黒魔女さんが通るブログ

黒魔女さんが通る‼︎ブログ

青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さんが通る】03巻を振り返る【感想】

これの続き。

 

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第1話

あらすじ

5月1日の人間界。チョコは、家に押しかけてきた舞百合メグから、デイキャンプ後、男子たちの様子がおかしいことを伝えられます。真相解明の協力を頼まれ、さっそく大形に事情を尋ねますが、謎のノートを抱えて退散されてしまいます。大形だけでなく、麻倉や東海寺にまで話をはぐらかされるチョコ。しかもなぜかですます調を使われます。

翌日、男子の異変について話し合う女子たち。そこで、七福亭と速水が白ひげのおじいさんと一緒にいるのを見たという証言が飛び出します。さらに火の国の魔宝「ですノート」が何者かに盗まれたという知らせを耳にしたチョコは、あることに思い当たり……。

 

男子たち活躍

第1話はこどもの日をテーマにしてるだけあって、男子たちが活躍するお話でした。

麻倉の家に全員で集まり、謎の会議を行う6-1男子。なんと東海寺や大形まで集まったらしく、女子たちは不審がります。問い詰めても何も教えてくれないうえに、不自然なですます調を使われるチョコ。大形くんは「です、だねぇ」と、普段の口調が失われていないのが面白かったです。ぬいぐるみには魔力を跳ね返す効果があるはずですが、一応ですます調になっているところを見ると、魔界グッズは別みたいですね。それから、エロエースは話し方が変わるだけでなく、チョコをさんづけで呼んでいたのが新鮮でした。

結局、男子たちの秘密の計画は手作りの柏餅を女子にプレゼントすることでした。これは一大爺の提案だったのですが、男子たちがそれにのってわざわざ会議まで開いていたと思うと可愛いです。なんか甘酸っぱさがある。

 

キレッキレのセリフたち

細かいセリフもキレキレだった第1話。チョコの家に押しかけて来た時の百合ちゃんの「お家で、朝からゴシックロリータを着てるし。百合、こわ〜い!」というぶりっ子嫌味や、女子が集まって作戦会議をしているシーンでの、凛音ちゃんに対する舞ちゃんの心底どうでもよさそうな反応など、久々に6-1メンバーの性格悪い部分(注:褒めてます)が描かれて、これこそ『黒魔女さん』だよなぁと思いました。

それから、大円寺に到着したチョコがお堂の扉を開けるシーン。「(扉を開けたら)最初になんていえばいいんだろ」という地の文があるのですが、それがめちゃくちゃ黒魔女さんっぽかったです。お話の流れとはもちろん関係ないし、心理描写というほど心理描写でもない、ただの独り言みたいな文。このぼそぼそ感、本音感みたいのが小学生時代の私の心に刺さったんだよなあ。

 

 

第2話

あらすじ

  第一小に新しい音楽の先生、小森真由先生がやってきます。アイドルのように可愛い先生に男子たちはメロメロ。その様子を見た舞ちゃんたちは、先生には男子をたぶらかす特別な力があるはずだと考え、チョコに真相究明を依頼します。放課後、音楽室を訪れたチョコは、小森先生がやけに古めかしい楽譜を使っているのを発見。さらに、壁に飾られたモーツァルトの肖像画も奇妙な動きをし始めて……

 

後期っぽい容姿のキャラの登場

以前wikiかなにかでも書かれてましたが(もう書き換えられてましたが)、この作品って美人キャラが多いですよね。特に初期の魔界キャラは絶世の美女だらけで、そのことでさらに異界感が増していたような気がします。

ですが、後期になるにつれて可愛さ、美しさにバリエーションが生まれます。すごく華があるわけではないが美しい・可愛い、みたいなキャラが出てくるようになるんですね。今回登場した小森真由先生もとっても後期らしいビジュアルです。

しかも、ふんわりショートボブにつつまれた、お顔のかわいいことといったら!

でも、ハデなお顔じゃないんだよ。すっと通った鼻は高いわけじゃないし、目も、ぱっちりというより、奥二重ですずしげな感じ。つまり、つつしみ深い、かわいさってやつね。『6年1組黒魔女さんが通る‼︎③』p112

相変わらず、だれかモデルがいるのかな? ってくらい丁寧な描写ですね。小森先生は第3話でも登場したし、あとがきにも出てきたからたぶん先生のお気に入りのキャラなんじゃないかなーと思います。

 

速水くん活躍

今回は速水くん活躍回でもありました。小森先生の可愛さにメロメロになる男子たちの中でただ一人冷静を保っていた速水くん。オカルトオタクの彼は、ピアノの音の狂いに先生が気づかないのは、誰かに呪われているからではないかという仮説を立てていたのです。

例によってその対処法は「なぞるだけでずるいくらいに怨霊が祓えるテンプレート」というインチキオカルト本を使う、というものでしたが、実際に先生は魔界の人だったので、彼の直感は当たらずとも遠からずです。というか、速水くんが怨霊退治とかやる時って大体実際に魔界の人が関わってるんですよね。関係なかったのって無印5巻のプール事件ぐらいのものでは?

あと速水くんは絶対音感があって3歳からバイオリンをやっていることが明らかに。上品だなあ。

 

 

第3話

あらすじ

母の日間近の人間界。第一小では、有名な声楽家を招いてオペラ「魔笛」の鑑賞会が行われることになります。図書委員のチョコは、「魔笛」の内容をまとめたパンフレットを作ることに。音楽の小森先生にも手伝ってもらいますが、彼女はなぜか浮かない様子です。

ギュービッドによると「魔笛」によく似た話が魔界昔話の中にもあるのだとか。さらに、真由先生が持っていた奇妙な楽譜のことなども思い出し、彼女が「魔笛」に出てくる「夜の女王」の娘なのではないかと考えるチョコと大形。そして迎えた音楽鑑賞会当日、思いもよらぬことが起こり……。

 

大形くんのぬいぐるみ、今までにないカジュアルさでつけ外しされる

夜の女王の雷の黒魔法により、魔力封印のぬいぐるみが取れた大形くん。夜の女王に向かって呪文を唱え始めますが、あえなく桃花ちゃんに魔力封印のてぶくろをつけられてしまい、もとの「だねぇ」少年に戻ります。なんだか、今までで一番緊張感のないぬいぐるみ外れイベントだったような……。

近頃魔力漏れを起こしていたぬいぐるみ。その対処のために、桃花ちゃんは魔力封印の毛糸で手袋を編んでいました。しかもコウモリの模様入りです。初めての編み物ですが、連日「モリカワ」に通いつめてピーチこと桜田桃香先輩に教わったそうです。健気で可愛い。ところでピーチと黒雷は6年生編に入ってから最新刊(10巻)まで一度も登場していない(このシーンも名前だけ)のですが、元気にやっているのでしょうか。

 

母の日ネタ

 今回は母の日のお話でした。お母さんにギフト券を贈りつつ、「ママ、元気かなぁ」と空を見上げるギュービッドと、「あたしも、お母さんにぜんぜん連絡してません……」としんみりつぶやく桃花。ギュービッドは山奥の村の出身で、弟と妹がいるらしい……ということはすでに明かされていますが、家族が実際に出てきたことはないですね。桃花ちゃんも『魔女学校物語』でお母さんからの手紙が載っていましたが、ご本人登場はありませんでした。ふたりの家族がどんな人なのかもしりたいなぁ。

娘の小森先生が連絡をよこさないのを怒って人間界にやってきた夜の女王。怖そうな見た目に反して、行動の動機がよくいるお母さんでおもしろかったです。

 

 

全体を通して

03巻も前巻に引き続き、人間界を舞台にしたドタバタもの。「ひみつの男子会!?」というサブタイ通り、男子キャラの活躍が目立つ感でした。図書委員としてのチョコの様子を見ることができたのも嬉しかったです。あと表紙が初期っぽくて好き。

 

 

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【黒魔女さんが通る‼︎】作風の変化を振り返る【2005-2019】

時間が経てば作風が変わるのは当たり前のことですが、初期の巻を読み返すと今とは随分違うなあと感じます。なので整理してみました。

 

 

1〜7巻:ダークでリアルな路線

無印7巻までの黒魔女さんは毒があったなと思います。そしてキャラがリアルだった(特に5−1女子)。こういうと語弊があるけど、みんなわりと嫌な子だった。チョコさんも相当クセの強い主人公だったし、舞ちゃんとか百合ちゃんも権力握るのがうまい女子って感じでしたし。松岡先生もアレだし。

だけど、現実感がないレベルの「巨悪」みたいなキャラはあまりいない。舞台が小学校だし、当然と言えば当然なのかもしれないけど。「身近にいるちょっと面倒くさい人」という感じで、毒は毒でも小学生が読んで「あ〜こういう奴っているよね〜」と感じられる毒だったと思う。

魔界キャラになるとレオナールとか暗御留燃阿とか出てきますけどね。悪役ではないけど、大形の不幸過ぎる来歴とか大半の小学生にとっては現実離れしてるし。でも、当時はあまり魔界に行ってなかったし、魔界キャラも少なかったから、魔界編はあくまで「特別編」という感じがありました。

 

 

8〜12巻:王道児童文学っぽい

8巻以降は毒要素が若干薄まった気がします。理由は多分、7巻を通してチョコさんが成長して、ちょっといい子になったから。ダーク要素は残しつつも、わりと主人公らしい主人公になってきたかなと思います。前ほどきつい毒を吐かなくなるしね。

特に『黒魔女さんのクリスマス』は、それ以前に比べてかなり王道児童文学っぽいノリだなあと思いました。『黒魔女さんのハロウィーン』も感動長編ですが、最後はちょっとおちゃらけて終わる。でも『クリスマス』はチョコの成長がはっきり示されるオチです。「黒鳥千代子は、みんなのおかげで11歳になりました」だからね。この文がめちゃくちゃ深くて好きだっていう話を前に書きましたけど。

 

 

13巻〜6年生編4巻:ダークさが消滅

この時期になると初期のダークな雰囲気はほぼ消滅する。チョコさんが成長したのもあるし、他の既存キャラもみんないい子になってきたから。舞ちゃんとかもそうだし、最たる例は暗御留燃阿ですね。

暗御留燃阿って、巻をまたいで登場するキャラの中では唯一の悪役らしい悪役だったじゃないですか。大形とかも敵になることはあるけど、彼には情状酌量の余地がありまくるし。その点暗御留燃阿はひたすら憎まれ役に徹してました。

だけど13巻でいきなりいい人になっちゃって、もう黒魔女さんワールドに悪役はいなくなったと思いました。暗御留燃阿オタなので余計に。

この時期新キャラもばんばん出てくるのですが、初期っぽい「嫌な子」はほぼいないですね。名前を見れば性格がつかめるようなネーミングのキャラがすごく多いのも特徴。

まあ初期だって、読者キャラの大半は「嫌な子」ではないのですが、ネーミングに関しては13巻〜はかなり特徴的だなあと思います。

 

 

『黒魔女さんの修学旅行』〜 :???

13巻から6年生編4巻まで、物語的にそれほど大きい変化はありませんでした。だけど、『黒魔女さんの修学旅行』から、物語が大きく動いてるのを感じます。おそらく、大形京太郎が本格的に動き出して、大形問題の結末が見えてきたらつかめるかな?と思います。

 

 

【6-1黒魔女さんが通る】02巻を振り返る【感想】

この続き。

 

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第1話

あらすじ

家庭訪問が始まり、松岡先生から問題児だと思われていそうなことが気になりだすチョコ。「人の気持ちに敏感になれる魔法」をつかってクラスのみんなを助け、心証をよくしようと考えます。

ところがみんなの気持ちがわかるようになったせいでおせっかいを焼きすぎてしまい、かえって厄介な事態に。挽回のために魔界グッズを使ったりもしますが、なぜかグッズが余計な機能を発揮しだして逆効果に。さらにチョコの家庭訪問でも、ママと先生が喧嘩をし始めて……

 

みんなのお家&親

今回は授業参観回だったので、みんなのお家のことがよくわかりました!

新たに登場した父母の中でも、マリアちゃんのパパ、リャン・チャオウィさんはこのお話の後も何回か出てきているキャラ。たしかホームページか何かで石崎先生もお気に入りだとおっしゃっていたような気がします。

魔界グッズ「おしゃべり昆布」の誤作動でグーグル翻訳のような奇妙な喋り方になってしまったマリアパパ。「一本道のダンスが、クラスをまとめています」(「一路舞がクラスをまとめています」の意味と思われます)など、もはや魔界グッズに頼らずに直接話したほうがいいのではないかというレベルですが、本人的にはたくさん喋れてご機嫌だったみたいです。彼は6年生編4巻の授業参観にも来ていましたし、キャラブックによるとマリアちゃんのカンフーの師匠もしているらしく、子煩悩でフレンドリーな感じの方みたいです。「わたしの名前はリャン・チャオウィです。どうか、トニーとよんでください」という挨拶は「おしゃべり昆布」の影響によるものですが、授業参観回でも使っていたところを見ると気に入ったみたいですね。

灯子ちゃんの家は小さな弟と妹がおり、お掃除が行き届いていないのが心配な様子。散らかったおもちゃをテキパキ片付ける姿に主婦力の高さを感じました。いつもおだやかな灯子ちゃんですが、小学生にして家事を一手に担っているなんてかなり苦労人ですよね。それから、彼女のお父さんは営業マンなんですね。松岡先生のためにトイレのドアを開けるときも、「さあ、どうぞ!」とちょっとテンション高めなのが面白かったです。

 

インストラクター桃花

今回は大形くんの黒魔法修行の様子から始まりました。黒魔法で危険な「プロヴァンスのマタゴット」を出現させてしまった大形をしかる桃花ちゃん。大形くんはインストラクターの桃花よりも魔力はずっと強いはずですが、修行の内容は呪文の練習と、かなりオーソドックスですね。

桃花ちゃんは丁寧な性格ですが、大形との修行シーンでは軽く怒っていることが多い気がします。とはいえ、6年生編4巻でアグリッパの指導を受ける彼女を見た時の大形の反応からすると、仲は悪くないみたいですが。ここの師弟関係はほとんど掘り下げられてませんが、ぜひ詳しく知りたいです。

 

 

第2話

あらすじ

陰陽師の修行から帰ってきた東海寺くん。霊力がめきめきアップしていて、6-1のみんなのなくしもののありかを言い当てます。驚いたみんなは、次から次へと失せ物探しを依頼するように。チョコが詳しい事情を尋ねると、秘密の修行の様子を見せてくれると言う東海寺。彼と一緒に「回送」ならぬ「回想」バスに乗ったチョコは、運転手が魔界の人物であることに気づきます。さらに二人がたどり着いた先には、思いがけない者がいて……

 

東海寺大活躍

第2話は東海寺くん回でした。一ヶ月に及ぶ修行を終え、第一小に帰ってきた東海寺。京都の山の中で三日間、魑魅魍魎の恐ろしい姿に耐え続けたのだそうです。そのおかげで(?)霊力が上がり、失せ物探しを次々に成功させます。結局それは黒魔法の力だったのですが、陰陽師として本格的に活躍する東海寺くんをみれたのは無印4巻以来なのでうれしかったです。あたらしい真言も披露してくれました。

それにしても、東海寺くんって普通にいい子ですよね。荒廃した寺を立て直すために厳しい修行に耐えるなんて、なかなか小学生ができることではないと思います。亡き迦楼羅の背中をまっすぐ追いかけて立派な陰陽師を目指す姿はとても健気です。今回の彼の台詞からすると幼い頃はまだ迦楼羅が生きていたようなので、うっすらと東海寺華やかなりし時代を覚えているのかもしれないですね。

p122に寺の境内で話し合うチョコと阿修羅のイラストがありますが、こうしてみるとこの二人はお互いを引き立てあうビジュアルをしているなと思います。服の色も正反対だし。ストーリー的にはチョコの相手役は大形がしっくりきますが、絵になるのは東海寺かなと思います。

 

麻倉と東海寺

東海寺と麻倉の友情(?)にも焦点が当たった回でした。いつもチョコをめぐってけんかばかりしている二人。しかし、その戦い方はあくまでもフェア。仁義を重んじる麻倉は、ライバルに抜け駆けはしたくないらしく、東海寺が修行のために学校を休んでいる間はアプローチを控えていました。

今回、東海寺が失せ物探しを連続で成功させ、みんなが驚嘆しているときも、彼はひそかにライバルを心配していたみたいです。東海寺が毎日謎の「回想」バスに乗って修行に行っていることを突き止め、「みんなのために無理をしているのではないか」と推測。そのことを6-1メンバーに伝えます。「ライバルのインチキを暴いて恥をかかせてやるぜ!」というのではなく、東海寺を思いやる方向にいくのが麻倉らしいなあと思いました。しかも、無事を確認すると姿も見せずに去っていくあたり、最高にクールですね。

 

 

第3話

あらすじ

デイキャンプを控えた6-1。美里雷香ちゃんの与那国くんへの胸キュン発言を皮切りに、「男子のどんな行動にドキドキするか」を語り合う女子たち。それを受けて、わざとらしく胸キュン行動をする男子たちにチョコはへきへき。

デイキャンプ当日、いつものように大騒ぎする6-1。その様子を冷めた様子で見ていた秀才・速水くんが、突然親父ギャグを言い出します。さらに女子の命令をテキパキ聞く横綱、ぬいぐるみを抱き締める衣袋寛三先生などにも、女子たちはメロメロに。そこに桃花ちゃんがやってきて……

 

胸キュン男子たち

男子の胸キュン行動について語り合う6-1女子。ぶっきらぼうな男子が急に優しい言葉をかけてきたり、背の高い男子が掲示物の貼り付けをさりげなく手伝ってくれたり、チャラチャラ系男子が試合に負けて涙を流しているのをみると胸キュンするよね〜と盛り上がります。内容もそうですが、いつも冷静な舞ちゃんが急にくだけた言葉遣いになっていたり(「でも、すごい高いところにあって、手がとどかなかったのね。」「で、なにもいわずに、歩いてったの!」)、灯子ちゃんみたいなおとなしめの女子も鼻息を荒くしてるのがめっちゃリアルでした。なんでここまで生々しい雰囲気が出せるんだろう。石崎先生の心の中には乙女が住んでいるのか?

それを聞いて、これ見よがしに胸キュン行動をまねする男子たち。東海寺・麻倉とかはわかるのですが、葉月星夜くんや古島真紅くんも一生懸命真似していたのが意外でした。みんなモテたいんだなぁ。でも正しい使い方ができていたのは大形だけでしたね。

 

チョコは胸キュン女子?

以前から麻倉良子ちゃんに「おにいちゃま(麻倉)をたぶらかす魔性の女」認定を受けているチョコ。今回は図書館少女隊の三人からも「ドジっ子なので男子から胸キュンされるが、それゆえに女子から反感を持たれるタイプ」と言われます。あとがきでは男子たちが女子の胸キュン行動を語っていましたが、それによると、「ドジなことをすると可愛いと思う(速水)」「なんでもないところでころぶ女子もかわいい(大谷)」そうで、やっぱり6-1男子の間ではドジっ子の人気が高いみたい。反対に、「なんでもすぐ『かわいい』というところ(エロエース)」「すぐ群れるところ(横綱)」にはイライラするようです。たしかにチョコは抜けているところはあるし一人でいるのが好きですから、男子にとってはかわいらしいうえにイラッとすることもない女子なのかもしれないですね。ついでに自分の魅力に気づいてないときては、こんなに良い女子はいないし。「好きな異性のタイプ」系の話はお互いのエゴが出ますね〜。

私はチョコのクールでドライで等身大の「ダメな子」でもあるところが好きです。他の女子のしたたかで計算高いところも、男子受けは悪いかもしれませんが私は好きですよ。

 

 

 全体を通して

第1話では家庭のことがわかったし、第2話では麻倉と東海寺がメインだったので、6−1メンがより掘り下げられた巻だったと思います。第3話は細かいセリフまわしのリアルさが復活していたのが嬉しかったです。表紙には大形くんがめっちゃ大きく描かれてますけど、ぶっちゃけそこまで活躍してないような。あとカバラ数秘術が出てきましたが、石崎先生のマスターナンバーは11で、私も11なので嬉しかったです。

 

 

 

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【6-1黒魔女さんが通る】01巻を振り返る【感想】

この続き。

 

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第1話

あらすじ

六年生になったチョコ。ある日登校すると、女子からの圧倒的人気を誇っていたはずの三条ショウくんの周りに女子が一人もいないという異常事態が発生しています。舞ちゃんたちによると、木村悠一というイケメンが隣のクラスに転校してきて、人気がそちらに移っているのだとか。彼を応援する女の子たちはファンクラブまで作っており、アイドル並みの人気です。それだけではなく、翌日、エロエースや横綱までイケメン扱いされ出し、面喰らうチョコ。さらに、なぜかチョコも男子たちから「推しメン」だと言われて……

 

ショウくんにライバル出現

青龍編の時点で重要キャラだったショウくん。無印初期はそのイケメンぶりで女子をキャーキャー言わせていましたが、後半になって読者キャラが増えていくにつれてどんどん影が薄くなってしまったような気がします(キャラブックでも半ページしかもらえてなかったし……)。ですが、記念すべき六年生編第1話の中心キャラはなんと彼。無印から読んできたファンとしては嬉しい限りです!

さて、今回、みんなのアイドルショウくんに強力なライバルが現れます。その名は木村悠一。背が高く、目は切れ長でダンスが上手な、スタイリッシュなモデル系イケメンです。ショウくんはジャニーズ系の王子様顔かと思われますので、同じイケメンでもタイプが違いますね。

そんな超絶かっこいい木村くんの出現に女子は大騒ぎ。反対に、いつも誰かにちやほやされてきたショウくんの周りには誰もいません。その様子を見て心を痛めた舞ちゃん&百合ちゃんは、彼の人気を取り戻すべくファンクラブを作ることに。このころはまだ舞ちゃんはショウくんが好きだったんですよね、本心はともかく行動の上では……。最新刊ではエロエースとカラオケデートまでしてますが、どのタイミングで自分の気持ちに気付いたのでしょうか。

結局木村くんのイケメンっぷりは魔界グッズのおかげでしたが、外見だけでなく行動もイケメン風になっていたところに黒魔法の力の凄さを感じます。チョコと公園で会くわした時の「アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー!(地獄で会おうぜ、ベイビー!)」も最高にスカしていて、ショウくんとのモテる男子同士の会話も読んでみたい気持ちになりました。

 

アイドルネタ多し

魔界グッス「イケ麺」「オシ麺」のおかげでモテモテになったのは木村くんだけではありませんでした。エロエースや横綱、そしてチョコまでもがみんなの人気者に。「ピッチャーのポーズ、やってみせてぇ!」と頼まれたエロエースが、「こうやって、大きくふりかぶって……。」と言っていたのが小ネタが効いていて面白かったです。

「イケ麺」は普通に「イケメン」のもじりですが、「オシ麺」は主に好きなアイドルに対してファンが使う「推しメン」という言葉のもじりです。ずっっと前の話ですが、公式ホームページでギュービッドさまが「嵐の中なら〇〇推し」という発言をしたこともありました。たしか次の更新日に読者から「ジャニーズは『〇〇推し』じゃなくて『〇〇担』って言うんです」というツッコミを受けてた気がします。

そして今回は明らかにPerfumeっぽい後輩3人組が登場しましたね。彼女たち「図書館少女隊」は作者キャラ。石崎先生はPerfumeがお好きなのか……。たしかに、Perfumeの都会的な雰囲気は石崎作品っぽいような? 

 

 

第2話

あらすじ

入学式当日の第一小。舞ちゃんは生徒会長としてスピーチをしますが、なぜかオヤジギャクを連発し、大滑りしてしまいます。名誉挽回の為に「一年生をむかえる会」でとびきりいい演し物をしようと考える舞ちゃん。自宅にチョコや百合ちゃんを呼んで作戦会議を行います。舞ちゃんの家へ行く途中、チョコは迷子になっていた新一年生・伊津守諭吉くんを家まで送り届けますが、道中、妙にオカルトちっくなクイズを出されます。

そして迎えた一年生をむかえる会本番。演し物は全く盛り上がらず、白けた空気に。そんなとき、ある人物が衝撃的な発言をして……

 

怪しい諭吉くん

今回は無印18巻に登場した伊津守麻衣子ちゃんの弟、伊津守諭吉くんが出てきます。

迷子になってしまった彼を、チョコは家まで連れて行ってあげることにします。子どもっぽいなぞなぞを出したかと思えば、やたらマニアックなオカルト問題を出す(しかもその前の問題にヒントを仕込んでおくという小学生離れした小技つき)など、怪しげな雰囲気満点の諭吉くん。特に、同音異義語的な魔界っぽい単語(「神ねんど」「魔ぞ魔ぞ」など)をチョコがスルーしているところではハラハラしました。文字を追っている読者は「『紙ねんど』じゃなくて『神ねんど』なのはおかしいぞ」と思えるんですけど、耳で諭吉くんの言葉を聞いているチョコはそれに気づけないんですよね。読者にはわかっていることが主人公にはわからないという、スリル満点のシーンでした。

結局、彼は黒魔法をかけられていただけの普通の子どもで安心しました。諭吉くんの名前は一万円札に描かれてる福沢諭吉からでしょうが、お札のデザインが変わってしまうので万札を差し出す癖はこれを機にやめた方がいいですね。

 

オカルトな「一年生をむかえる会」

黒魔法がかかっていたせいで、オカルトな演目だらけになってしまった一年生を迎える会。三年生は『地獄少女』の挿入歌である「さくらうた」を歌い、四年生は『墓場鬼太郎』のテーマの「モノノケダンス」を演奏し、五年生は『ヘビ少女』の歌とダンスを披露します。

毎巻思うんですけど、石崎先生のオカルト系知識の幅すごい広いですよね。サバトやら薬草やらの正統派のオカルト(?)だけじゃなく、アニメや漫画にいたるまで。舞ちゃんの入学式用スピーチの中に『魔法少女まどか☆マギカ』のネタもありましたが、年代も幅広いですよね。

なかでも『地獄少女』は小説版も書いていらっしゃいますし、特にお好きなんでしょうか。私も2期までは見てましたが、あの都会の暗さ的な雰囲気は初期黒魔女さんっぽいなと思います。第1期のオープニングのサビで主人公がモノクロの人混みの中を歩いているシーンが、クールかつ影があってあのころの空気感を思い出させます。

オカルト色が強すぎる演し物の連続にすっかり盛り下がる新一年生たち。実はそれは黒魔法のせいでした。入学式、一年生をむかえる会と、生徒会長としての見せ場が連続でめちゃくちゃになってしまった舞ちゃんの苦労がしのばれます。

 

 

第3話

あらすじ

黒魔女学力テストに向けて勉強するチョコ。気分転換に、魔界版フリーマーケットである「フリ魔」に出かけます。魔界の古い雑誌を手に入れ、付録の魔力増強カードもゲット。それを使って「相手を黒猫に変身させる黒魔法」をかけ、成功させます。帰宅後、家にやってきた藍川結実ちゃんから、可愛がっていた野良猫たちの姿を引越し後見なくなったと相談を受けるチョコ。早速結実ちゃんの家に向かうと、どこかで見覚えのある猫が2匹現れて……

 

藍川結実ちゃんが活躍

第1話の中心人物は作者キャラ・ショウくんでしたが、第3話は動物女王・藍川結実ちゃん。彼女もかなり初期に登場したキャラで、これまでも出番は多い方でしたが、掘り下げられるのは久しぶりです。

動物への愛と知識が深い結実ちゃん。特に、チョコに突進してきた黒猫たち(正体は麻倉&東海寺)の目の異常を一瞬で見抜いたのはさすが動物女王だと思いました。そのような鋭い観察眼を持つ一方で、黒猫たちがチョコをめぐって争っているのをみて「ロニャンチック!」とうっとりしているのがかわいいです。なじみの猫たちの姿を見た時のホッとした反応も暖かくて、私が猫でも好きになっちゃいそう。

それから、彼女にはお兄さんがいるという新事実も発覚。家の内部構造まで明らかになったのも嬉しかったです。

 

フリー魔ーケット

「魔界科見学」と称して魔界版フリーマーケットこと「フリ魔」に出かけるチョコ。売っていた古本も、「魔女の友」「魔法少女倶楽部」など、どこかで聞いたことがあるようなタイトルが多くて楽しいです。人間界にも随分魔界スポットが増えましたね。

「掘り出し物を見つけたいなら午前に行くのがオススメ。安く買いたいなら午後がオススメ」と、超庶民的なアドバイスをするギュービッドが面白かったです。そして「ココナッツオイル」のばったもんをつかまされるというオチもあるあるで笑いました。

フリ魔で手に入れた魔力増強カードをつかって、うっかり黒魔女学力テストの試験官に「相手を黒猫に変身させる黒魔法」をかけてしまったチョコ。試験官の名前を当てて元の姿に戻すことにします。トラネコを使い魔にしていることから、彼女が「マクベス」に登場する「魔女Ⅰ」さんだということを突き止めます。第2話の6-2の劇が伏線になっていたとは! そして、「きれいはきたない。きたないはきれい」というフレーズは無印4巻にも出てきましたね。チョコは忘れているようですが……。

 

 

全体を通して

この巻からチョコが6年生になり、タイトルも『6年1組黒魔女さんが通る‼︎』に変わります。表紙の文字も、今までは黒字に赤い縁取りだったのが赤字に黒い縁取りになり、以前より明るい印象に。内容は無印3学期の時点でずいぶんポップになっていましたが、6年生編からは意識的に作風を変えている感じを受けました。この巻が出たのが2016年。そりゃあ 2000年代半ばの巻とは雰囲気変えてきますよね。

また、新規の読者が入ってくることを想定したのか、プロローグ<ほんとうにあったこわい話>が久々に収録されています。1話にたくさんのキャラがでてきた無印3学期編と比較すると、ひとつのお話で活躍するキャラクターの数も絞られ、一人一人の特徴があらためて強調して書かれている気がしました。そのなかでも作者オリジナルキャラや物語上重要なキャラが優先されたように思います。

 

 

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【黒魔女さんが通る】『魔女学校物語』3巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。

 

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第1話 

あらすじ

濡烏先生の尽力により49年ぶりに遠足に行けることになった王立魔女学校の生徒たち。桃花たちフォカロルの三人は、目的地の「魔の山」についてまとめた遠足のしおりを作ります。

遠足当日、行きの馬車の中で濡烏先生に手作りのお菓子をご馳走になる三人。いつもとちがってやさしい先生ですが、馬車を出ると鬼教師にはや戻り。桃花たちは、「いったいどちらが本当の姿なのだろう」と不思議に思います。

黒魔法の使用が禁じられている「魔の山」ですが、ハイキング中にうっかり生徒の一人が呪文を唱えてしまいます。それをきっかけに、眠っていた山の魔力が目を覚ましてしまい……。

 

濡烏先生掘り下げ回

濡烏先生かわいい

生徒指導担当の濡烏先生。とても厳しく、生徒たちから恐れられている先生ですが、第1話ではかわいい一面が明らかになります。

「魔の山」に向かう馬車の中で、桃花たちが作ったしおりを熱心に読む先生。同乗していたジェニファー先生にまでオススメし、伝説の「アマ・ルーラの像」を見つけたら世紀の大発見になりますよ、などどはしゃぎます。普段鬼教師として怒鳴り散らす先生をみなれているので、同僚と楽しそうに話す姿はそれだけで新鮮です。

さらに、授業中の私語の罰としておやつ禁止令が出されていた桃花たちに、手作りのお菓子を披露してくれる濡烏先生。ジェニファー先生に「ムーミン」に出てくるレシピだとバラされてはずかしそうにしているのが可愛かったです。ティアーの「ますます、先生には似合わなくってよ!」という天然失礼発言にも言い返せず、うつむいて赤面してるのギャップ萌えです。

濡烏先生のお菓子を食べて「お口がこんなに幸福でいっぱいになったのは生まれてはじめて」と喜ぶ褒め上手なティアー。「そうか。幸福な気分になれるか。そうだろうな」という返答が心底嬉しそうでいいです。言葉遣いなどは普段と同じなのも先生らしくて好き。

さらに濡烏先生の中学時代の担任、コウナルト・ザ・ピンチ先生も登場。ザ・ピンチ先生の発言からすると、濡烏の年齢は30代後半ぐらいみたいですね。

 

濡烏先生かっこいい

しかし、明らかになったのは可愛い面だけではありません。生徒想いでかっこいい面もフィーチャーされます。

黒魔法の使用が禁止されている魔の山。呪文を唱えると、「アマ・ルーラの洞窟」の魔力が復活し、洞窟に迷い込んだ人を閉じ込めて死なせてしまうという言い伝えがあります。事前に注意を受けていた桃花たちですが、テスがうっかり乾燥魔法を使ってしまい、フランカが洞窟に吸い込まれてしまいます。

あえて先生に知らせず、自分だけでフランカを助けたいと言う桃花。わざとアマ・ルーラの洞窟に閉じ込められます。ところがそこに濡烏先生も出現! 事態を報告せず、生徒だけで解決しようとしたことをしかられます。洞窟内にこだまする怒鳴り声。さすが濡烏先生、どんなときでも威厳にあふれています。

しかし、生徒が違反を隠し、重大問題につながってしまったのは、自身の怖さにも原因があると語る先生。生徒が素直に謝れるようにするのも教師の仕事だ、自分もまだ修行が足りないと反省の弁を述べます。目下の人の前で自分の非を認めるのは簡単なことではないはず。ですが、下手なプライドにこだわるよりむしろかっこいいです。

濡烏先生が唱えた「山の魔女の飛行呪文」によって無事洞窟から脱出する桃花たち。「サシ・グスティエン・ガイネティク・エタオデイ・グスティエン・アズピティク」という古代語で、「野いちごと雲のあいだだけは、なにがあろうと、われを自由に飛ばせたまえ」という意味です。厨二心をくすぐられますね。

 

 

第2話

あらすじ

2学期が始まったばかりの魔女学校。夏休みボケがぬけない生徒たちのために、メリュジーヌ先生は「部屋対抗・創作黒魔法大会」を開催します。オリジナル黒魔法の製作に熱を入れる桃花たち。なかでもマカズキンはのめりこみすぎて、他の授業がおろそかになってしまいます。

それだけではなく、桃花やティアーの大会に対する姿勢にも文句をつけ始めるマカズキン。ついには「魔女学校をやめる」とまで言い出します。仲の良い三人組に戻るため、けんめいに創作黒魔法を考える桃花たちですが……。

 

桃花&ティアー、マカズキンと喧嘩する

小説家志望で、常にネタ集めや取材(ゲテモノ料理作りなど)を怠らないマカズキン。研究熱心でのめり込むタイプですが、今回はその熱心さが事件を引き起こしてしまいます。

カイムに「未来の手紙」を出して創作黒魔法のヒントにしようとする桃花とティアー。その態度が悠長すぎるように見えたマカズキンは激怒。ついには学校を辞めるとまで言い出します。

普段は発想力があって面白いマカズキンですが、今回は桃花たちを悪い意味で振り回します。他の部屋の子たちが埋めた「けんかの種」を勝手に掘り起こしてみたり、自分が原因で「最低の部屋」になったのにルームメイトに逆ギレしてみたり……。かなりめんどくさいですが、そうなってしまった背景には、「小説家になる」という夢の存在がありました。

ひそかに魔界の作家に自作を送り、アドバイスをもらっていたマカズキン。本人曰く”偶然”アドバイスを見てしまったティアーによると、「もっとオリジナルな作品を書くべきだ」「いまのままでは、ただのダジャレといわれても、しかたない」と書いてあったそうです。普通に読んでもグサグサきますが、石崎先生からの言葉だと思って読むとさらに重いですね。手紙の覗き見に驚異的な能力を発揮するティアーに癒されました。

創作黒魔法にもオリジナリティを求めるあまり、周りが見えなくなってしまったのではないかと推測する桃花たち。マカズキンの夢に対する本気度はすごいです。その甲斐あって本編6年生編ではみごとデビューしてました。 

 

創作黒魔法大会

大会本番、さまざまな創作黒魔法を披露する生徒たち。「ハアゲンティ」のメンバーがつくった「死異流」は、憎い人のおでこに貼って「このうらみ、地獄へ流します。いっぺん、死んでみる?」と唱えると相手が消えるシール。無印から恒例の地獄少女ネタです。世代なので嬉しいです。

桃花とティアーは二人で参加。彼女たちが作ったのは「意図電話」。一見ただの糸電話ですが、紙コップに向かってマカズキンへの思いを述べると、その「意図」が伝わりマカズキンが登場! 駆け寄る二人。p143の抱き合う三人のイラストが良いです。

しかし優勝は「ベリアル」の「けんかの種」と「魔種」でした。実は、マカズキンがやたら攻撃的だったのは「けんかの種」を掘り返したため。この種はもっているとイライラするという効果があるのです。黒魔女をもコントロールするとは、ベリアルの三人は将来有望です。

 

 

第3話

あらすじ

ユールサバト間近の魔女学校。桃花たち二年生は、「出前授業」に誰が来るのかで大騒ぎ。「出前授業」とは、魔界の社会人を招いて行われる特別講義のこと。ティアーは「魔ティシエ」のロリポップ・ココアに来て欲しいと思っています。

出前授業当日、あらわれたのは「魔ティシエ」のフィリピーネ。超一流店「メーデル」を開く彼女の登場にみんな大興奮ですが、なぜかティアーだけは浮かない顔をしています。理由を尋ねると、とんでもないことが明らかになって……。

 

ティアーの知られざる過去

第3話では超絶お嬢様のルームメイト・ティアーの過去が明らかになります!

出前授業に現れた美人魔ティシエ・フィリピーネ。実は彼女はティアーの兄・カールの妻。ですが王族ではありません。フィリピーネは平民なので、結婚にあたり、カールが爵位を捨てたのです。

5年前、自作のケーキを持ってカールの元にやってきたフィリピーネ。やがて二人は恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚しました。ティアーは兄がフィリピーネの店の広告塔として利用されたと思い込んでいるため、彼女のことが好きではありません。さらに授業の合間に、カールが見習い魔ティシエとしてバラの花びらをちぎっているのを見て激昂し、部屋に帰ってしまいます。

結婚当時中学生の彼女にとって、12歳も年上でかっこいいカールは憧れの存在。フィリピーネが兄を騙したとか、貴族の身分を捨てるなんてとか色々言ってますが、大好きな人が自分の元を去っていくのが寂しかったというのが本音だろうと思います。そのうえ久しぶりに会った兄が、自分からしたら下働きがやるような仕事をさせられているのを見て軽んじられていると感じ、それをおとなしく受け入れている兄自身にも裏切られたと思ったのかもしれません。

 

カールの言葉がグッとくる

兄妹を和解させるため、カールに話しかけに行く桃花。あいにく次の授業の準備中でしたが、笑顔で丁寧に対応してくれるあたりさすが元貴族だと感じます。

魔ティシエの仕事で最も大事なのは「同じケーキを作り続けること」だと言うカール。自分にとってはたくさん作るケーキのうちの一つでも、お客さんにとってはただ一つのケーキだから決して気を抜けないのだと語ります。「一見、つまらなそうな、同じことのくりかえしでも、こつこつとつづけていれば、わたしも、わたしの仕事も、だれかにとってのオンリー・ワン、そしてスペシャル・ワンになれるかもしれない」という言葉が沁みました。いずれ国王になったかもしれないカール。「オンリー・ワン」なんて目指す必要すらなさそうですが、自分の努力の成果が、誰かの「オンリー・ワン」になれることを実感したかったのかもしれません。

ティアーの怒りを解いたのは桃花たちが作ったカラメルソース付き焼きプリン、そしてカールが花びらをちぎって作った「バラ水」でした。「バラ水作りは下働きではない」と妹に伝言して欲しいと頼んでいましたが、結果的に自身の仕事でそれを示したのがかっこいいです!

 

 

全体を通して 

サブタイが「友だちのひみつ」というだけあって、マカズキンやティアーについて深く知れる巻でした。第1話では濡烏先生が掘り下げられましたが、「おなじみのあのキャラの 意外な一面が明らかに!」ということが全話共通していたと思います。

この巻が発売されたのが2016年。もう4年近く続きが出ていないですが、あとがきによるとこれで完結ではなく、今後私立ブラックウィッチ学園のことなども書かれる予定みたいです。現在(2020年3月)本編で大形問題が絶賛進行中なので、続編が出るのははやくてもそれがひと段落してからだと思います。気長に待ちましょう。

 

 

 

【黒魔女さんが通る‼︎】『魔女学校物語』2巻を振り返る【桃花外伝感想】

これの続き。 

krmjsnfan.hatenablog.jp

 

 

第1話 料理当番事件

あらすじ

王立魔女学校の一年生は入学後、2週間ずつ2部屋ごとに全校生徒の食事を作る当番が割り当てられます。桃花たちは、ライバルのビルトたちと一緒にご飯を作ることに。料理コンテストでの優勝経験もあるビルトに負けていられないと、鼻息を荒くするマカズキンたち。ティアーが自宅から持ち込んだ超高級調味料とレシピ本を使って、「おいしくて、先生や生徒から感謝される料理」を作りますが……。

 

ギュービッド世代が掘り下げられる

学生時代のギュービッド様たちの様子がかなり描かれた第1話。『黒魔女さんが通る』本編のファンとしても嬉しい限りでした。

お料理当番として、ガマンベールチーズ入り早死ライスを作る桃花たち。工夫を凝らした料理を暗御留燃阿先輩に褒めてもらって舞い上がります。

そんなあこがれの先輩にほめられるなんて……。

きっと、「地獄にも落ちる気持ち」っていうのは、こういうことなのね……。

石崎洋司『魔女学校物語 お料理当番事件』(2016)p54

超絶優等生のうえに、サバトの時の高等女司祭姿には「一年生全員、うっとりとしてしまった」ほどの美貌の持ち主の暗御留燃阿先輩。早死ライスは絶賛してくれますが、一緒に出したチキンスープの方は後味が若干苦かったとやや厳しい評価。このスープの苦味は後々の伏線になります。キャラブックでグルメという設定が加えられていましたが、実際味覚の鋭さは確かなようです。

ちなみに、一緒にいたギュービッド先輩はむしろその苦味が気に入った様子。この好みのちがいがそれぞれらしくて好きです。彼女たちは二人部屋なんですかね。

 

アクは「悪」?

チキンライスの苦味の正体は、ティアーがとり忘れた「アク」。魔界の人が「アク」入りの食べ物を口にすると、「アク」が「悪」になり、いろいろな悪さをするようになるのです。

そのせいで授業中にあくびをしたり、悪趣味なアクセサリーを見せびらかしあったりするようになってしまった生徒たち。なんと、高等女司祭の暗御留燃阿先輩ですら、初代校長像の腕でアクロバットをするギュービッドを見て大喜びしています。このシーンはイラストがついているのですが(p63)わたしは暗御留燃阿オタなので彼女の制服姿が見れたのがとっても嬉しかったです! 

大昔、公式ホームページにかつてあった『Q&Aの小部屋』にて、「(無印)3巻2話で学生時代のギュービッドと暗御留燃阿が着てる服はなんですか?」という質問に対して、石崎先生が「王立魔女学校指定のコートで、その下は(無印)8巻で描かれた制服です。ところで、暗御留燃阿があの制服を着ているところ、見てみたいと思いませんか?」と回答されていたのですが、約10年の時を超えてようやく見れました!

あまりの混乱ぶりに禁足令を発動させる教師たち。禁足令とは先生専門の黒魔法で、生徒たちを有無を言わさず部屋の中に閉じ込めておくことができるみたいです。一列に並んで呪文を唱える先生たち、強そうでかっこよかったです。

結局ブラヴァツキー先生のひらめきによって原因が発覚し、桃花たちはアク抜きの料理を作らされる羽目に。ところが生徒たちの「アク」はなかなか抜けませんでした、なぜなら、早死ライスに入れた「ガマンベール・チーズ」には、「食べると我慢強くなる」という効用があり、体内のアクまで我慢強くなってしまったから……という、おあとがよろしいお話でした。

 

 

第2話 そうじ洗濯当番事件

あらすじ

ソーウィン間近の王立魔女学校。桃花たちはそうじ洗濯当番として、井戸で毎朝洗濯物を洗っています。

そんななか、桃花はティアーから、ハロウィーン・ナイトクルーラーという、大昔、国王の離宮に現れた不思議な人物についてきかされます。さらに他の生徒から、「ソーウィンの日、生徒がサバトに出かけている間に、寄宿舎でぬきうちの持ち物検査が行われている」という話を聞く桃花たち。洗濯当番として井戸に行くついでに、校則違反のものを隠しておいてくれないかと頼まれます。先輩たちの目を盗みつつ井戸の中に隠そうとする桃花たちですが、そこにはすでにたくさんのものが隠されていて……。

 

ロマンチックで青春っぽいお話

校則違反の品々を井戸の中に隠す桃花たち。ヘアアイロン、お菓子、ス魔ホ、漫画……。校則が厳しい王立魔女学校ですが、みんな先生の目を盗んでいろいろなものを持ち込んでいるんですねぇ。なかでも、タニヤの「賞状の筒の中にヘアアイロンを隠す」という技は実際にやってる子がいそうで笑いました。

第2話は学校に代々伝わる真偽不明の噂話という、すごく青春感のあるテーマでした。井戸の内側の釘に無数の袋がかけられているのを目撃するシーンがよかったです。メリュジーヌは「いまではあの話を信じる子も減った」と言っていましたが、ふだんは信じていないふりをしていても、みんなどこか否定しきることはできないというのが、あの袋の山に現れている気がしました。

ソーウィンの後、桃花はメリュジーヌから噂の真相を聞きます。若い頃、大事な手紙を井戸の中に隠しているのを目撃された先生。とっさに、「ソーウィンの晩に、その人にとって一番大事なものを奪う悪霊が出る」と話し、それが形を変えて今でも残っているそうです。ちなみにそのとき隠そうとしたのは若かりし頃、悪霊の国で共に戦った騎士・ゴンサロからの手紙。『黒魔女の騎士ギューバッド』に出てくる人物です。「男のように美しく、女のように力強かった」「男のように荒々しく、女のようにうるわしかった」と評されていましたが、ゴンサロは女性として生まれながら男性として騎士団に仕えていた人なので、そのことかなと思います。

といっても、『黒魔女の騎士ギューバッド』でも手紙の詳細は明らかになっていないし、なによりこのゴンサロ評にはなみなみならぬこだわりを感じるので、どこかでまた掘り下げられるかもしれません。

 

ハロウィーン・ナイトクルーラーのなぞ

 ハロウィーン・ナイトクルーラーとは、大昔、ソーウィンの晩に国王の離宮に現れ、若い女性たちの恋文を盗んで去っていったという伝説上の人物です。その後、離宮は使われなくなり、火の国王立魔女学校に姿を変えたそうです。

 メリュジーヌによれば、ハロウィーン・ナイトクルーラーがソーウィンの日に恋愛の証拠をさがしまわっているのは作り話ではなく、本当のことだとか。ちょっと信じられない話ですが、このシーンの先生が「でもたしかにいるんだ」と妙に確信に満ちているのが気になります。しかもこの件は門外不出で、しつけ協会のなかでも限られた黒魔女たちと歴代の王立魔女学校校長にしか伝えられていないそうです。なにか秘密がありそうですね。今後の展開に期待です。

 

 

第3話 ホームシックはつらいよ

あらすじ

冬休み前の王立魔女学校。久々に故郷に帰れると浮かれている生徒たち。汽車賃がなく帰郷できない桃花は、母親からの手紙を読み返して寂しさを感じています。ひとり回廊を歩いていると、エレオノーラ先輩に呼び止められる桃花。話をしているうちに、先輩も一回も里帰りしていないことを知ります。そのときの様子から、彼女がホームシックになっているのではないかと思った桃花たちは、あの手この手で先輩の故郷についての情報を集めます。やがて、エレオノーラの同郷の人物から詳しい事情をきいた彼女たちは、ある考えを思いつき……。

 

エレオノーラ先輩掘り下げ回

エレオノーラ先輩の秘密

桃花たちの学年の生活監督官・エレオノーラ先輩。厳しく、感情をあまり表に出さない先輩ですが、第3話では彼女の知られざる一面が明らかになります。

母親からの手紙を読み返して恋しがる桃花。たまたまエレオノーラ先輩と出くわします。先輩は、桃花が実家から送ってもらったイヤーマフラーに触れ、「いいなぁ、うらやましいなぁ」と呟くのです。そして、自分も入学以来一度も帰郷していないし、これからもそうだろうと語ります。

このシーン、「うらやましい」と言ってしまうところはもちろんなんですが、言外にも先輩の望郷の思いや優しさがにじんでいていいです。桃花の手紙からシルバーパーチの葉が落ちたのを見て故郷について聞きたがったり、話を聞くと何度もうなずいていたり……。うっかり本音を漏らしてしまったのも、桃花が実家を恋しがっているのが自分と重なったからでしょう。詳細を尋ねられると言葉を濁し、あくまで生活監督官と後輩としての距離を保とうとするのもエレオノーラらしくていいです。

ちなみに、このとき彼女が濁した故郷に帰れない理由とは、祖母から「卒業するまで帰らず勉強に励め。生活監督官と高等女司祭になり、トップで卒業しろ」と指導されているから。おばあさんは王立魔女学校の出身で、教師をしていたこともあるそうです。そして、「校長になる」という自分が果たせなかった夢を孫に託しているのだとか。なんだか業を感じる話ですね。

 

先輩後輩の絆

エレオノーラ先輩のホームシックを解決するためにあれこれ考える桃花たち。最初の作戦は、学校のパソコンに魔カイプ(スカイプみたいなもの)をダウンロードし、先輩の実家を探り当ててそちらでも魔カイプをいれてもらう、というもの。ところがエレオノーラの実家を誰も知らないという事態が発生したうえに、校則違反として魔カイプを削除されてしまい、あえなく失敗。先輩はともかく、同級生ですら実家を知らないってすごいですね。

2番目の作戦は、魔女学校に出入りするワイン業者のシェリルの話を聞いて思いついたもの。彼はエレオノーラと同郷で旧知の仲なのです。シェリルから、故郷・ヘレスの風景の美しさや、先輩がなついていたというじいやとばあやの話を聞いた桃花たちは、図書館の部屋野先生の協力のもと、それをセット魔法で再現することにします。内容は、じいやとばあやのちょっとした痴話げんか。台本を手がけたのはマカズキンですが、ばあやに言い負かされそうになるじいやの様子が妙にリアルで、さすが作家志望だなと感じさせます。

じいやのデタラメ話を見抜くため、犬に真相を聞いてみようというばあや。そこでなんと先輩が劇に参加し、ワンニャンプリター魔法を発動! ちゃんとアドリブにも答えるファイヤーナイト号偉いです。さらにマカズキンもノリノリでアドリブセリフを言い、非常に楽しい雰囲気に。先輩も今まで見たことがないくらいうれしそうな表情をしています。

桃花たちが変身したじいや・ばあやに、「下級生に慕われていることが、なによりのよろこびです」と伝えるエレオノーラ先輩。桃花たちの思いをしっかり受け止めてくれたようです。厳しい学校生活の中でも、後輩の存在を支えにして頑張ってくれてたんですねぇ。普段クールで威厳がある先輩なだけに、この発言は感動的でした。

 

 

全体を通して

桃花やフォカロルの二人に焦点が当たっていた 前巻に比べると、先輩方の出番が多い巻だったと思います。とくにエレオノーラ先輩はがっつり掘り下げられましたし。第1話は好きなキャラ大活躍で個人的にも嬉しく、第2話はちょっと不思議な雰囲気が漂っていて面白かったです。

   

 

次巻はこちら

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