を手に入れ、屍に人質に取られている森川瑞姫を救うというもの。こっちのほうから振り返っていきます。

 

自堕落な生活を送っていたギュービッド

学生時代は王立魔女学校一の問題児としてブイブイ言わせてたギュービッド様ですが、卒業後は同級生たちの活躍をよそに、森川の家で日がな一日ダラダラしていたみたいです。暇すぎて、会ったこともない屍のことを悪く言うなど、若干性格も歪みだしているところがリアルです。そんなギュービッドに職の斡旋をしようとする森川。現在も彼女は元同級生3人(うち一人は魔界時代の「モリカワ」に放火した人物の仲間)を居候させてますが、黒魔女なのに菩薩並みに心が広いです。

それにしても、ギュービッド様と森川が一緒に暮らしていた時期があるとは意外です。まあギュービッド自身はその詳細を知らなかったとは言っても、暗御留燃阿とは卒業直前にはなんとなく距離ができてそうですし(そのことは卒業後の進路を知らなかったことからも推測できます)、森川もちょうどお店を始めようとする時期だったみたいだから、お互いに一緒に住む人を求めてたのかもしれません。ちなみにギュービッド様は、無印4巻では森川のことを「瑞姫」と呼んでいます。たぶん登場したばかりで呼び方が定まっていなかったという大人の事情によるものですが、背景に二人で暮らしていたことがあったと思うと面白いです。

 

少ない分量で魅せてくる暗ギュー

ギュービッドの訓練のため、チョコさんに化ける桃花ちゃん。ギュービッドは正体は桃花ちゃんだとわかってるはずですが、殺されかけたスットコドッコイを思いやるチョコ(桃花)を見て「しかし、変わったやつだな。やたらにするどいつっこみを入れるかと思えば、魚一匹のために、どろだらけになって、森のなかをかけずりまわったり。」*1と言うなど、実質チョコとギュービッドの二人旅として話が進んでいきます。面白いけど、せっかくいつもと違う黒魔女さんなのだから、桃花ちゃんとギュービッドの二人旅も見てみたかったなーと思ったり。

このスットコドッコイを釣り上げるシーンのチョコ(桃花)のセリフ、「げげっ! 枯れ枝がビヨーンとのびて、ちいさな釣りざおになったよっ。左手につまんでいた松ぼっくりは、ちいさな黒いパンになってるし」*2は、無印3巻で暗御留燃阿がガラガラヘビの黒焼きパフェとフォークをトラスフォルマーレした時と同じですね。やったぜは暗御留燃阿ヲタなので嬉しかったです。さらにこのセリフを受けてのギュービッドの反応、「魔女学校時代、同級生でこれができたのは、あたしだけだったんだぜ。あの成績優秀な暗御留燃阿にだってできなかったんだから」*3もポイント高いです。これ、呪文が「暗御留燃阿ですらできなかった」からこそ自慢してるように思えるんですよね。メリュジーヌから暗御留燃阿の近況を聞いた時にも、「あいつは、もともと、頭のデキがいいもん」*4と言っていましたが、暗御留燃阿がギュービッドの「才能」を恐れていたように、ギュービッドも暗御留燃阿の成績の良さや王道の頭の良さ(?)を自分にはないものとしてリスペクトしていたんだなと思って萌えました。もちろん、暗御留燃阿がギュービッドに向けていたほどの劣等感や嫉妬みたいのはなかったと思いますが、ギュービッドの方も、彼女のことをライバルとして意識していたのだなあと。

 

魔酔いの森とデスカ

ギュービッドとチョコ(桃花)は、不思議な力を持つという5つの「魔宝」(「アホ」「バカ」「魔抜け」「御嘆虎」「スットコドッ鯉」)を探しに、魔酔いの森の奥深くまで入り込みます。そこでかつて「魔宝」の力を使って悪霊の国から森を守ったという、「デスカ」という黒魔女の話を聞きます。

いうまでもなく、「デスカ」というのはメリュジーヌやギューバッドの学生時代の担任だったデスカ先生のことです。屍によれば、彼女は何らかの理由で王立魔女学校を追放され、森に迷い込んだそうです。それ以上の詳細は不明なのですが、なんとも好奇心をくすぐられる話です。無印8巻の「魔女学校のおもひで」やギューバッド編ではバリバリの教師だったデスカ先生が、なぜ魔女学校を追放されたのか。ティカが魔界を追放になったことと関係あるのでしょうか。もしくは悪霊の国と関係あるのでしょうか。悪霊の国は謎に包まれているはずなのに、火魔人の話からするとデスカは妙に悪霊の国について詳しい気がするんですが。あと「死の門(death come on デスカ・門?)」が意味深な感じで出てきましたね。

ちなみにギューバッド編だと魔酔いの森の「デスカ」とデスカ先生は別人ということになっています。これは単に石崎先生がデスカについて突っ込む気が無くなったのか、それとも別の理由があるのか……。

 

 

チョコパートについて

チョコパートは、花咲桜樹くんの幽霊(正しくはきみえが彼に死霊化魔法をかけたもの)を成仏させるというのがメインストーリーです。

 

ギュービッドと出逢う前のチョコについて

5年生になったばかりのチョコさん。いくら一匹狼のハードボイルド小学生とはいえ、あまりにも学校の人のことを知らなくて面白いです。とくに、一年間同じクラスだったはずのショウ君の名前を知らないってなかなかすごいですね。彼は人気もあるし、否が応でも名前ぐらい覚えるんじゃないかと思いますが。Part0のサブタイは「そこにきみがいなかったころ」ですが、本編開始前のチョコの様子をあらためて書かれると、ギュービッドと師弟関係を結んだことが、チョコにいかに大きな影響を与えたのかが感じられます。

チョコの学年は3クラスあるんですね。舞ちゃん百合ちゃんは元4−1、チョコ、メグ、ショウ君、鈴木重君は元4−3。鈴木姉弟は4年生の時は別のクラスだったようですが、薫さんなしで重君がどんな感じで過ごしてたのか気になります。4年生の時の担任の「ささやきのフジさん」は面白そうなキャラですが、この巻以外出てきてないのが寂しいです。

 

きみえのなぞ

きみえちゃん。本編でも時々登場しては「残念ですね!」と言って去っていく謎キャラですが、Part0でも重要な働きをします。

ギュービッドをチョコのインストラクターにするべく、裏で色々動いていたっぽいメリュジーヌ先生。やっぱりチョコさんみたいな素質のある子を弟子にしたいインストラクター黒魔女は多いようです。きみえちゃんもその一人で、わざわざ太平洋戦争中へタイムスリップし、そこで死んだ「花咲桜樹」に死霊化魔法をかけてオカルト現象を演出する……という何とも手の込んだことをしていました。

結局春音春香によってその計画は妨害されてしまうわけですが、その後も別の弟子を見つけに行くわけではなく、ちょいちょいチョコにアドバイス(?)をしてくれますよね。どうもギュービッドたちとは直接面識がないようで、きみえちゃん自身も他の黒魔女の姿を見ると「ひゃ〜! バ、バレた〜!」と慌てて姿を消してしまいます。いろいろと裏がありそうなキャラクターで、これからの展開にも関わってくるんじゃないかなと期待しています。18巻のあとがきによると、アニメ版のDVDについてる書き下ろし小説に、彼女のことが結構載ってるらしいです。やったぜはアニメ版を秒で切った人間なのでDVDも手に入れていないですが、今後の予習のためにも買ったほうがいいですかね?

 

 

魔界にまつわるあれこれも明らかに

インストラクター黒魔女の昇進は弟子の修行の進み方できまるとか、特別な地位にいる黒魔女がインストラクターを指名してはならないとか、細かいことがいろいろ明らかになりました。

Part0はギュービッドの王立魔女学校卒業から約1年後の出来事という設定ですが、この時点で暗御留燃阿は3段になっていたようです。おそらく大形の件以降だと考えられるので、魔界の一年の間に、人間界では5年の年月が経っていることがわかります。ただ、魔界の時間と人間界の時間のスピードの違いは一定ではないらしい(12巻)ので、概に「魔界の一年=人間界の5年」とも言えませんが。

でも、この後3ヶ月間(人間界時間)で、暗御留燃阿が2段も位をあげてるの、かなりすごくないですか。

 

 

全体通して

表紙がカッコいい。シリーズ通してもかなり好きな方に入る。「そこに君がいなかったころ」というサブタイも好き。『魔女学校物語』の1巻ではあんなに自信なさげだった桃花ちゃんが堂々とした3年生になってるのも感慨深い。

 

 

 

 

*1:Part0 p157

*2:Part0 p154

*3:Part0 p154

*4:Part0 p44