黒魔女さんが通るブログ

黒魔女さんが通る‼︎ブログ

青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さんが通る】01巻を振り返る【感想】

この続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

第1話

あらすじ

六年生になったチョコ。ある日登校すると、女子からの圧倒的人気を誇っていたはずの三条ショウくんの周りに女子が一人もいないという異常事態が発生しています。舞ちゃんたちによると、木村悠一というイケメンが隣のクラスに転校してきて、人気がそちらに移っているのだとか。彼を応援する女の子たちはファンクラブまで作っており、アイドル並みの人気です。それだけではなく、翌日、エロエースや横綱までイケメン扱いされ出し、面喰らうチョコ。さらに、なぜかチョコも男子たちから「推しメン」だと言われて……

 

ショウくんにライバル出現

青龍編の時点で重要キャラだったショウくん。無印初期はそのイケメンぶりで女子をキャーキャー言わせていましたが、後半になって読者キャラが増えていくにつれてどんどん影が薄くなってしまったような気がします(キャラブックでも半ページしかもらえてなかったし……)。ですが、記念すべき六年生編第1話の中心キャラはなんと彼。無印から読んできたファンとしては嬉しい限りです!

さて、今回、みんなのアイドルショウくんに強力なライバルが現れます。その名は木村悠一。背が高く、目は切れ長でダンスが上手な、スタイリッシュなモデル系イケメンです。ショウくんはジャニーズ系の王子様顔かと思われますので、同じイケメンでもタイプが違いますね。

そんな超絶かっこいい木村くんの出現に女子は大騒ぎ。反対に、いつも誰かにちやほやされてきたショウくんの周りには誰もいません。その様子を見て心を痛めた舞ちゃん&百合ちゃんは、彼の人気を取り戻すべくファンクラブを作ることに。このころはまだ舞ちゃんはショウくんが好きだったんですよね、本心はともかく行動の上では……。最新刊ではエロエースとカラオケデートまでしてますが、どのタイミングで自分の気持ちに気付いたのでしょうか。

結局木村くんのイケメンっぷりは魔界グッズのおかげでしたが、外見だけでなく行動もイケメン風になっていたところに黒魔法の力の凄さを感じます。チョコと公園で会くわした時の「アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー!(地獄で会おうぜ、ベイビー!)」も最高にスカしていて、ショウくんとのモテる男子同士の会話も読んでみたい気持ちになりました。

 

アイドルネタ多し

魔界グッス「イケ麺」「オシ麺」のおかげでモテモテになったのは木村くんだけではありませんでした。エロエースや横綱、そしてチョコまでもがみんなの人気者に。「ピッチャーのポーズ、やってみせてぇ!」と頼まれたエロエースが、「こうやって、大きくふりかぶって……。」と言っていたのが小ネタが効いていて面白かったです。

「イケ麺」は普通に「イケメン」のもじりですが、「オシ麺」は主に好きなアイドルに対してファンが使う「推しメン」という言葉のもじりです。ずっっと前の話ですが、公式ホームページでギュービッドさまが「嵐の中なら〇〇推し」という発言をしたこともありました。たしか次の更新日に読者から「ジャニーズは『〇〇推し』じゃなくて『〇〇担』って言うんです」というツッコミを受けてた気がします。

そして今回は明らかにPerfumeっぽい後輩3人組が登場しましたね。彼女たち「図書館少女隊」は作者キャラ。石崎先生はPerfumeがお好きなのか……。たしかに、Perfumeの都会的な雰囲気は石崎作品っぽいような? 

 

 

第2話

あらすじ

入学式当日の第一小。舞ちゃんは生徒会長としてスピーチをしますが、なぜかオヤジギャクを連発し、大滑りしてしまいます。名誉挽回の為に「一年生をむかえる会」でとびきりいい演し物をしようと考える舞ちゃん。自宅にチョコや百合ちゃんを呼んで作戦会議を行います。舞ちゃんの家へ行く途中、チョコは迷子になっていた新一年生・伊津守諭吉くんを家まで送り届けますが、道中、妙にオカルトちっくなクイズを出されます。

そして迎えた一年生をむかえる会本番。演し物は全く盛り上がらず、白けた空気に。そんなとき、ある人物が衝撃的な発言をして……

 

怪しい諭吉くん

今回は無印18巻に登場した伊津守麻衣子ちゃんの弟、伊津守諭吉くんが出てきます。

迷子になってしまった彼を、チョコは家まで連れて行ってあげることにします。子どもっぽいなぞなぞを出したかと思えば、やたらマニアックなオカルト問題を出す(しかもその前の問題にヒントを仕込んでおくという小学生離れした小技つき)など、怪しげな雰囲気満点の諭吉くん。特に、同音異義語的な魔界っぽい単語(「神ねんど」「魔ぞ魔ぞ」など)をチョコがスルーしているところではハラハラしました。文字を追っている読者は「『紙ねんど』じゃなくて『神ねんど』なのはおかしいぞ」と思えるんですけど、耳で諭吉くんの言葉を聞いているチョコはそれに気づけないんですよね。読者にはわかっていることが主人公にはわからないという、スリル満点のシーンでした。

結局、彼は黒魔法をかけられていただけの普通の子どもで安心しました。諭吉くんの名前は一万円札に描かれてる福沢諭吉からでしょうが、お札のデザインが変わってしまうので万札を差し出す癖はこれを機にやめた方がいいですね。

 

オカルトな「一年生をむかえる会」

黒魔法がかかっていたせいで、オカルトな演目だらけになってしまった一年生を迎える会。三年生は『地獄少女』の挿入歌である「さくらうた」を歌い、四年生は『墓場鬼太郎』のテーマの「モノノケダンス」を演奏し、五年生は『ヘビ少女』の歌とダンスを披露します。

毎巻思うんですけど、石崎先生のオカルト系知識の幅すごい広いですよね。サバトやら薬草やらの正統派のオカルト(?)だけじゃなく、アニメや漫画にいたるまで。舞ちゃんの入学式用スピーチの中に『魔法少女まどか☆マギカ』のネタもありましたが、年代も幅広いですよね。

なかでも『地獄少女』は小説版も書いていらっしゃいますし、特にお好きなんでしょうか。私も2期までは見てましたが、あの都会の暗さ的な雰囲気は初期黒魔女さんっぽいなと思います。第1期のオープニングのサビで主人公がモノクロの人混みの中を歩いているシーンが、クールかつ影があってあのころの空気感を思い出させます。

オカルト色が強すぎる演し物の連続にすっかり盛り下がる新一年生たち。実はそれは黒魔法のせいでした。入学式、一年生をむかえる会と、生徒会長としての見せ場が連続でめちゃくちゃになってしまった舞ちゃんの苦労がしのばれます。

 

 

第3話

あらすじ

黒魔女学力テストに向けて勉強するチョコ。気分転換に、魔界版フリーマーケットである「フリ魔」に出かけます。魔界の古い雑誌を手に入れ、付録の魔力増強カードもゲット。それを使って「相手を黒猫に変身させる黒魔法」をかけ、成功させます。帰宅後、家にやってきた藍川結実ちゃんから、可愛がっていた野良猫たちの姿を引越し後見なくなったと相談を受けるチョコ。早速結実ちゃんの家に向かうと、どこかで見覚えのある猫が2匹現れて……

 

藍川結実ちゃんが活躍

第1話の中心人物は作者キャラ・ショウくんでしたが、第3話は動物女王・藍川結実ちゃん。彼女もかなり初期に登場したキャラで、これまでも出番は多い方でしたが、掘り下げられるのは久しぶりです。

動物への愛と知識が深い結実ちゃん。特に、チョコに突進してきた黒猫たち(正体は麻倉&東海寺)の目の異常を一瞬で見抜いたのはさすが動物女王だと思いました。そのような鋭い観察眼を持つ一方で、黒猫たちがチョコをめぐって争っているのをみて「ロニャンチック!」とうっとりしているのがかわいいです。なじみの猫たちの姿を見た時のホッとした反応も暖かくて、私が猫でも好きになっちゃいそう。

それから、彼女にはお兄さんがいるという新事実も発覚。家の内部構造まで明らかになったのも嬉しかったです。

 

フリー魔ーケット

「魔界科見学」と称して魔界版フリーマーケットこと「フリ魔」に出かけるチョコ。売っていた古本も、「魔女の友」「魔法少女倶楽部」など、どこかで聞いたことがあるようなタイトルが多くて楽しいです。人間界にも随分魔界スポットが増えましたね。

「掘り出し物を見つけたいなら午前に行くのがオススメ。安く買いたいなら午後がオススメ」と、超庶民的なアドバイスをするギュービッドが面白かったです。そして「ココナッツオイル」のばったもんをつかまされるというオチもあるあるで笑いました。

フリ魔で手に入れた魔力増強カードをつかって、うっかり黒魔女学力テストの試験官に「相手を黒猫に変身させる黒魔法」をかけてしまったチョコ。試験官の名前を当てて元の姿に戻すことにします。トラネコを使い魔にしていることから、彼女が「マクベス」に登場する「魔女Ⅰ」さんだということを突き止めます。第2話の6-2の劇が伏線になっていたとは! そして、「きれいはきたない。きたないはきれい」というフレーズは無印4巻にも出てきましたね。チョコは忘れているようですが……。

 

 

全体を通して

この巻からチョコが6年生になり、タイトルも『6年1組黒魔女さんが通る‼︎』に変わります。表紙の文字も、今までは黒字に赤い縁取りだったのが赤字に黒い縁取りになり、以前より明るい印象に。内容は無印3学期の時点でずいぶんポップになっていましたが、6年生編からは意識的に作風を変えている感じを受けました。この巻が出たのが2016年。そりゃあ 2000年代半ばの巻とは雰囲気変えてきますよね。

また、新規の読者が入ってくることを想定したのか、プロローグ<ほんとうにあったこわい話>が久々に収録されています。1話にたくさんのキャラがでてきた無印3学期編と比較すると、ひとつのお話で活躍するキャラクターの数も絞られ、一人一人の特徴があらためて強調して書かれている気がしました。そのなかでも作者オリジナルキャラや物語上重要なキャラが優先されたように思います。

 

 

次巻の記事はこちら 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【黒魔女さんが通る】『魔女学校物語』3巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

第1話 

あらすじ

濡烏先生の尽力により49年ぶりに遠足に行けることになった王立魔女学校の生徒たち。桃花たちフォカロルの三人は、目的地の「魔の山」についてまとめた遠足のしおりを作ります。

遠足当日、行きの馬車の中で濡烏先生に手作りのお菓子をご馳走になる三人。いつもとちがってやさしい先生ですが、馬車を出ると鬼教師にはや戻り。桃花たちは、「いったいどちらが本当の姿なのだろう」と不思議に思います。

黒魔法の使用が禁じられている「魔の山」ですが、ハイキング中にうっかり生徒の一人が呪文を唱えてしまいます。それをきっかけに、眠っていた山の魔力が目を覚ましてしまい……。

 

濡烏先生掘り下げ回

濡烏先生かわいい

生徒指導担当の濡烏先生。とても厳しく、生徒たちから恐れられている先生ですが、第1話ではかわいい一面が明らかになります。

「魔の山」に向かう馬車の中で、桃花たちが作ったしおりを熱心に読む先生。同乗していたジェニファー先生にまでオススメし、伝説の「アマ・ルーラの像」を見つけたら世紀の大発見になりますよ、などどはしゃぎます。普段鬼教師として怒鳴り散らす先生をみなれているので、同僚と楽しそうに話す姿はそれだけで新鮮です。

さらに、授業中の私語の罰としておやつ禁止令が出されていた桃花たちに、手作りのお菓子を披露してくれる濡烏先生。ジェニファー先生に「ムーミン」に出てくるレシピだとバラされてはずかしそうにしているのが可愛かったです。ティアーの「ますます、先生には似合わなくってよ!」という天然失礼発言にも言い返せず、うつむいて赤面してるのギャップ萌えです。

濡烏先生のお菓子を食べて「お口がこんなに幸福でいっぱいになったのは生まれてはじめて」と喜ぶ褒め上手なティアー。「そうか。幸福な気分になれるか。そうだろうな」という返答が心底嬉しそうでいいです。言葉遣いなどは普段と同じなのも先生らしくて好き。

さらに濡烏先生の中学時代の担任、コウナルト・ザ・ピンチ先生も登場。ザ・ピンチ先生の発言からすると、濡烏の年齢は30代後半ぐらいみたいですね。

 

濡烏先生かっこいい

しかし、明らかになったのは可愛い面だけではありません。生徒想いでかっこいい面もフィーチャーされます。

黒魔法の使用が禁止されている魔の山。呪文を唱えると、「アマ・ルーラの洞窟」の魔力が復活し、洞窟に迷い込んだ人を閉じ込めて死なせてしまうという言い伝えがあります。事前に注意を受けていた桃花たちですが、テスがうっかり乾燥魔法を使ってしまい、フランカが洞窟に吸い込まれてしまいます。

あえて先生に知らせず、自分だけでフランカを助けたいと言う桃花。わざとアマ・ルーラの洞窟に閉じ込められます。ところがそこに濡烏先生も出現! 事態を報告せず、生徒だけで解決しようとしたことをしかられます。洞窟内にこだまする怒鳴り声。さすが濡烏先生、どんなときでも威厳にあふれています。

しかし、生徒が違反を隠し、重大問題につながってしまったのは、自身の怖さにも原因があると語る先生。生徒が素直に謝れるようにするのも教師の仕事だ、自分もまだ修行が足りないと反省の弁を述べます。目下の人の前で自分の非を認めるのは簡単なことではないはず。ですが、下手なプライドにこだわるよりむしろかっこいいです。

濡烏先生が唱えた「山の魔女の飛行呪文」によって無事洞窟から脱出する桃花たち。「サシ・グスティエン・ガイネティク・エタオデイ・グスティエン・アズピティク」という古代語で、「野いちごと雲のあいだだけは、なにがあろうと、われを自由に飛ばせたまえ」という意味です。厨二心をくすぐられますね。

 

 

第2話

あらすじ

2学期が始まったばかりの魔女学校。夏休みボケがぬけない生徒たちのために、メリュジーヌ先生は「部屋対抗・創作黒魔法大会」を開催します。オリジナル黒魔法の製作に熱を入れる桃花たち。なかでもマカズキンはのめりこみすぎて、他の授業がおろそかになってしまいます。

それだけではなく、桃花やティアーの大会に対する姿勢にも文句をつけ始めるマカズキン。ついには「魔女学校をやめる」とまで言い出します。仲の良い三人組に戻るため、けんめいに創作黒魔法を考える桃花たちですが……。

 

桃花&ティアー、マカズキンと喧嘩する

小説家志望で、常にネタ集めや取材(ゲテモノ料理作りなど)を怠らないマカズキン。研究熱心でのめり込むタイプですが、今回はその熱心さが事件を引き起こしてしまいます。

カイムに「未来の手紙」を出して創作黒魔法のヒントにしようとする桃花とティアー。その態度が悠長すぎるように見えたマカズキンは激怒。ついには学校を辞めるとまで言い出します。

普段は発想力があって面白いマカズキンですが、今回は桃花たちを悪い意味で振り回します。他の部屋の子たちが埋めた「けんかの種」を勝手に掘り起こしてみたり、自分が原因で「最低の部屋」になったのにルームメイトに逆ギレしてみたり……。かなりめんどくさいですが、そうなってしまった背景には、「小説家になる」という夢の存在がありました。

ひそかに魔界の作家に自作を送り、アドバイスをもらっていたマカズキン。本人曰く”偶然”アドバイスを見てしまったティアーによると、「もっとオリジナルな作品を書くべきだ」「いまのままでは、ただのダジャレといわれても、しかたない」と書いてあったそうです。普通に読んでもグサグサきますが、石崎先生からの言葉だと思って読むとさらに重いですね。手紙の覗き見に驚異的な能力を発揮するティアーに癒されました。

創作黒魔法にもオリジナリティを求めるあまり、周りが見えなくなってしまったのではないかと推測する桃花たち。マカズキンの夢に対する本気度はすごいです。その甲斐あって本編6年生編ではみごとデビューしてました。 

 

創作黒魔法大会

大会本番、さまざまな創作黒魔法を披露する生徒たち。「ハアゲンティ」のメンバーがつくった「死異流」は、憎い人のおでこに貼って「このうらみ、地獄へ流します。いっぺん、死んでみる?」と唱えると相手が消えるシール。無印から恒例の地獄少女ネタです。世代なので嬉しいです。

桃花とティアーは二人で参加。彼女たちが作ったのは「意図電話」。一見ただの糸電話ですが、紙コップに向かってマカズキンへの思いを述べると、その「意図」が伝わりマカズキンが登場! 駆け寄る二人。p143の抱き合う三人のイラストが良いです。

しかし優勝は「ベリアル」の「けんかの種」と「魔種」でした。実は、マカズキンがやたら攻撃的だったのは「けんかの種」を掘り返したため。この種はもっているとイライラするという効果があるのです。黒魔女をもコントロールするとは、ベリアルの三人は将来有望です。

 

 

第3話

あらすじ

ユールサバト間近の魔女学校。桃花たち二年生は、「出前授業」に誰が来るのかで大騒ぎ。「出前授業」とは、魔界の社会人を招いて行われる特別講義のこと。ティアーは「魔ティシエ」のロリポップ・ココアに来て欲しいと思っています。

出前授業当日、あらわれたのは「魔ティシエ」のフィリピーネ。超一流店「メーデル」を開く彼女の登場にみんな大興奮ですが、なぜかティアーだけは浮かない顔をしています。理由を尋ねると、とんでもないことが明らかになって……。

 

ティアーの知られざる過去

第3話では超絶お嬢様のルームメイト・ティアーの過去が明らかになります!

出前授業に現れた美人魔ティシエ・フィリピーネ。実は彼女はティアーの兄・カールの妻。ですが王族ではありません。フィリピーネは平民なので、結婚にあたり、カールが爵位を捨てたのです。

5年前、自作のケーキを持ってカールの元にやってきたフィリピーネ。やがて二人は恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚しました。ティアーは兄がフィリピーネの店の広告塔として利用されたと思い込んでいるため、彼女のことが好きではありません。さらに授業の合間に、カールが見習い魔ティシエとしてバラの花びらをちぎっているのを見て激昂し、部屋に帰ってしまいます。

結婚当時中学生の彼女にとって、12歳も年上でかっこいいカールは憧れの存在。フィリピーネが兄を騙したとか、貴族の身分を捨てるなんてとか色々言ってますが、大好きな人が自分の元を去っていくのが寂しかったというのが本音だろうと思います。そのうえ久しぶりに会った兄が、自分からしたら下働きがやるような仕事をさせられているのを見て軽んじられていると感じ、それをおとなしく受け入れている兄自身にも裏切られたと思ったのかもしれません。

 

カールの言葉がグッとくる

兄妹を和解させるため、カールに話しかけに行く桃花。あいにく次の授業の準備中でしたが、笑顔で丁寧に対応してくれるあたりさすが元貴族だと感じます。

魔ティシエの仕事で最も大事なのは「同じケーキを作り続けること」だと言うカール。自分にとってはたくさん作るケーキのうちの一つでも、お客さんにとってはただ一つのケーキだから決して気を抜けないのだと語ります。「一見、つまらなそうな、同じことのくりかえしでも、こつこつとつづけていれば、わたしも、わたしの仕事も、だれかにとってのオンリー・ワン、そしてスペシャル・ワンになれるかもしれない」という言葉が沁みました。いずれ国王になったかもしれないカール。「オンリー・ワン」なんて目指す必要すらなさそうですが、自分の努力の成果が、誰かの「オンリー・ワン」になれることを実感したかったのかもしれません。

ティアーの怒りを解いたのは桃花たちが作ったカラメルソース付き焼きプリン、そしてカールが花びらをちぎって作った「バラ水」でした。「バラ水作りは下働きではない」と妹に伝言して欲しいと頼んでいましたが、結果的に自身の仕事でそれを示したのがかっこいいです!

 

 

全体を通して 

サブタイが「友だちのひみつ」というだけあって、マカズキンやティアーについて深く知れる巻でした。第1話では濡烏先生が掘り下げられましたが、「おなじみのあのキャラの 意外な一面が明らかに!」ということが全話共通していたと思います。

この巻が発売されたのが2016年。もう4年近く続きが出ていないですが、あとがきによるとこれで完結ではなく、今後私立ブラックウィッチ学園のことなども書かれる予定みたいです。現在(2020年3月)本編で大形問題が絶賛進行中なので、続編が出るのははやくてもそれがひと段落してからだと思います。気長に待ちましょう。

 

 

 

【黒魔女さんが通る‼︎】『魔女学校物語』2巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

第1話 料理当番事件

あらすじ

王立魔女学校の一年生は入学後、2週間ずつ2部屋ごとに全校生徒の食事を作る当番が割り当てられます。桃花たちは、ライバルのビルトたちと一緒にご飯を作ることに。料理コンテストでの優勝経験もあるビルトに負けていられないと、鼻息を荒くするマカズキンたち。ティアーが自宅から持ち込んだ超高級調味料とレシピ本を使って、「おいしくて、先生や生徒から感謝される料理」を作りますが……。

 

ギュービッド世代が掘り下げられる

学生時代のギュービッド様たちの様子がかなり描かれた第1話。『黒魔女さんが通る』本編のファンとしても嬉しい限りでした。

お料理当番として、ガマンベールチーズ入り早死ライスを作る桃花たち。工夫を凝らした料理を暗御留燃阿先輩に褒めてもらって舞い上がります。

そんなあこがれの先輩にほめられるなんて……。

きっと、「地獄にも落ちる気持ち」っていうのは、こういうことなのね……。

石崎洋司『魔女学校物語 お料理当番事件』(2016)p54

超絶優等生のうえに、サバトの時の高等女司祭姿には「一年生全員、うっとりとしてしまった」ほどの美貌の持ち主の暗御留燃阿先輩。早死ライスは絶賛してくれますが、一緒に出したチキンスープの方は後味が若干苦かったとやや厳しい評価。このスープの苦味は後々の伏線になります。キャラブックでグルメという設定が加えられていましたが、実際味覚の鋭さは確かなようです。

ちなみに、一緒にいたギュービッド先輩はむしろその苦味が気に入った様子。この好みのちがいがそれぞれらしくて好きです。彼女たちは二人部屋なんですかね。

 

アクは「悪」?

チキンライスの苦味の正体は、ティアーがとり忘れた「アク」。魔界の人が「アク」入りの食べ物を口にすると、「アク」が「悪」になり、いろいろな悪さをするようになるのです。

そのせいで授業中にあくびをしたり、悪趣味なアクセサリーを見せびらかしあったりするようになってしまった生徒たち。なんと、高等女司祭の暗御留燃阿先輩ですら、初代校長像の腕でアクロバットをするギュービッドを見て大喜びしています。このシーンはイラストがついているのですが(p63)わたしは暗御留燃阿オタなので彼女の制服姿が見れたのがとっても嬉しかったです! 

大昔、公式ホームページにかつてあった『Q&Aの小部屋』にて、「(無印)3巻2話で学生時代のギュービッドと暗御留燃阿が着てる服はなんですか?」という質問に対して、石崎先生が「王立魔女学校指定のコートで、その下は(無印)8巻で描かれた制服です。ところで、暗御留燃阿があの制服を着ているところ、見てみたいと思いませんか?」と回答されていたのですが、約10年の時を超えてようやく見れました!

あまりの混乱ぶりに禁足令を発動させる教師たち。禁足令とは先生専門の黒魔法で、生徒たちを有無を言わさず部屋の中に閉じ込めておくことができるみたいです。一列に並んで呪文を唱える先生たち、強そうでかっこよかったです。

結局ブラヴァツキー先生のひらめきによって原因が発覚し、桃花たちはアク抜きの料理を作らされる羽目に。ところが生徒たちの「アク」はなかなか抜けませんでした、なぜなら、早死ライスに入れた「ガマンベール・チーズ」には、「食べると我慢強くなる」という効用があり、体内のアクまで我慢強くなってしまったから……という、おあとがよろしいお話でした。

 

 

第2話 そうじ洗濯当番事件

あらすじ

ソーウィン間近の王立魔女学校。桃花たちはそうじ洗濯当番として、井戸で毎朝洗濯物を洗っています。

そんななか、桃花はティアーから、ハロウィーン・ナイトクルーラーという、大昔、国王の離宮に現れた不思議な人物についてきかされます。さらに他の生徒から、「ソーウィンの日、生徒がサバトに出かけている間に、寄宿舎でぬきうちの持ち物検査が行われている」という話を聞く桃花たち。洗濯当番として井戸に行くついでに、校則違反のものを隠しておいてくれないかと頼まれます。先輩たちの目を盗みつつ井戸の中に隠そうとする桃花たちですが、そこにはすでにたくさんのものが隠されていて……。

 

ロマンチックで青春っぽいお話

校則違反の品々を井戸の中に隠す桃花たち。ヘアアイロン、お菓子、ス魔ホ、漫画……。校則が厳しい王立魔女学校ですが、みんな先生の目を盗んでいろいろなものを持ち込んでいるんですねぇ。なかでも、タニヤの「賞状の筒の中にヘアアイロンを隠す」という技は実際にやってる子がいそうで笑いました。

第2話は学校に代々伝わる真偽不明の噂話という、すごく青春感のあるテーマでした。井戸の内側の釘に無数の袋がかけられているのを目撃するシーンがよかったです。メリュジーヌは「いまではあの話を信じる子も減った」と言っていましたが、ふだんは信じていないふりをしていても、みんなどこか否定しきることはできないというのが、あの袋の山に現れている気がしました。

ソーウィンの後、桃花はメリュジーヌから噂の真相を聞きます。若い頃、大事な手紙を井戸の中に隠しているのを目撃された先生。とっさに、「ソーウィンの晩に、その人にとって一番大事なものを奪う悪霊が出る」と話し、それが形を変えて今でも残っているそうです。ちなみにそのとき隠そうとしたのは若かりし頃、悪霊の国で共に戦った騎士・ゴンサロからの手紙。『黒魔女の騎士ギューバッド』に出てくる人物です。「男のように美しく、女のように力強かった」「男のように荒々しく、女のようにうるわしかった」と評されていましたが、ゴンサロは女性として生まれながら男性として騎士団に仕えていた人なので、そのことかなと思います。

といっても、『黒魔女の騎士ギューバッド』でも手紙の詳細は明らかになっていないし、なによりこのゴンサロ評にはなみなみならぬこだわりを感じるので、どこかでまた掘り下げられるかもしれません。

 

ハロウィーン・ナイトクルーラーのなぞ

 ハロウィーン・ナイトクルーラーとは、大昔、ソーウィンの晩に国王の離宮に現れ、若い女性たちの恋文を盗んで去っていったという伝説上の人物です。その後、離宮は使われなくなり、火の国王立魔女学校に姿を変えたそうです。

 メリュジーヌによれば、ハロウィーン・ナイトクルーラーがソーウィンの日に恋愛の証拠をさがしまわっているのは作り話ではなく、本当のことだとか。ちょっと信じられない話ですが、このシーンの先生が「でもたしかにいるんだ」と妙に確信に満ちているのが気になります。しかもこの件は門外不出で、しつけ協会のなかでも限られた黒魔女たちと歴代の王立魔女学校校長にしか伝えられていないそうです。なにか秘密がありそうですね。今後の展開に期待です。

 

 

第3話 ホームシックはつらいよ

あらすじ

冬休み前の王立魔女学校。久々に故郷に帰れると浮かれている生徒たち。汽車賃がなく帰郷できない桃花は、母親からの手紙を読み返して寂しさを感じています。ひとり回廊を歩いていると、エレオノーラ先輩に呼び止められる桃花。話をしているうちに、先輩も一回も里帰りしていないことを知ります。そのときの様子から、彼女がホームシックになっているのではないかと思った桃花たちは、あの手この手で先輩の故郷についての情報を集めます。やがて、エレオノーラの同郷の人物から詳しい事情をきいた彼女たちは、ある考えを思いつき……。

 

エレオノーラ先輩掘り下げ回

エレオノーラ先輩の秘密

桃花たちの学年の生活監督官・エレオノーラ先輩。厳しく、感情をあまり表に出さない先輩ですが、第3話では彼女の知られざる一面が明らかになります。

母親からの手紙を読み返して恋しがる桃花。たまたまエレオノーラ先輩と出くわします。先輩は、桃花が実家から送ってもらったイヤーマフラーに触れ、「いいなぁ、うらやましいなぁ」と呟くのです。そして、自分も入学以来一度も帰郷していないし、これからもそうだろうと語ります。

このシーン、「うらやましい」と言ってしまうところはもちろんなんですが、言外にも先輩の望郷の思いや優しさがにじんでいていいです。桃花の手紙からシルバーパーチの葉が落ちたのを見て故郷について聞きたがったり、話を聞くと何度もうなずいていたり……。うっかり本音を漏らしてしまったのも、桃花が実家を恋しがっているのが自分と重なったからでしょう。詳細を尋ねられると言葉を濁し、あくまで生活監督官と後輩としての距離を保とうとするのもエレオノーラらしくていいです。

ちなみに、このとき彼女が濁した故郷に帰れない理由とは、祖母から「卒業するまで帰らず勉強に励め。生活監督官と高等女司祭になり、トップで卒業しろ」と指導されているから。おばあさんは王立魔女学校の出身で、教師をしていたこともあるそうです。そして、「校長になる」という自分が果たせなかった夢を孫に託しているのだとか。なんだか業を感じる話ですね。

 

先輩後輩の絆

エレオノーラ先輩のホームシックを解決するためにあれこれ考える桃花たち。最初の作戦は、学校のパソコンに魔カイプ(スカイプみたいなもの)をダウンロードし、先輩の実家を探り当ててそちらでも魔カイプをいれてもらう、というもの。ところがエレオノーラの実家を誰も知らないという事態が発生したうえに、校則違反として魔カイプを削除されてしまい、あえなく失敗。先輩はともかく、同級生ですら実家を知らないってすごいですね。

2番目の作戦は、魔女学校に出入りするワイン業者のシェリルの話を聞いて思いついたもの。彼はエレオノーラと同郷で旧知の仲なのです。シェリルから、故郷・ヘレスの風景の美しさや、先輩がなついていたというじいやとばあやの話を聞いた桃花たちは、図書館の部屋野先生の協力のもと、それをセット魔法で再現することにします。内容は、じいやとばあやのちょっとした痴話げんか。台本を手がけたのはマカズキンですが、ばあやに言い負かされそうになるじいやの様子が妙にリアルで、さすが作家志望だなと感じさせます。

じいやのデタラメ話を見抜くため、犬に真相を聞いてみようというばあや。そこでなんと先輩が劇に参加し、ワンニャンプリター魔法を発動! ちゃんとアドリブにも答えるファイヤーナイト号偉いです。さらにマカズキンもノリノリでアドリブセリフを言い、非常に楽しい雰囲気に。先輩も今まで見たことがないくらいうれしそうな表情をしています。

桃花たちが変身したじいや・ばあやに、「下級生に慕われていることが、なによりのよろこびです」と伝えるエレオノーラ先輩。桃花たちの思いをしっかり受け止めてくれたようです。厳しい学校生活の中でも、後輩の存在を支えにして頑張ってくれてたんですねぇ。普段クールで威厳がある先輩なだけに、この発言は感動的でした。

 

 

全体を通して

桃花やフォカロルの二人に焦点が当たっていた 前巻に比べると、先輩方の出番が多い巻だったと思います。とくにエレオノーラ先輩はがっつり掘り下げられましたし。第1話は好きなキャラ大活躍で個人的にも嬉しく、第2話はちょっと不思議な雰囲気が漂っていて面白かったです。

   

 

次巻はこちら

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

 

【黒魔女さんが通る‼︎】『魔女学校物語』1巻をふりかえる【桃花外伝感想】

『魔女学校物語』とは

チョコの妹弟子、桃花・ブロッサムを主人公にした『黒魔女さんが通る‼︎』シリーズの外伝。公式ホームページで行われた「あの人が主人公のお話を読みたい!」の読者アンケートにて見事1位(1076票)を獲得し、書かれたお話です。内容は桃花ちゃんの学生時代の出来事について。本編ではしっかりもので頼りになる彼女の、まだまだ未熟だった頃の姿が描かれます。個性豊かなルームメイトや、学生時代のギュービッド様たちの、今とは少し違うようすも楽しめます!

2018年12月に國學院大学で行われた講演会によると、『魔女学校物語』は石崎先生流少女小説らしいです。「王立魔女学校」という閉ざされた空間を舞台にしているからか、そこはかとなく夢のような雰囲気が漂っている気がします。

 

 

第1話

あらすじ

火の国王立魔女学校に入学した17歳の桃花・ブロッサム。田舎から上京してきた桃花にとって、お嬢様ぞろいの王立魔女学校は戸惑うことばかり。寄宿舎の同室の仲間も、小説家志望のマカズキン、グラシュティグ会長のご令嬢で世間知らずなティアーとなかなかクセが強い。それなのに部屋の責任者にまで任命され、いっぱいいっぱいの日々。ルームメイトの協力やメリュジーヌ校長の激励の言葉で元気を取り戻しますが、やっと迎えた外出日、私立ブラックウィッチ学園の生徒にカラまれてしまい……。

 

桃花の成長物語

桃花ちゃんの人知れぬ苦労

お嬢様学校の王立魔女学校。しかし桃花は特別推薦で入学した田舎出身の子。育ってきた環境も実力も何もかもちがう生徒の中に、一人放り込まれてしまった焦りや不安がとてもリアルで、心が痛いです……。特に、マカズキンに「桃花はどこかの地方の伯爵の子?」と訊かれて(彼女は当然桃花も自分と同じく貴族出身だと思っている)、平民なのに場違いなところに来てしまったと感じ、お母さんが貧しいなりに一生懸命作ってくれたワンピースを恥ずかしいと思ってしまうシーンはなかなかつらかったです。

さらに実力も全然足りない桃花。でもそれは生まれ育った環境のため。貴族のお嬢様たちは、幼い頃から執事や召使いたちが魔草を使うのを見ていたり、黒魔法を使ってゲームをしたり、育っていく過程で素養を身につけているのです。だけど桃花は平民出身なので、みんなが当たり前に知っていることが少しもわからず、焦っているうちに先生の話を聞き逃して怒られてしまうという負のスパイラル。本編ではなんでもそつなくこなせるように見える桃花ちゃんですが、学生時代はこんな苦労があったんですねぇ……。

 

 メリュジーヌ校長の励まし

キャラブックで「夢はメリュジーヌ先生のような校長になること」と語っていた桃花ちゃんですが、彼女がメリュジーヌを尊敬するようになったきっかけが描かれます。

魔力の少ない桃花を気遣って、ルームメイトのマカズキンとティアーはワイン蔵にしのび込み、魔力増強ワインを飲ませようとします。何杯か飲んでいるうちに、すっかり酔っぱらってしまう桃花。実力が足りない自分を入学させたメリュジーヌ先生にだんだん腹が立ってきて、校長室に押しかけます。

呪文で酔いを覚ましたあと、「補おうと努力するきっかけになるなら、欠点も長所に変わる」「大切なのは、自分に合った努力ができること」という言葉をかけるメリュジーヌ先生。そういえば彼女も魔妖精で、学生時代は肩身の狭い思いをしたこともあるのでした。低い身分ゆえになかなか自信を持てないでいる桃花に、かつての自分の姿を重ねているのかもしれません。

この事件をきっかけに前向きな心を取り戻した桃花。メリュジーヌ先生のアドバイスは欠点は欠点として受けいれることの大切さから始まっているのがいいです。単なる根性論とは違いますよね。でもこういうアドバイスはもっと早くにしてあげてもいいと思うよ校長。

 

個性豊かなルームメイト&先輩たち

三人一組で班になり、ともに寄宿舎生活を送る王立魔女学校。桃花ちゃんのルームメイトは小説家志望のマカズキンと、グラシュティグ会長の娘で生粋のお嬢様のティアー。本編で桃花がたびたび口にする「おっくれてるぅ!」は、もともとこの子の口癖です。

ティアーたちの学年の生活監督官(監視役みたいなもの)は本編20巻でも出てきた2年生のエレオノーラ先輩。背が高く、髪を刈り上げていて、一見男性のようにも見えます。この外見めっちゃ黒魔女さんっぽくて好きです。まだ生活監督官になったばかりなのに、入学式で容赦なく新入生に校訓1000回書きとりの罰を与えられるあたり、肝の座り方が半端じゃないです。あと、第2話で喧嘩中のマカズキンとビルトを鶴の一声で黙らせたのかっこいいです!

そのほか、悪霊降霊術のブラヴァツキー先生、魔界薬草学のヒルデガルト先生なども登場。彼女たちの名前はオカルトの歴史の重要人物からきているのでしょうね。魔界っぽくていいです。

 

学生時代のギュービッドたち

それから、忘れてはいけないのが学生時代のギュービッド様たちの様子が描かれることです!

本編で散々書かれている通り、学生時代は筋金入りの不良だったギュービッド様。生活態度も成績も最低なので下級生からの信頼は0。ある程度予想はしていましたが、王立魔女学校伝統の「卒業時に先輩から制服の一部をもらう」というイベントですら「ギュービッド先輩のだけはいらない」と言われているのはちょっとショックでした。本編よりも哀愁があります。

ですがやっぱり黒魔法の才能はピカイチだし、さりげない優しさが光ります。実は、桃花がいつも持っているダイナマイトはギュービッドにもらったもの。桃花がブラックウィッチ学園の生徒たちと黒死呪文勝負したことを聞きつけ、その短気さをコントロールできるようにと用意してくれたのです。

不良黒魔女として有名な先輩だけど、なんていい人なの……と心を動かされる桃花。もしかしたらギュービッドも、ほとんどの後輩が自分を怖がっている中で、(正体を知らなかったからとはいえ)マーボンのときに桃花があまり警戒しないで話してくれたのが嬉しかったのかもしれないです。

それと印象的なのが、暗御留燃阿が後輩たちからモテモテだったことです。生活監督官&高等女司祭をつとめた超絶優等生かつ絶世の美女なので憧れの的になるのも当たり前ですが、制服が取り合いになっていたり、後輩から「きれいで優等生」と明言されているのを読むと暗御留燃阿オタとしてはニヤニヤしちゃいます。この後輩たちとはうまい酒が飲めそう。

また、この外伝ではほのぼのした雰囲気で書かれていたギュービッド世代の卒業式ですが、この前後に彼女たちの学年で何が起こっていたのかを考えるとなかなかズシンとくるものがありますねー。

 

 

第2話 

あらすじ

王立魔女学校の二年生になった桃花たち。パジョー先生の授業では、一年間かけて「つながりの手鏡」にルームメイトの様子をうつせるようになるという課題が与えられます。一方、生活面でも大きな変化が。なんと桃花が生活監督官に指名されたのです! ルームメイトたちにお祝いされたのもつかの間、問題児の新入生・ミルフィーユに手を焼く日々。外出日、ミルフィーユがブラックウィッチ学園の生徒たちと口論になっているのを目撃した桃花は、うっかり黒死呪文をとなえてしまい……。

 

生活監督官桃花

二年生になった桃花ちゃん。なんと生活監督官に選ばれます。学年トップではないし、貴族でもないのに自分でいいのかと悩む桃花に、「一年間で最も成績が伸びたのはお前だから」と話すメリュジーヌ。退職したエクソノーム先生も桃花の頑張りを認めていたそうです。彼は三年生の卒業実習の担当なので、直接の関わりはないはずですが、それでも見てくれていたなんていい先生ですね。(ちなみにエクソノームが退職した経緯については本編無印7巻で明かされています。生徒に手を出すのダメ絶対)

生活監督官として入学式で話をする桃花。ど緊張のなか、さっそくミルフィーユに突っかかられるシーンは読んでてハラハラしました。

というか、ミルフィーユはなかなか策士。校長の孫なのに特別扱いされなかったのが気に入らなかったのか、なにかと桃花のアラさがしをしてきます。ティアーがつながりの手鏡を飾りたてているのを見て、自分もわざと派手なブローチを付けておき、指摘された時に「ティアー先輩には注意しないんですか?」と反論するところとか、リアルな性格の悪さを感じさせて良いです。

半年間桃花を困らせてばかりだった彼女ですが、ブラックウィッチ学園の生徒と喧嘩になったところを助けられてから若干丸くなり、仮面舞踏会でマカズキンがピンチになった時は協力してくれました。これは桃花ちゃんが苦労しながらも後輩と向き合ってきたからこそですね。

 

ルームメイトとの絆

新しく着任したパジョー先生から、「つながりの手鏡」を育てるという課題を与えられる桃花たち。一見ただの手鏡ですが、ルームメイトとの信頼関係を築いていくうちに相手の様子が映るようになり、ピンチの時には何も映らなくなるそうです。むしろピンチの時こそ映して欲しいですけどね。

パジョー先生は元凄腕インストラクター黒魔女。キャラクターデザインめっちゃ好きです。お顔はがっちりしていて黒いマントもつけており、あんまり女女していない雰囲気。ですが男っぽいとかガサツというわけではなく、手の爪にはまあまあ濃いめのマニキュアを塗っているし、口紅もつけているようで、おしゃれなデザインだと思いました。初登場はこの回ですが、なぜか第一話でもイラストだけ登場しています。

ティアーの招待で仮面舞踏会にむかう桃花たち。会場のプラチナ城に童話「青ひげ」へのオマージュが仕込まれていたり、どんな衣装を着たのかがやたら詳細に書かれていたり(アンヌ・ヴァレリー・アッシュの白レースのビスチエドレス、クリスチャン・ルブタンのハイヒール、純白のベネチアンマスク)するところ、こだわりを感じて好きです。

桃花がはじめてのダンスに戸惑っている間に、私立ブラックウィッチ学園の生徒たちに誘拐されてしまうマカズキン。実は彼女たちは数ヶ月前、ミルフィーユと喧嘩をしていた子たち。桃花と黒死呪文勝負をしたせいで落第になってしまい、復讐の機会をうかがっていたのです。

マカズキンを助けて学校に帰った後、舞踏会の主催者がレオナール伯爵だということが明らかになります。ブラックウィッチ学園理事長の彼が事件に関わっていたとなると面倒なことになるから、警察には通報しないというメリュジーヌ。詳細を聞いてもはぐらかされてしまいます。レオナールといえば、本編無印7巻の悪役で、王立魔女学校を潰そうとした人物ですが、それ以前から王立魔女学校つぶしの兆候はあったということでしょうかね。

 

 

全体を通して

桃花ちゃんファンはもちろん、魔界サイドのファンは読んで損はない『魔女学校物語』。一巻は魔力が少なくて自信もなかった桃花の成長物語的な側面が強いお話でした。ハンデを抱えた主人公がさまざまな苦労を乗り越えて成長していく姿にはストレートに励まされます。魔女学校物語は本編への理解もより深まるし、何より超面白いのでぜひ読んでほしいです。

 

 

次の巻はこちら

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

【黒魔女さんが通る‼︎】20巻を振り返る【感想】

この記事の続き。

 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

無印黒魔女さんラストの巻。チョコさん一年の間にいろいろなことありすぎでしょ……

 

 

5-1クラスがえの危機

20巻は、5−1のクラス替えをどう阻止するかということと、全魔界一斉黒魔女テストの二つが柱になってる。まずはクラス替えの話について。

クラス替えを阻止するためにおまじないをする5-1。一緒のクラスになりたい人の名前をノートに書き込みます。この手のおまじない、小学生時代によくやったなと懐かしい気分に。

それにしても、最初はレギュラーメン+美里雷香ちゃん・藍川結実ちゃんしかいなかったのに随分増えました。感慨深い。

 

カップルが大量発生している5-1

ノートを見て誰が誰の名前を書いたのかを考えるチョコさん。獅子村くんと灯子ちゃん、日向くんとさやかちゃんはお互いの名前を書いており、カップル成立。

獅子村&宮瀬は表紙でも並んで書かれてますね。教室でも席隣だし。日向&鈴風は似た者同士でうまくやれそうです。

横綱→メグ、舞ちゃん→エロエースは5巻と同じ。石崎先生はたぶん舞ちゃん♡エロエースを相当推してるので、このカップルは最終巻までにくっついてもおかしくないかも?と思ってます。

 

 

全魔界一斉黒魔女テスト

カンニングがバレるチョコ

魔界屋台にカンニンググッズを渡されたチョコ。そうとは知らず試験中に使ってしまい、カンニング扱いになってしまいます。

ちなみに試験監督はエレオノーラ先輩。桃花ちゃんの一個上の代の生活監督官。『魔女学校物語』大好き人間なので、『魔女学校物語』出演キャラが本編に出てると嬉しい。

だけど、全魔界一斉黒魔女テストは随分厳しい雰囲気で行われるんですね。魔界の普通のテストもこんな感じなのかな?

 

みんなで魔女裁判!

カンニングの疑いで「みんなで魔女裁判!」というテレビ番組に出演することになってしまったチョコ。

自分がやらかしたことを群衆の前で読み上げられ、それにヤジを飛ばされるという公開処刑。12巻で暗御留燃阿が「晒し者の刑」になりかかってましたけど、あれもこういう感じなんでしょうか。まあここまでポップではないでしょうけど。見たかったよぉ……

無実を勝ち取るためには39人分の「ありがとう」を集めなければならない。そこで、5−1組のみんなの「ありがとう」を集めるギュービッド様たち。なんだかすごく最終回っぽくて泣ける……。

チョコは無罪になったおまけに願いを叶えてもらうことに。そこでクラスがえ阻止をお願いし、見事「奇跡の5年1組」は解散しないで済んだのだった。

 

 

全体を通して

チョコさんが黒魔女になってから一年。作中では一年ですが、読者には10年の月日が流れました。

初めて黒魔女さんを読んだ時は8歳だったやったぜも、20巻発売時にはもう高3でしたからね。時が流れるの早すぎ。チョコさんはまだ中学生にもなってないのに、寂しいなあ。

 

 

 

【黒魔女さんが通る‼︎】19巻を振り返る【感想】

この記事の続き。 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

ニイカちゃん再登場

前巻に続いてニイカちゃんが再登場します。進級できそうもない学力なので、ギュービッドの元で勉強して欲しいというメリュジーヌ先生のお達し。ギュービッド、かなり信頼されてますね。

ニイカちゃんとチョコが仲良くしてるのが可愛かったです。チョコ、学校の宿泊行事は嫌がるのに、ニイカちゃんとはベッドの中でおしゃべりとかしてる。魔界の人の方が波長が合うんですかね。「友達いない」とか言ってるけど、魔界には結構仲良し多いですよね。

ニイカちゃんと一緒に学校に行くチョコ。新一年生を楽しませなければいけないというピンチを、二人で乗り越え(?)ます。

よく考えたら、同世代の黒魔女友達って、チョコにとってはニイカちゃんとマリーちゃんぐらいしかいませんよね。ギュービッドや桃花ちゃんも仲良しとはいえ、上下関係があるし。大形は友達というには複雑な関係だし。チョコが友達と普通に仲良くしてるの可愛い。

 

ミルフィーユ先輩も再登場

ミルフィーユ先輩も「古見唯」という名前を使って人間界にやってくる。

魔界メンの人間界ネームは本名がうまく生かされていて好きです。ギュービッドは「牛美人」、暗御留燃阿は「安藤もえ」、ティカは「千香子」など。ギュービッド様は「九尾観光ホテル」も作ってましたね。

ミルフィーユ先輩はニイカのテスト勉強のサポートをしに来たそうです。12巻のギスギス具合から考えるとえらい変わりよう。『魔女学校物語』ではブラックウィッチの子と喧嘩したりして、「不良黒魔女」という方がふさわしい感じだったミルフィーユがここまで変わったのは非常に感慨深いものがある。

 

part0の要素も

part0で花咲桜樹くんの話がありましたが、それの関連話が今巻にも載ってました。

桜樹くんの妹、桜里おばあさん(にミルフィーユが化けたもの)が登場。本物は昨年の夏に亡くなったそうですが、part0でチョコが咲かせた桜を見ることができたみたい。彼女は11巻で登場した井江田照蔵さんの幼馴染でもあったようです。

それから、きみえも再登場。part0でチョコを弟子にしようとして失敗したきみえですが、まだ多くの謎に包まれたキャラです。たぶん今後、きみえの正体も明かされていくと思いますが……

 

全体を通して

今読み返してみると、part0と繋がってる要素が結構多いのかなと思います。それから、ニイカちゃんやミルフィーユの再登場も魔界好きとしては嬉しかったです