黒魔女さんが通るブログ

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青い鳥文庫『黒魔女さんが通る‼︎』 をだらだら語る  

【6-1黒魔女さんが通る】『黒魔女さんの夏休み』を振り返る【感想】

この続き。

 

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大形くんによるプロローグ

今巻はなんと、大形くんの一人称プロローグからスタートします!

前巻「黒魔女さんの修学旅行」で魔力封印のぬいぐるみを外すことに成功した大形くん。「夢の書」にうつった6-1の楽しげな光景をながめながら、「魔力が封印されなければ、こんなに愉快な生活を送っていたはずなのに」と悲しみます。

生まれつき魔力があった大形くん。幼稚園児のころ、暗御留燃阿に弟子にさせられるも、予想外に魔力が強いとわかると魔力を封印され、無印3巻でチョコにぬいぐるみを外されるまで意識がない状態で生きてきたのでした。だからこそ、魔界への復讐に燃える邪悪な魔法使いになってしまったのです。

大形「ぼくをこんなひどいめにあわせた暗御留燃阿は、魔界の黒魔女しつけ協会から罰を受けた。でも、それだけ。それどころか、魔力が強すぎるモンスターみたいに、ぼくをあつかうようになった。 ゆるせない! ぼくは被害者なのに!」『黒魔女さんの夏休み』p8

キタ――(゚∀゚)――― !!

大形問題に暗御留燃阿が関わるフラグキタ―――‼︎

前述した事情からわかるように、大形くんが恐怖の魔法使いになったのは100%暗御留燃阿のせい。なので大形も彼女に対しては特に強い恨みを持っています。無印4巻でコントロール魔法をかけてシンデレラの継母役をやらせた上、ヤギの姿にまでしたことからも、その憎しみのほどが伝わってきます。

ですが12巻ラストで暗御留燃阿はグラシュティグ会長に命じられ、チョコたちの仲間になります。だからと言ってこの二人のわだかまりは全く解消していないはずなんですが、それ以降、大形が妙に大人しかったんですよ。ぬいぐるみは何度も外れているのに暗御留燃阿の暗の字も出さないし、近くにいることはわかっているはずなのに復讐にもいかない。けど依然として魔界への恨みはあるらしい……。これはどういうことなのかなと、暗御留燃阿ヲタとしては思っていたわけです。

ところが今回、大形くんは改めて暗御留燃阿への恨みの気持ちを口にしました。発売日前の「ためし読み」の時点でこのプロローグは全部読むことができたのですが、その時からいい予感がしましたね。

 

第1話について

あらすじ

8月の全校登校日の朝、「ホンネ聞き取り魔法」の修行に苦戦するチョコ。しかし 、6-1の教室に着くと、呪文を唱えなくてもみんなの心の声が聞こえるようになります。

6-1では、町内会の夏祭りに何をやるかという議題で話し合いが行われています。いくつか意見が出たものの、最終的には大形(分身)が提案した肝試し大会をやることになります。

帰宅後、「肝試し委員長」に任命されたチョコに、ギュービッド・桃花・暗御留燃阿が相談に乗ってくれます。そこでの3人の様子に違和感を覚えるチョコ。そして5日後、肝試し大会本番に現れたのは、意外な人物で……。

 

暗御留燃阿の出番が多くて嬉しかった

暗御留燃阿は18巻から7巻ぶりの登場。しかも今回は13巻以降登場するたびに出てきた「暗御留燃阿さん、本当に優しい黒魔女さんになりましたね」という選挙カーのようにしつこいヨイショもなく、非常に読みやすかったです。

チョコの部屋でランチミーティングを開くギューチョコ桃花&暗御留燃阿。なんと暗御留燃阿がお昼ごはんをつくってくれます! 中学生男子のような勢いで料理にがっつくギュービッド、暗ギュー的に萌えました。p53の「そんな化け物になること、わたしの美的センスがゆるさないわ!」というセリフも、悪役時代の高飛車な感じがあって好きです。こういう暗御留燃阿がいいんだよ。

挿絵は亜沙美先生ですが、p43の暗御留燃阿は3巻か6巻を参考に描かれたのでしょうか。胸元のペンダントはそれ以外の巻ではつけてないし。やったぜ的には3巻の初登場時のイラストが超絶美人で好みです。

 

大形くんのセリフがとてもよい

肝試し当日、チョコ&6-1を魔界に連れて行こうとする大形くん。すかさず止めに入り、ぬいぐるみをつけようとするギュービッドたちですが、見たことも聞いたこともない呪文を唱えられ、魔界に逃げられてしまいます。

人間界から去る直前、ホンネ聞き取り魔法でチョコに気持ちを伝える大形くん。「ひとりぼっちはさびしいよ。やさしい黒鳥さんに、そばにいてほしいんだ」と言い残します。いつも魔界への憎しみを語っている大形くんが、繊細な子どもの一面を自らあらわにしたことにグッときましたね。プロローグもそうですが、今巻は強がりや怒りの裏にある彼の傷つきやすさや年相応な部分が見え隠れしていたのが良かったです。

それに比べて我が推しはさぁ……。

「いいえ、あなた(大形)は魔物よ。」って……。そのセリフを一番言っちゃいけない人が一番言っちゃいけない相手に向かって……。

無印18巻の桃花への発言もそうですが、改心後の暗御留燃阿は「いい人になった」という設定のわりにそれに反するような言動をけっこうしているので、結局どんなキャラなのかいまだによくわからないです。

まじでなんでこのセリフ言わせたんだろう。いくらなんでもあんまりな発言なので、何か考えがあってのことだと思いたい。

とはいえ、暗御留燃阿が大形問題についての責任を認めたのはうれしかったです。ここ↓に書いた問題が一つ解消されかかってるような気がして。

 

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それから、大形と暗御留燃阿の会話(?)シーンが描かれましたね。実は、この二人の会話が描かれるのはシリーズ全体を通しても初めてです。これが最初で最後じゃありませんように。

 

 

第2話

あらすじ

桃花ちゃん、東海寺家とともに麻倉家のお盆バカンスについていく羽目になったチョコ。良太郎&阿修羅に加え、個性豊かな家族たちもチョコ争奪戦に加わりヘトヘトになります。

麻倉家の別荘付近の海で泳いでいると、塊水浴という死霊の群れに襲われかけるチョコ。さらに夜になると、寝室のドアがノックされるような音がします。チョコ&桃花が音をたどっていくと、謎の階段を発見します。そこで二人の目に入ってきたのは、信じがたい光景で……。

 

「人は死んだら灰になってはいさようなら」って本当?

シリーズ開始以来、一貫して幽霊の存在を否定し続けてきた黒魔女さん。ところが今回、それを覆すような出来事が起こります。東海寺阿修羅の亡き祖父、迦楼羅が現れたのです。彼はチョコに重大な問題が降りかかっているはずだと話し、烏枢沙摩明王の真言を教えてくれました。

迦楼羅は魔力を持っていますが、生前は黒魔女ではなく、陰陽師として活躍していました。無印2巻のギュービッドによれば、陰陽師の霊力は白魔術にあたり、黒魔術と対立します。

迦楼羅の言う「重大な問題」とは前後の文脈的に大形問題のことと考えていいと思います。そして第3話では教わった真言を唱えた結果、大形の亡き祖父・京太郎が復活しました。彼らは故人です。つまり、黒魔術の世界ではナシだった幽霊の存在が、白魔術ではアリということになります。

「幽霊は存在する」というだけでも衝撃ですが、それが大形問題に関わるとなるともう目がはなせないですね。

 

まさかのご先祖さま登場

チョコをめぐってあらそう麻倉&東海寺。今回はなんと彼らの祖先、豪太郎&迦楼羅が登場します。実はこの二人、若おかとのコラボ作品ではすでに登場しているのですが、本編にまで登場してくるとは思わなかったのでびっくりしました。しかも若い頃には一緒に命がけの旅をした仲なんだとか。迦楼羅は石崎先生もお気に入りらしいので、外伝への期待も高まります。

それにしても、麻倉&東海寺のキャラがまさかこういった形で深まるとは思ってもみなかったです。本人たちは対立してるけど祖先はともに大きなことを成し遂げた仲だなんて、少年漫画の主人公とライバルみたいな関係じゃないですか。

 

 

第3話

あらすじ 

お盆の衝撃的な出来事から終日後。迦楼羅が唱えた呪文を練習するチョコ。メグに誘われ、「ホソカワ」に自由研究の材料を買いに行きます。

すると、客の中に魔界の住人らしき二人組を発見します。彼女たちから、8月31日に二級黒魔女昇格の認定式が開かれること、そのときまでに魔界グッズを創作し、持参しなくてはいけないことを聞いたチョコ。ギュービッド・桃花と協力し、なんとかグッズを作り上げます。

そして迎えた31日。認定式の最中に現れ、チョコを魔界に連れ去ろうとする大形。とっさに迦楼羅に教わった呪文を唱えると……。

 

創作魔界グッズはまたどっかで使いそう

二級黒魔女昇格の認定式に持って行く呪苦題をつくるギューチョコ桃花。桃花ちゃんが作ったのは「愛スクリーム」にリップを混ぜた「利ップ」。気になっている人が唇に塗ると、自分のことを好きになってくれるというアイテム。でも桃花ちゃんの片思いの相手の草太郎くんは、リップクリームとか使わなそうですね。

ギュービッドの「ウエッとティッシュ」は、普通のウエットティッシュにダンゴムシのフンやらどぶ水やらを染み込ませたもの。これで大形の顔を拭いてゲロをはかせたすきにぬいぐるみをかぶせるというストレートすぎる作戦に笑いました。

最終的に完成したのは「好感メモ蝶ふせん」。一見ただのふせんですが、これにメモを書いて飛ばすとお互いのいいところが伝わり合うというスグレモノ。これは「黒魔女さんと悪魔の証明」にて、迦楼羅とのやりとりに使われましたが、私はもう一度使われてもおかしくないなと思っています。おそらく、大形を完全改心させる時にまた出てくるんじゃないかと。

 

京太郎が謎すぎる

前巻に引きつづき、今巻も衝撃的なオチでした。烏枢沙摩明王の真言によって大形の亡き祖父・京太郎が復活し、孫の魔力は自分譲りだと告白したのです。

これを読んだ時本当にびっくりしました。なんたって大形問題に超重要そうな人物が登場する&大形の魔力の由来明らかになる&幽霊ネタのトリプルコンボですから。この問題を本格的に解決に向かわせようという気合いを感じました。 

ちょっと不安なのはこの話以降大形がいい人になったみたいな描写が続いていることです。なんでいい人になったのかはちゃんと掘り下げてほしいし、京太郎が物語的に美味しいところを全部持って行くみたいな展開にはなってほしくないなと思ってます。まあ心配することでもないでしょうが。

 

 

イラストが亜沙美先生に

これまで黒魔女さんシリーズのイラストを担当していらっしゃった藤田香先生が亡くなり、若おかの亜沙美先生がその役目を引き継がれました。

令丈先生のtwitterで訃報を知った時は本当にショックだった。数巻前から体調がすぐれないということでしたが、まさかこんなことになるなんて。黒魔女さんは藤田先生のイラストで最後まで読めると、当たり前のように思ってました。

私が黒魔女さん読み始めたのって、無印1巻の表紙のメグに一目惚れしたからなんですよ。特に初期は線が太めでちょっとゴツゴツしてる感じで、それが『黒魔女さん』の雰囲気にすごく合ってた。かわいいけどかわいいだけではない絵で、『黒魔女さん』も一筋縄ではいかない児童書だから、ベストパートナーすぎる!と思いました。

今巻から亜沙美先生がイラストを担当されてますが、亜沙美先生っぽさがありつつ、黒魔女さんワールドらしくもある絵で、「プロってすげぇな……」と思いました。石崎先生も亜沙美先生も、体に気をつけて頑張っていただきたいです。

そして藤田先生、こんなに素晴らしい黒魔女さんワールドを作ってくださって、本当に本当にありがとうございました。

 

 

 

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【6-1黒魔女さんが通る】『黒魔女さんの修学旅行』を振り返る【感想】

この続き。

 

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あらすじ

今巻は「白雪姫」をベースに物語が進んでいきます!

修学旅行に向かうバスの中でうっかり呪文を唱え、魔界へ来てしまったチョコ。しかもたどり着いたのは黒魔女さん2級認定テストの会場、セゴビア城! 自分が進級できなければギュービッドがインストラクターをクビになってしまうことを知ったチョコは、ロリポップココアの魔力増強お菓子を食べてテストに備える。ところがそれが城の主、理夫人の怒りを買ってしまい、殺されそうになるチョコ。しかしお城の番人が矢を放とうとしたまさにその瞬間、大形くんが現れ、チョコを助けてくれる。森に逃げ込んだチョコを待ち受けていたものとは……

 

ギュービッドとチョコ

今巻はギュービッドとチョコの師弟愛が『黒魔女さんのハロウィーン』並に丁寧に描かれたと思います。ある意味初期っぽいような。

一番衝撃だったのは、チョコがギュービッドに「あたしが修行をやめると同時にギュービッド様が魔界を追放されれば、二人はずっと一緒にいられる」と言ったことですね。自分が二級試験に合格できるか、ギュービッドがインストラクター免許試験を突破できるか不安なチョコ。もしどちらかが失敗した場合は、師弟関係が解消になってしまいます。そんなとき思い出したのは祖母・ティカの過去。ティカは魔界を追放されることで、人間の恋人・伊蔵と人生を共にすることができました。ギュービッドが魔界追放になれば、たとえ試験が不合格でも、祖母たちのようにいっしょにいつづけることができると考えたわけです。

わりと冷静な状態でこの発言をするから一層、チョコさんにとってのギュービッドの存在の重さというのがずしりと感じられました。物語冒頭で大形に試験に落ちたら師弟関係解消だと伝えられた時も、「そりゃあね、あたしの目標は、一日も早く黒魔女修行をおえて、ふつうの女の子にもどるだったよ。(略)でも、いいの! それより、ギュービッドといっしょにいることのほうが、ずっと、ずっと、ずっと、だいじなことなんだよ!」と言ってます。無印1巻では「この黒魔女、早く魔界に帰ってくれないかな」みたいな発言がなんどもありましたけど、いまはそれよりも、黒魔女として魔力を高めることよりも、「ギュービッドといっしょにいる」ことがチョコさんの最大の望みなんだなぁ……。

それを聞いたギュービッドは、「あたしはお前をそんな意気地なしに育てた覚えはない」とさとし、必ず二級にうかれと激励します。今まで幾度もいっしょにピンチを乗り越え、チョコの言葉が心からのものであることはわかっているはずのギュービッド。その思いを受け止めた上で、師匠として弟子を導こうとする姿、最強にかっこよかったです。もしかしたら師弟関係が終わってしまうかもしれない状況で美しい師弟愛を見せられるとグッときますね。

やっぱり、『黒魔女さんが通る‼︎』の根幹にあるのは、黒鳥千代子とギュービッドの絆なんですよねぇ。この二人の関係なくして『黒魔女さん』はありえないんですわ。

 

 

 

大形くんついに本気出す

5巻3話以降、長らく停滞気味だった印象のある大形問題。一応、12巻や16巻でぬいぐるみを外したりしてるんですが、毎回チョコたちがぬいぐるみをかぶせて一件落着☆みたいなオチで、あんまり大きな進展はなかったのかな〜と感じます。

ですが今巻はまさかのぬいぐるみ再装着なし。燃やしちゃったし。初めてこのラストシーン読んだ時は相当テンション上がりました。

今回の大形の何が素晴らしいって、読者をも裏切ってきたことですね。彼は最初、殺されそうになったチョコを助けにきます。そこで、ギュービッドがインストラクター免許取得の試験を受けること、それに落ちたらインストラクター黒魔女を失格になること、チョコはしばらく身を隠していたほうがいいことを伝えます。

このシーンで大形くんは理夫人の部下の攻撃から身を挺してチョコを守り(イラストも最高)、なぜそこまでしてくれるのか尋ねられると「仲間だねぇ。放っておけないねぇ」「守ってあげたいねぇ」と答えます。大形の口から出た「仲間」「守ってあげたい」という言葉や、チョコを守る姿に心を動かされた読者は私だけではなかったはずです。この二人は作中でカップリング的な描かれ方をすることも多いのでなおさらです。

その後も王子様姿でエレガントにチョコをエスコートしたり、励ましたりしてかっこよさを全開にする大形くん。しかし、その裏には別の計画がありました。実は、セゴビア城を受験会場に指定したのも、理夫人がチョコを殺すように仕向けたのも、「いくじ梨」を食べたチョコを試験中のギュービッドが助けたのも、すべて大形くんが仕組んだ計画。そのようにして、ピンチに陥ったチョコを白雪姫の王子様よろしく助け、試験時間が足りなくなったギュービッドが免許取得に失敗してインストラクターを外されることこそが、彼の望みだったのです。

大形くんはこれまでなんどもぬいぐるみを外しては魔界征服をたくらんできましたが、今回の計画は今までのなかでもピカイチに面白かったです。なぜなら、今まで読んできた物語全体が大形の計画通りに進んでいたことになるからです。チョコを助けたりする姿を見て「大形くん王子様みたいでかっこいい♡」と思う読者も、彼の掌の上で転がされていただけにすぎなかったとも言えます。本当に天才だと思う。今巻の大形くんは今までで一番悪役っぽかったです。ちゃんと悪役してくれる悪役、本当に素晴らしい。

それにしても、毎回思うんですけど、魔界全体を巻き込むレベルの魔法を使える大形くんを、人間界の一角に住まわせておいて大丈夫なんでしょうか。あの近辺に住む全黒魔女の魔力を合わせても多分彼にはかなわないでしょ。

 

 

全体を通して

初期厨のやったぜですが、『黒魔女さんの修学旅行』は本編と外伝合わせてもかなり好きな部類に入る巻です! 無印三学期編以降は物語上の大きな目標のようなもの(無印7巻までのギューチョコ掘り下げ、8〜10巻のティカ問題など)がなく、作品の雰囲気ものほほんとしていた印象があったのですが、この巻で大形問題の解決を目標に据えたことで、文章やチョコたちのキャラもキレを取り戻していっている気がします。

 

 

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【6-1黒魔女さんが通る】04巻を振り返る【感想】

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第1話

あらすじ

巡回魔法使いのアグリッパに弟子の育成方法について指導されるギュービッドと桃花。ギュービッドは言葉に気をつけるように言われ、パンフレットと魔界グッズを買わされます。

翌日、来週に予定されている授業参観のために、保護者用の入校証を配られる6-1。 ところが麻倉は親に来てほしくないらしく、入校証の受け取りを拒否します。彼のお母さんは超天然なので、それが恥ずかしいのではないかと噂するみんな。講談組の若い衆に頼み込まれたチョコは、なんとか麻倉を説得しますが……。

 

今風のインストラクターになるギュービッド

黒魔女しつけ協会からやってきた巡回魔法使いのアグリッパさん。彼によると、今はきびしく弟子を鍛え上げるのではなく、逆に修行してくれる事に感謝の気持ちをもつべきなのだとか。無印1巻ではギュービッドがチョコと出会って早々拘束魔法をかけたりしていましたが、魔界もコンプライアンスを重んじる風潮になってきているのでしょうか。

 アグリッパの言葉を受けて指導法を改めるギュービッド。しかし慣れないためか、前後の文脈を無視して「ありがとう」というなど、かえって不自然な行動になってしまいます。それを変だと思いつつも、「指摘を生かそうと一生懸命頑張ってるんだから」と、いつものツッコミを抑えるチョコ。師匠のギュービッドが不器用に頑張っていて、弟子のチョコがそれをちょっと大人な目線で見てるところに、この師弟の関係の一端が表れているなあと思いました。あとギュービッド様の久々の男装めっちゃかっこよかったのでもっと見たいです。

 ねちねちとうるさいアグリッパですが、指摘はなかなか鋭いですよね。特に「責任感が強すぎるとかえって弟子の心が見えなくなる」という桃花ちゃんへアドバイスは超的確で、伊達にグラシュティグに仕えてるわけじゃないなと感じます。とはいえ弟子の大形はうっかりすると魔界を支配しかねないので、心を見るどころじゃなくなってしまうのも仕方がない気はしますが。初めての弟子なのにヘビーすぎるよ……。

 

個性豊かな親たち

第1話は無印6巻以来の授業参観回でした。無印では教育実習生の清井ほたるに振り回される5−1の様子が中心に描かれていましたが、今回の最重要人物は麻倉くんのママ、くるみさんです。

くるみさんは超天然で、東京ディズニーシーの「シー」をABCの「C」だと思い込んでいるほど。そんなお母さんだから、クラスみんなの前でチョコを息子の彼女扱いするのではないかと心配する麻倉。チョコに恥をかかせるわけにはいかないと、母親が授業参観に来るのを阻止しようとします。その行動自体はともかく、好きな子に恥ずかしい思いをさせたくないという気持ちは”漢”です。

結局、チョコの説得でくるみさんは授業参観に来れることに。ですが当日、想像以上の天然ぶりを披露してしまいます。たとえば、「体の一部を使った慣用句」についての授業で、「うでが落ちる、腹を割る、肩を落とす……」などの例を聞くと、「まあ、たのしい! まるで、死体をバラバラにしていくみたいだわ!」とまるでサイコパスのようなご発言。ある意味この作品らしいママですが、思春期の息子にとってはなかなか頭が痛いかも。

 

 

第2話

あらすじ

悪い魔物がうろついていないかパトロールする事になったチョコ。見知らぬ金髪のお姉さんが近所の男子たちに”プ”ライドポテトの優待券を配っているのを目撃します。翌々日学校に行くと、そこには『少年マガジン』のグラビアに見向きもしない横綱の姿が! それだけでなく麻倉や東海寺も全くアピールしてこないなど、男子たちの様子がおかしい事に気づくチョコ。さらに鈴木重くんが奇妙なポーズで奇妙な呪文を唱えているのを発見したチョコは、ある事に思い至り……。

 

男のプライド問題

新キャラ・幽ねぇにもらったプライドポテトを食べてプライドが高くなる横綱。いつもは気弱でエロい彼なのに、「少年マガジン」のグラビアをみせられても「だから、見ないっていってるだろ」と毅然とした態度で断ります。そのあとの間髪入れない「は?」という地の文ツッコミに笑いました。「横綱、悪魔に魂でもぬかれたのぉ?」という大谷君の叫びもあながち間違っていなくておもしろかったです。いつも本能のままに(?)行動している男子たちですが、プライドを気にしてちょっと大人びた行動をしているのが可愛かったです。でも横綱でさえああなっちゃうんだから、速水君とか与那国君とかもともとプライド高そうなキャラはどうなってしまうんでしょうね。

麻倉&東海寺は「いちいちアピールするなんて、プライドのある男のすることじゃない」と、いつものチョコへの猛アタックがひかえめでした。クラス運営的にはポテトを食べてもらっていた方が楽そう。

 

鈴木姉弟が掘り下げられる

そして今回は鈴木姉弟の掘り下げ回でもありました。ウンチク女王・鈴木薫さんと、そのウンチクを「姉ちゃん! すごい! メモメモ!」といつもメモする双子の弟・重くん。とても仲の良い二人ですが、プライドポテトで重くんのプライドが高くなったことで、少し気まずい関係になってしまいます。ある日、薫さんのウンチクを聞いて、「そんなふうに、えらそうにいわなくても、いいじゃないか。おれたちは双子で、おなじ六年なんだ」と傷ついたような顔をする重くん。薫さんとしてはもちろん弟をバカにするつもりはなく、普段どおりの行動だったのですが……。

結局、チョコたちが幽ねぇを退治することで一件落着したのですが、幼少期は仲がよかったきょうだいが思春期に入ってすれ違いはじめるのが切なリアルでした。このくらいの時期って、上のきょうだいとしてはかわいい弟・妹のままでも、下のきょうだいとしては子ども扱いせず対等に接して欲しいみたいな気持ちがあったりしますよね。特に双子だと「そもそも俺、年下ですらないのになんで弟あつかいされてるんだろ?」と思ったり。わたしも双子なのでこの二人が掘り下げられたのは嬉しかったです。

 

 

第3話

あらすじ

宮瀬灯子ちゃんの弟と妹が通ういちご保育園。そこの先生が結婚するらしく、しかも式を保育園であげるらしい。その際にベールガールをやってくれないかと頼まれるチョコ。結婚式と同じ日に魔界喫茶ハンプティダンプティでロリポップココアの新作お菓子の発表会があるらしく、桃花ちゃんは一緒に行けないのを残念がります。

2日後、結婚式は無事に終わります。ところが数日後、灯子ちゃんから奇妙な話を聞くチョコ。なんでも、温厚な性格だった新郎が、結婚式以降怒りっぽくなり、不平不満ばかり言うようになったそうです。結婚式に原因があったのではないかと考えたチョコは、いそいで保育園に向かいますが……。

 

オカルト結婚式

今巻は6月という設定。そのせいか、第3話はジューンブライドというロマンチックなモチーフがでてくるお話でした。

灯子ちゃんの弟妹の先生の結婚式でベールガールを務めるチョコ。バラが並べられた窓、まっ白な布が敷かれたバージンロード、祭壇など、結婚式用に飾り立てられた園内の描写が非常にラブリーです。その様子にテンションが上がってウキウキで結婚式知識を披露する灯子ちゃんも乙女で可愛かったです。

新婦の先生曰く、バージンロードの白い布は教会の下に棲んでいる悪魔から花嫁を守る役割があるのだとか。こういうところにオカルトネタを仕込んでくるの、やっぱり黒魔女さんだなって感じですね。その話を聞いたあとにどこからともなく「呪ってやる」という声が聞こえてくるのも不気味で好きです。

 

マカズキン作家デビュー

桃花ちゃんの魔女学校時代のルームメイト、マカズキンが作家デビューしました!魔女学校を卒業して一年しか経っていないのにすごい。学生時代からプロの作家さんに小説を見てもらったり、努力していたのが報われましたね(『魔女学校物語』、みんな読んでね)! 外伝好きなので、そこで活躍していたキャラが本編に登場するのは嬉しいです。

デビュー作は『たなばったーんと呪運ブライド』。6月に結婚した「折り姫」と「疲子星」を主人公にした悲恋の物語です。幸せな生活を送っていた「折り姫」と「疲子星」夫妻。あるとき疲子星がつくった棚が「ばったーん」と倒れてきて、下敷きになった彼は大怪我をしてしまいます。それがベルゼブル様の怒りを買い、二人は引き離されてしまいました。それ以来、「折り姫」は幸せそうな花嫁を呪う「呪運ブライド」になったのでした……というお話。「呪運ブライド」自身は新婚の先生たちを呪ったりするシリアスなキャラですが、それともとのお話のギャグっぽさとの差がシュールで面白いです。そして6月と7月のイベントを一つのお話に詰め込もうとする姿勢はいかにも魔界の人っぽくていいですね。

 

 

全体を通して

麻倉や鈴木姉弟など、既存のキャラをさらに深く掘り下げるお話が多かったです。無印3学期編は新キャラも多く世界観をひろげる感じでしたが、六年生編になってからは深める方向に行ってるのかなと思います。

 

 

 

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【6-1黒魔女さんが通る】03巻を振り返る【感想】

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第1話

あらすじ

5月1日の人間界。チョコは、家に押しかけてきた舞百合メグから、デイキャンプ後、男子たちの様子がおかしいことを伝えられます。真相解明の協力を頼まれ、さっそく大形に事情を尋ねますが、謎のノートを抱えて退散されてしまいます。大形だけでなく、麻倉や東海寺にまで話をはぐらかされるチョコ。しかもなぜかですます調を使われます。

翌日、男子の異変について話し合う女子たち。そこで、七福亭と速水が白ひげのおじいさんと一緒にいるのを見たという証言が飛び出します。さらに火の国の魔宝「ですノート」が何者かに盗まれたという知らせを耳にしたチョコは、あることに思い当たり……。

 

男子たち活躍

第1話はこどもの日をテーマにしてるだけあって、男子たちが活躍するお話でした。

麻倉の家に全員で集まり、謎の会議を行う6-1男子。なんと東海寺や大形まで集まったらしく、女子たちは不審がります。問い詰めても何も教えてくれないうえに、不自然なですます調を使われるチョコ。大形くんは「です、だねぇ」と、普段の口調が失われていないのが面白かったです。ぬいぐるみには魔力を跳ね返す効果があるはずですが、一応ですます調になっているところを見ると、魔界グッズは別みたいですね。それから、エロエースは話し方が変わるだけでなく、チョコをさんづけで呼んでいたのが新鮮でした。

結局、男子たちの秘密の計画は手作りの柏餅を女子にプレゼントすることでした。これは一大爺の提案だったのですが、男子たちがそれにのってわざわざ会議まで開いていたと思うと可愛いです。なんか甘酸っぱさがある。

 

キレッキレのセリフたち

細かいセリフもキレキレだった第1話。チョコの家に押しかけて来た時の百合ちゃんの「お家で、朝からゴシックロリータを着てるし。百合、こわ〜い!」というぶりっ子嫌味や、女子が集まって作戦会議をしているシーンでの、凛音ちゃんに対する舞ちゃんの心底どうでもよさそうな反応など、久々に6-1メンバーの性格悪い部分(注:褒めてます)が描かれて、これこそ『黒魔女さん』だよなぁと思いました。

それから、大円寺に到着したチョコがお堂の扉を開けるシーン。「(扉を開けたら)最初になんていえばいいんだろ」という地の文があるのですが、それがめちゃくちゃ黒魔女さんっぽかったです。お話の流れとはもちろん関係ないし、心理描写というほど心理描写でもない、ただの独り言みたいな文。このぼそぼそ感、本音感みたいのが小学生時代の私の心に刺さったんだよなあ。

 

 

第2話

あらすじ

  第一小に新しい音楽の先生、小森真由先生がやってきます。アイドルのように可愛い先生に男子たちはメロメロ。その様子を見た舞ちゃんたちは、先生には男子をたぶらかす特別な力があるはずだと考え、チョコに真相究明を依頼します。放課後、音楽室を訪れたチョコは、小森先生がやけに古めかしい楽譜を使っているのを発見。さらに、壁に飾られたモーツァルトの肖像画も奇妙な動きをし始めて……

 

後期っぽい容姿のキャラの登場

以前wikiかなにかでも書かれてましたが(もう書き換えられてましたが)、この作品って美人キャラが多いですよね。特に初期の魔界キャラは絶世の美女だらけで、そのことでさらに異界感が増していたような気がします。

ですが、後期になるにつれて可愛さ、美しさにバリエーションが生まれます。すごく華があるわけではないが美しい・可愛い、みたいなキャラが出てくるようになるんですね。今回登場した小森真由先生もとっても後期らしいビジュアルです。

しかも、ふんわりショートボブにつつまれた、お顔のかわいいことといったら!

でも、ハデなお顔じゃないんだよ。すっと通った鼻は高いわけじゃないし、目も、ぱっちりというより、奥二重ですずしげな感じ。つまり、つつしみ深い、かわいさってやつね。『6年1組黒魔女さんが通る‼︎③』p112

相変わらず、だれかモデルがいるのかな? ってくらい丁寧な描写ですね。小森先生は第3話でも登場したし、あとがきにも出てきたからたぶん先生のお気に入りのキャラなんじゃないかなーと思います。

 

速水くん活躍

今回は速水くん活躍回でもありました。小森先生の可愛さにメロメロになる男子たちの中でただ一人冷静を保っていた速水くん。オカルトオタクの彼は、ピアノの音の狂いに先生が気づかないのは、誰かに呪われているからではないかという仮説を立てていたのです。

例によってその対処法は「なぞるだけでずるいくらいに怨霊が祓えるテンプレート」というインチキオカルト本を使う、というものでしたが、実際に先生は魔界の人だったので、彼の直感は当たらずとも遠からずです。というか、速水くんが怨霊退治とかやる時って大体実際に魔界の人が関わってるんですよね。関係なかったのって無印5巻のプール事件ぐらいのものでは?

あと速水くんは絶対音感があって3歳からバイオリンをやっていることが明らかに。上品だなあ。

 

 

第3話

あらすじ

母の日間近の人間界。第一小では、有名な声楽家を招いてオペラ「魔笛」の鑑賞会が行われることになります。図書委員のチョコは、「魔笛」の内容をまとめたパンフレットを作ることに。音楽の小森先生にも手伝ってもらいますが、彼女はなぜか浮かない様子です。

ギュービッドによると「魔笛」によく似た話が魔界昔話の中にもあるのだとか。さらに、真由先生が持っていた奇妙な楽譜のことなども思い出し、彼女が「魔笛」に出てくる「夜の女王」の娘なのではないかと考えるチョコと大形。そして迎えた音楽鑑賞会当日、思いもよらぬことが起こり……。

 

大形くんのぬいぐるみ、今までにないカジュアルさでつけ外しされる

夜の女王の雷の黒魔法により、魔力封印のぬいぐるみが取れた大形くん。夜の女王に向かって呪文を唱え始めますが、あえなく桃花ちゃんに魔力封印のてぶくろをつけられてしまい、もとの「だねぇ」少年に戻ります。なんだか、今までで一番緊張感のないぬいぐるみ外れイベントだったような……。

近頃魔力漏れを起こしていたぬいぐるみ。その対処のために、桃花ちゃんは魔力封印の毛糸で手袋を編んでいました。しかもコウモリの模様入りです。初めての編み物ですが、連日「モリカワ」に通いつめてピーチこと桜田桃香先輩に教わったそうです。健気で可愛い。ところでピーチと黒雷は6年生編に入ってから最新刊(10巻)まで一度も登場していない(このシーンも名前だけ)のですが、元気にやっているのでしょうか。

 

母の日ネタ

 今回は母の日のお話でした。お母さんにギフト券を贈りつつ、「ママ、元気かなぁ」と空を見上げるギュービッドと、「あたしも、お母さんにぜんぜん連絡してません……」としんみりつぶやく桃花。ギュービッドは山奥の村の出身で、弟と妹がいるらしい……ということはすでに明かされていますが、家族が実際に出てきたことはないですね。桃花ちゃんも『魔女学校物語』でお母さんからの手紙が載っていましたが、ご本人登場はありませんでした。ふたりの家族がどんな人なのかもしりたいなぁ。

娘の小森先生が連絡をよこさないのを怒って人間界にやってきた夜の女王。怖そうな見た目に反して、行動の動機がよくいるお母さんでおもしろかったです。

 

 

全体を通して

03巻も前巻に引き続き、人間界を舞台にしたドタバタもの。「ひみつの男子会!?」というサブタイ通り、男子キャラの活躍が目立つ感でした。図書委員としてのチョコの様子を見ることができたのも嬉しかったです。あと表紙が初期っぽくて好き。

 

 

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【黒魔女さんが通る‼︎】作風の変化を振り返る【2005-2019】

時間が経てば作風が変わるのは当たり前のことですが、初期の巻を読み返すと今とは随分違うなあと感じます。なので整理してみました。

 

 

1〜7巻:ダークでリアルな路線

無印7巻までの黒魔女さんは毒があったなと思います。そしてキャラがリアルだった(特に5−1女子)。こういうと語弊があるけど、みんなわりと嫌な子だった。チョコさんも相当クセの強い主人公だったし、舞ちゃんとか百合ちゃんも権力握るのがうまい女子って感じでしたし。松岡先生もアレだし。

だけど、現実感がないレベルの「巨悪」みたいなキャラはあまりいない。舞台が小学校だし、当然と言えば当然なのかもしれないけど。「身近にいるちょっと面倒くさい人」という感じで、毒は毒でも小学生が読んで「あ〜こういう奴っているよね〜」と感じられる毒だったと思う。

魔界キャラになるとレオナールとか暗御留燃阿とか出てきますけどね。悪役ではないけど、大形の不幸過ぎる来歴とか大半の小学生にとっては現実離れしてるし。でも、当時はあまり魔界に行ってなかったし、魔界キャラも少なかったから、魔界編はあくまで「特別編」という感じがありました。

 

 

8〜12巻:王道児童文学っぽい

8巻以降は毒要素が若干薄まった気がします。理由は多分、7巻を通してチョコさんが成長して、ちょっといい子になったから。ダーク要素は残しつつも、わりと主人公らしい主人公になってきたかなと思います。前ほどきつい毒を吐かなくなるしね。

特に『黒魔女さんのクリスマス』は、それ以前に比べてかなり王道児童文学っぽいノリだなあと思いました。『黒魔女さんのハロウィーン』も感動長編ですが、最後はちょっとおちゃらけて終わる。でも『クリスマス』はチョコの成長がはっきり示されるオチです。「黒鳥千代子は、みんなのおかげで11歳になりました」だからね。この文がめちゃくちゃ深くて好きだっていう話を前に書きましたけど。

 

 

13巻〜6年生編4巻:ダークさが消滅

この時期になると初期のダークな雰囲気はほぼ消滅する。チョコさんが成長したのもあるし、他の既存キャラもみんないい子になってきたから。舞ちゃんとかもそうだし、最たる例は暗御留燃阿ですね。

暗御留燃阿って、巻をまたいで登場するキャラの中では唯一の悪役らしい悪役だったじゃないですか。大形とかも敵になることはあるけど、彼には情状酌量の余地がありまくるし。その点暗御留燃阿はひたすら憎まれ役に徹してました。

だけど13巻でいきなりいい人になっちゃって、もう黒魔女さんワールドに悪役はいなくなったと思いました。暗御留燃阿オタなので余計に。

この時期新キャラもばんばん出てくるのですが、初期っぽい「嫌な子」はほぼいないですね。名前を見れば性格がつかめるようなネーミングのキャラがすごく多いのも特徴。

まあ初期だって、読者キャラの大半は「嫌な子」ではないのですが、ネーミングに関しては13巻〜はかなり特徴的だなあと思います。

 

 

『黒魔女さんの修学旅行』〜 :???

13巻から6年生編4巻まで、物語的にそれほど大きい変化はありませんでした。だけど、『黒魔女さんの修学旅行』から、物語が大きく動いてるのを感じます。おそらく、大形京太郎が本格的に動き出して、大形問題の結末が見えてきたらつかめるかな?と思います。

 

 

【6-1黒魔女さんが通る】02巻を振り返る【感想】

この続き。

 

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第1話

あらすじ

家庭訪問が始まり、松岡先生から問題児だと思われていそうなことが気になりだすチョコ。「人の気持ちに敏感になれる魔法」をつかってクラスのみんなを助け、心証をよくしようと考えます。

ところがみんなの気持ちがわかるようになったせいでおせっかいを焼きすぎてしまい、かえって厄介な事態に。挽回のために魔界グッズを使ったりもしますが、なぜかグッズが余計な機能を発揮しだして逆効果に。さらにチョコの家庭訪問でも、ママと先生が喧嘩をし始めて……

 

みんなのお家&親

今回は授業参観回だったので、みんなのお家のことがよくわかりました!

新たに登場した父母の中でも、マリアちゃんのパパ、リャン・チャオウィさんはこのお話の後も何回か出てきているキャラ。たしかホームページか何かで石崎先生もお気に入りだとおっしゃっていたような気がします。

魔界グッズ「おしゃべり昆布」の誤作動でグーグル翻訳のような奇妙な喋り方になってしまったマリアパパ。「一本道のダンスが、クラスをまとめています」(「一路舞がクラスをまとめています」の意味と思われます)など、もはや魔界グッズに頼らずに直接話したほうがいいのではないかというレベルですが、本人的にはたくさん喋れてご機嫌だったみたいです。彼は6年生編4巻の授業参観にも来ていましたし、キャラブックによるとマリアちゃんのカンフーの師匠もしているらしく、子煩悩でフレンドリーな感じの方みたいです。「わたしの名前はリャン・チャオウィです。どうか、トニーとよんでください」という挨拶は「おしゃべり昆布」の影響によるものですが、授業参観回でも使っていたところを見ると気に入ったみたいですね。

灯子ちゃんの家は小さな弟と妹がおり、お掃除が行き届いていないのが心配な様子。散らかったおもちゃをテキパキ片付ける姿に主婦力の高さを感じました。いつもおだやかな灯子ちゃんですが、小学生にして家事を一手に担っているなんてかなり苦労人ですよね。それから、彼女のお父さんは営業マンなんですね。松岡先生のためにトイレのドアを開けるときも、「さあ、どうぞ!」とちょっとテンション高めなのが面白かったです。

 

インストラクター桃花

今回は大形くんの黒魔法修行の様子から始まりました。黒魔法で危険な「プロヴァンスのマタゴット」を出現させてしまった大形をしかる桃花ちゃん。大形くんはインストラクターの桃花よりも魔力はずっと強いはずですが、修行の内容は呪文の練習と、かなりオーソドックスですね。

桃花ちゃんは丁寧な性格ですが、大形との修行シーンでは軽く怒っていることが多い気がします。とはいえ、6年生編4巻でアグリッパの指導を受ける彼女を見た時の大形の反応からすると、仲は悪くないみたいですが。ここの師弟関係はほとんど掘り下げられてませんが、ぜひ詳しく知りたいです。

 

 

第2話

あらすじ

陰陽師の修行から帰ってきた東海寺くん。霊力がめきめきアップしていて、6-1のみんなのなくしもののありかを言い当てます。驚いたみんなは、次から次へと失せ物探しを依頼するように。チョコが詳しい事情を尋ねると、秘密の修行の様子を見せてくれると言う東海寺。彼と一緒に「回送」ならぬ「回想」バスに乗ったチョコは、運転手が魔界の人物であることに気づきます。さらに二人がたどり着いた先には、思いがけない者がいて……

 

東海寺大活躍

第2話は東海寺くん回でした。一ヶ月に及ぶ修行を終え、第一小に帰ってきた東海寺。京都の山の中で三日間、魑魅魍魎の恐ろしい姿に耐え続けたのだそうです。そのおかげで(?)霊力が上がり、失せ物探しを次々に成功させます。結局それは黒魔法の力だったのですが、陰陽師として本格的に活躍する東海寺くんをみれたのは無印4巻以来なのでうれしかったです。あたらしい真言も披露してくれました。

それにしても、東海寺くんって普通にいい子ですよね。荒廃した寺を立て直すために厳しい修行に耐えるなんて、なかなか小学生ができることではないと思います。亡き迦楼羅の背中をまっすぐ追いかけて立派な陰陽師を目指す姿はとても健気です。今回の彼の台詞からすると幼い頃はまだ迦楼羅が生きていたようなので、うっすらと東海寺華やかなりし時代を覚えているのかもしれないですね。

p122に寺の境内で話し合うチョコと阿修羅のイラストがありますが、こうしてみるとこの二人はお互いを引き立てあうビジュアルをしているなと思います。服の色も正反対だし。ストーリー的にはチョコの相手役は大形がしっくりきますが、絵になるのは東海寺かなと思います。

 

麻倉と東海寺

東海寺と麻倉の友情(?)にも焦点が当たった回でした。いつもチョコをめぐってけんかばかりしている二人。しかし、その戦い方はあくまでもフェア。仁義を重んじる麻倉は、ライバルに抜け駆けはしたくないらしく、東海寺が修行のために学校を休んでいる間はアプローチを控えていました。

今回、東海寺が失せ物探しを連続で成功させ、みんなが驚嘆しているときも、彼はひそかにライバルを心配していたみたいです。東海寺が毎日謎の「回想」バスに乗って修行に行っていることを突き止め、「みんなのために無理をしているのではないか」と推測。そのことを6-1メンバーに伝えます。「ライバルのインチキを暴いて恥をかかせてやるぜ!」というのではなく、東海寺を思いやる方向にいくのが麻倉らしいなあと思いました。しかも、無事を確認すると姿も見せずに去っていくあたり、最高にクールですね。

 

 

第3話

あらすじ

デイキャンプを控えた6-1。美里雷香ちゃんの与那国くんへの胸キュン発言を皮切りに、「男子のどんな行動にドキドキするか」を語り合う女子たち。それを受けて、わざとらしく胸キュン行動をする男子たちにチョコはへきへき。

デイキャンプ当日、いつものように大騒ぎする6-1。その様子を冷めた様子で見ていた秀才・速水くんが、突然親父ギャグを言い出します。さらに女子の命令をテキパキ聞く横綱、ぬいぐるみを抱き締める衣袋寛三先生などにも、女子たちはメロメロに。そこに桃花ちゃんがやってきて……

 

胸キュン男子たち

男子の胸キュン行動について語り合う6-1女子。ぶっきらぼうな男子が急に優しい言葉をかけてきたり、背の高い男子が掲示物の貼り付けをさりげなく手伝ってくれたり、チャラチャラ系男子が試合に負けて涙を流しているのをみると胸キュンするよね〜と盛り上がります。内容もそうですが、いつも冷静な舞ちゃんが急にくだけた言葉遣いになっていたり(「でも、すごい高いところにあって、手がとどかなかったのね。」「で、なにもいわずに、歩いてったの!」)、灯子ちゃんみたいなおとなしめの女子も鼻息を荒くしてるのがめっちゃリアルでした。なんでここまで生々しい雰囲気が出せるんだろう。石崎先生の心の中には乙女が住んでいるのか?

それを聞いて、これ見よがしに胸キュン行動をまねする男子たち。東海寺・麻倉とかはわかるのですが、葉月星夜くんや古島真紅くんも一生懸命真似していたのが意外でした。みんなモテたいんだなぁ。でも正しい使い方ができていたのは大形だけでしたね。

 

チョコは胸キュン女子?

以前から麻倉良子ちゃんに「おにいちゃま(麻倉)をたぶらかす魔性の女」認定を受けているチョコ。今回は図書館少女隊の三人からも「ドジっ子なので男子から胸キュンされるが、それゆえに女子から反感を持たれるタイプ」と言われます。あとがきでは男子たちが女子の胸キュン行動を語っていましたが、それによると、「ドジなことをすると可愛いと思う(速水)」「なんでもないところでころぶ女子もかわいい(大谷)」そうで、やっぱり6-1男子の間ではドジっ子の人気が高いみたい。反対に、「なんでもすぐ『かわいい』というところ(エロエース)」「すぐ群れるところ(横綱)」にはイライラするようです。たしかにチョコは抜けているところはあるし一人でいるのが好きですから、男子にとってはかわいらしいうえにイラッとすることもない女子なのかもしれないですね。ついでに自分の魅力に気づいてないときては、こんなに良い女子はいないし。「好きな異性のタイプ」系の話はお互いのエゴが出ますね〜。

私はチョコのクールでドライで等身大の「ダメな子」でもあるところが好きです。他の女子のしたたかで計算高いところも、男子受けは悪いかもしれませんが私は好きですよ。

 

 

 全体を通して

第1話では家庭のことがわかったし、第2話では麻倉と東海寺がメインだったので、6−1メンがより掘り下げられた巻だったと思います。第3話は細かいセリフまわしのリアルさが復活していたのが嬉しかったです。表紙には大形くんがめっちゃ大きく描かれてますけど、ぶっちゃけそこまで活躍してないような。あとカバラ数秘術が出てきましたが、石崎先生のマスターナンバーは11で、私も11なので嬉しかったです。

 

 

 

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